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 俺がハイヒューマンに進化したことはあの場にいた人達だけの秘密にしてもらったが、輝夜にだけは隠すことも出来ないので打ち明けた。

 その反応は思っていたよりもあっさりしていて拍子抜けしたのだが、輝夜的にはメイガスシステムの調整の方が面倒だと愚痴られた。


 たしかに今までより魔力が強くなったせいで、魔法を行使する際の調整に手間取り、結果発動までの時間が若干遅くなった。

 たかが数秒の差ではあるが、実戦ではその数秒が命取りになる。なのでここ最近は仕事中も暇さえあれば訓練場に通う毎日が続いている。


 また、府中基地の第一小隊の再編成などが白紙に戻された。何やら舞さんの独断で進められていたらしく新しく就任した瀬織津姫総司令官からストップが掛かったようだ。大体、日本全国を第一小隊でカバーするなんて事は元からはちゃめちゃな案だったので少し安堵した。


 けれど、宇宙艦が配備される時期に合わせて第一小隊のうちの家族全員と、司令官だった舞さんがその任から外れて宇宙艦の艦長となり、新たに特殊部隊が編成される事が決まった。

 この背景には北海道方面エリアと九州方面エリアでニビルとの戦闘が激化していることが原因の一つになっていた。

 それに南アメリカの全域が壊滅的状態となり、東ヨーロッパから東の方でもほぼ似たような状況となっていて世界中が混乱し、人々はニビルへの恐怖に震えていた。


「日本も他人事じゃないよな。辛うじて防いでいるだけだし、この先どう転がるかなんて予想すらできない」


 各地での戦闘記録に目を通しながら、そんな弱音がでる。

 以前であれば知能の低いモンスタータイプだけだったのに対し、近頃は知能がさらに高い上半身が人で下半身がヘビの人型タイプや、頭だけが鳥やライオン、ヒョウなどの亜人型タイプが主だった構成となってきて、とても苦しい戦いが続いていた。


「ただでさえ相手は地球より高度な文明を持ってるのに、完全武装でゲートから出てこられたらお手上げだよね」


 桜さんが常のようにキーボードを叩きながら、俺の独り言に答えた。


「全然お手上げしているようには聞こえないのですが」

「だってメイガスは戦えてるし。それに勝てない相手じゃないと分かったのは大きい」


 最近は頻繁にシステムがアップデートされていて、その分、桜さんの負担も大きくなっていた。

 実際、桜さん達が居なかったらとっくに日本は負けていたと思う。


「えっ……」

「マスター桜。どうされました」


 絶句した桜さんを凛花が心配そうに声をかけた。


『洸太、北海道が落ちたわ。至急、私の所に来て』


 その結からの呼び出しに急いで部屋をでた。

 そしてノックもせずに結の部屋に入ると、モニターには戦闘映像が映っている。それを麗子さんと歯軋りしながら結は見つめていた。


「札幌での戦闘記録よ」


 そこには信じられないような光景が映っていた。

 たった八体。しかも軽装備の亜人達でその武器も剣や槍。それらの武器と魔法で次々と蹂躙されるメイガス達の姿。

 奴等は今までの完全武装ではなかった。

 あの強力な近代的武器は使用していなかった。そもそも、何故そんなに圧倒的な力があるのに最初からそうしなかったのかと、そんな疑問が尽きることなく頭の中を駆けめぐる。


 次々とメイガスが死んでいく、そんな凄惨な状況に目を背けたくなる。


「必ずあなた達の仇はとってあげるから」


 結が消えそうな声でそうつぶやいた。

 映像の最後はかつて大都市だった場所が大きなクレーターとなって終わった。しかも、たった一度の魔法で。


「やはり三年前のニビル侵攻を中止にするべきじゃなかったんだ」

「洸太。あれは皇帝陛下が決めたことよ。そもそも、その事と今回の事はまったく関連性がないわ。無理やり結びつけて批判するのはよしなさい」

「でも、三年前に決着をつけていたら札幌は、」

「この大馬鹿者!」


 結に頬を強く叩かれてよろける。


「あなたは、自分達が助かりたい一心で、他の星の人達だけを戦わせるような卑怯な人間なの。戦えば必ず、敵も味方も死人がでるのよ。多くの犠牲がでるの。それすらも忘れて、あなたは何様なの。これは私たち、地球の問題なのよ! 既にあなたのせいでティアマトだって何回、敵の艦隊に攻められてると思ってるのよ。あなたがティアマトに甘えて、味方にしたせいで、あの星の人が何人死んだと思ってるのよ。いい加減に甘ったれるのはよしなさい!」


 突きつけられた言葉に何も言い返せなかった。

 自分に対する不甲斐なさと悔しさから、俺はその場から逃げだした。そのまま建物を出て外にでる。

 結に打たれた頬が熱を持つ。その熱を確かめるように頬に手を当てて、現実なんだと気づかされる。


 頬に手を当てたまま膝から崩れ落ちると、俺は自分のどうしようもなさに慟哭した。


 雨粒がポツリポツリと落ちてくる。次第に激しい雨へと変わる。

 両手を地に着いて項垂れたまま俺は雨に打たれた。


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