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 凛花の好きなようにさせていたら一時間近くやられた。その後、またボートに戻り浜辺でキャンプを再開した。


 髪の色はまだピンクだ。三日はこの髪色で過ごさなければならないと思うと気が滅入る。

 髪の長さも長いまま。凛花に髪を切って欲しいと頼むが、もしかしたらまた戦うかもしれないから、うちに帰ったら切ってあげると言われてまたさらに気が滅入った。


 美味しいお肉を食べれば気分も良くなると慰められて、今夜は凛花がお肉を焼いて食べさせてくれた。まるで雛鳥になった気分だった。


「もう。そんなに意地悪すると寝かせないからな」

「ご褒美ですよ、それは」


 涼しい顔であっさり流された。

 どうやら魔法少女りおちゃんは彼女にもの凄いパワーを与えてしまったようだ。


「念願の生でこの目で見ることができました。こんなに喜ばしいことはありません」


 なんかとても複雑な気分だ。


「俺とキスするよりも」

「それとこれとは別です。結菜さんのマスター桜推しと同じだと思ってください」


 なるほど。りおちゃんはアイドルだったのか。

 通りで桜さんが魔装銃杖にリボンを付けたがった訳だ。納得した。すごく納得した。


「はい。あーんしてください」


 口をあけて彼女にお肉を食べさせてもらう。


「うん、美味しい。ありがとう」

「どういたしまして」


 野菜スティックをポッキーゲームのように両端から互いに食べたりしながら食事を楽しむ。

 しかし、さっきからずっと水色の下着が彼女の太ももの間からチラチラ見える。


「このお肉には精力剤が注入されてるのでは」

「そんな訳はありません。でもすぐに復活しますね、凛生は。今日だけでも既に五回はしてますよ」


 だよね。海で遊んでる時も、休憩してる時も。至る所でしてた気がする。

 なんか外での開放感がクセになってしまった。


「凛花は嫌じゃない。嫌いになったりしない」

「嫌じゃないし、嫌いになったりしません。寧ろ、幸せを感じます」

「なら良かった」


 お肉を焼いている凛花の横顔を見つめる。

 とても綺麗でつい頬にキスをした。


 そして思う。

 やっぱり彼女を一人にだけはしたくはないと。


「あ、そういえば、私はもう総司令官ではありませんからね。それも瀬織津姫に引き継ぎましたから、今の私はハル社の会長職だけです」

「え、聞いてないけど」

「ちゃんと会見で発表しましたよ」


 なんだ。もう職場でも会えなくなるのか。たまに会えるのを楽しみにしてたのに残念だな。


「そんながっかりしないでください。また一緒に働ける機会もあるかもしれませんしね」


 なんか嘘くさい笑みだ。

 ひょっとして揶揄われてるのかな。


「職場で思い出した。宇宙艦っていつ配備されるの」

「もうしばらく先ですね。人員の確保も、宇宙艦のドックもまだ準備できていません。最低でも準備に半年は掛かるでしょうね」

「もう少し早くならないの」

「陛下と瀬織津姫しだいですね。優先順位としては高くはないので凛生の期待通りにはならないでしょう」


 いやいや。もしニビルが宇宙艦隊で攻めてきたらどうするのさ。

 そんなのんびりやってたら負けちゃうよ。ほんと分かってないよな。


「ティアマトの月面基地があるのを忘れたのですか。それに宇宙艦一隻では何もできませんよ」

「超最新鋭新型鑑なのに」

「それでもです。それにあの鑑は。ああ、忘れていました。絵里さんや晃さんもあの艦に乗るんですよ。所属が一緒になって良かったですね」


 ん、今あからさまに話題を変えたよな、

 なんかみんな、俺に隠してないか。

 すごく気になるんですけど。


「そんな目で見ないでください。いくら身内でも話せないことはあるのです」

「ふん。そのくらい分かってます。子供扱いしないでください」

「そうやって拗ねるところは、まだまだ子供ですけどね」

「なに。なら大人だって分からせてやる」


 がおう。と言って凛花に襲いかかった。

 抵抗をするふりをする彼女を押し倒して、また身体を絡ませあう。

 本日六度目の甘い愛が始まった。



 次の日の朝はやや遅れて目を覚まし、後片付けだけをして無人島からママさん達の所へ向かった。


 そして皇都の城に入ろうと門の前まで来た時に、そいつは現れた。


「げっ、仕返しにきたのか!」

「髪を切らなくて正解でしたね」

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ!」

「またりおちゃんに会えますから」


 俺の動揺と同じく、皇国の兵士達も慌てふためきながらも臨戦態勢を整える。


「洸太さん。パパッとやっちゃってください」

「人ごとだと思って軽く言うな!」


 言い争う俺達にたくさんの視線が集まる。


「まさか殿下が何かされたのか」

「あの御方ならあり得るな」

「それに漆黒竜様を見てみろ。なんか傷ついてないか」

「おいおい。まさか殿下がやらかしたのか」

「嘘だろ。創世の神たるあの漆黒竜様にか」


 やばい。なんかとても不穏なワードが聞こえたような気がする。


「さすがはりおちゃんですね。創世の神を撃ち落とすなんて」

「おい! いま神様って言ったよね! やっぱり言ったよね!」


 俺は頭を抱えた。


「こ、コウタさん! 何をしたのですか!」


 駆けつけてきたママさんが珍しく焦った表情を浮かべている。


「コウタ、まさか漆黒竜様と戦ったのではあるまいな!」


 パパさんまで青い顔をしている。


「いえ。ぼくはなにもしてません」

「嘘をつくな!」


 あっさりバレた。これは絶対に逃げきれない。

 困り顔で凛花を見ると、彼女はニコニコと笑っている。


「さあ。魔法少女の出番ですよ!」


 そんなまぶしい笑顔で言わなくても……

 空中に浮かぶドラゴンを見上げると目が合った。


『見つけた。やはりお前だったか』


 女性的な声でドラゴンがそう言った。

 でも今は女だろうが男だろうが関係ない。


「仕返しなら場所を選べトカゲ野郎」

「馬鹿、何てことを言ってるのだ!」

「コウタさん!」


 俺は前へ一歩でた。

 こうなったら、やぶれかぶれだ。やるしかない。


 けれど突然空中のドラゴンが消えた。

 頑張って空を探すも見つからない。


「どこを探している。私はここだ」


 そして視線を落とし、前を見ると黒い布を体に巻いた紫色の長い髪の少女。

 その少女の黄金の瞳がまっすぐに、俺に向けられている。


 歳の頃は然程変わらないと思われるその少女が愉快そうに声も出さずに笑う。


「あの。どちら様ですか」


 うっかり間抜けな事を訊いてしまった。

 その様にママさん達が大きくため息をついている。

 少し。いや、かなり恥ずかしいくなりながらも、その少女の答えを待った。


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