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これからは毎日深夜に1〜2話投稿します。

 凛花。いや、この時ばかりは彼女はアマテラスだ。一世紀以上もこの国を支えて見守ってきた偉大な彼女に敬意を示そう。


 午後二時から行われたアマテラスの退任発表。そして後任の瀬織津姫の就任挨拶。

 その会見を多くの人達が街角のスクリーンに映るアマテラスを足を止めて観ていた。

 たぶん自宅のテレビでも同じように多くの人達が観ていたと思う。


 たくさんの人達がその映像を観て涙を流していた。

 皆知っている。彼女が俺達にしてきてくれた事を。

 この国の為に尽くしてきてくれたことを。

 常に輝かしい未来への選択肢を示してくれたことも。


 いつだって彼女は一度たりとも強制する事もなく、俺達国民に選ばせてくれた。選んだ結果、たとえそれが悪い方向に向かってしまっても、彼女はちゃんと正しい道へ修正して導いてくれた。


 この国は彼女が現れてから間違いなく豊かな国に変わった。

 犯罪も減り、より安全な社会になった。

 また、貧困に喘ぐ人達も今はもういない。

 全て今、この豊かで、そして強くなった日本に変えてくれたのは彼女だ。


 そんな彼女の功績はとても偉大だ。



 彼女が最後の仕事を終えて帰宅した。

 俺が玄関の外で彼女を出迎えると、彼女は満足そうに嬉しそうに微笑んだ。

 もう、やり残した事はないと言わんばかりにの笑顔に、俺も微笑んで応える。


「おかえり。今までありがとう」

「はい。ただいま」


 そしておかえりのハグをして、そのまま彼女を優しく抱きしめ、キスをした。



 その日の夜は家族総出で彼女の退職祝いをした。

 みんなから花束や贈り物。それらを両手では抱えきれないほど手渡され、彼女はそれを嬉しそうに受け取っていた。


 シェフが腕によりを掛けて、たくさんの美味しい料理を振る舞ってくれた。

 また、侍従の方達も俺達と一緒に居間の飾りつけを手伝ってくれた。

 そしてシェフの方達も、侍従の方達も今日だけはと凛花の退職祝いを一緒に祝ってくれていた。



 宴会も終わり、俺とアマテラスは庭のベンチに並んで座っていた。


「星が見えてたら最高なのに」

「そうですね」


 居心地のいい沈黙が続いていた。


「明日は予定あるの」

「いえ。特にはありません」

「なら、二人で二泊三日の旅行に行かない。凛花にも見せたい景色があるんだ」

「 ……え、本当に」

「うん。もう休みはとったから。まあ、凛花の返事を聞く前に先走ってしまったんだけどね」

「ありがとうございます。とても嬉しいです」


 彼女は俺の肩にもたれ掛かってきて、俺は彼女の細い腰に腕をまわした。


「じゃあ、もうしばらくしたら出発しようか」

「あの着替えなどを用意する時間を少しもらえますか」

「もちろん。いくらでも待ちます。あ、水着忘れないでね」

「え、はい」


 水着と聞いて不思議そうな顔をしていたが、理由は聞いてこなかった。

 そしてうちの中に戻り、旅支度を整えて、凛花にゲートでママさんの屋敷に移動した。


「おはようございます」


 いつ行くとも言ってなかったのに、ママさん達は出迎えてくれた。

 モービルを借りにきただけなのに、なんとなく申し訳なく思った。


「凛花さん。お疲れ様でした。まさか、私より早く引退するとは思わなかったわ」

「ありがとうございます。そうですね。私もそう思ってました」

「凛花、お疲れ。君も私達の娘なのだから遠慮しないで気軽に遊びに来てくれ」

「はい。今後は暇な時間も増えますので、そうさせて頂きます」


 一通り挨拶と世間話をした後、モービルを借りて目的地を目指した。


「ところでどこへ」

「あの別荘の近くの無人島。ずっと連れて行きたかったんだ」

「ああ、輝夜と」

「そう、そこ。次は絶対凛花って決めてたからね。だから誰に教えてないんだ。あそこには二人としか行かないつもりだから内緒にしておいてね」


 なぜ、ジト目で……


「他の方ともそんな場所があるのですか」


 ああ、そういうことか。

 なんか初めてやきもちを焼かれた気がする。


「ないよ。ゆい姉ともないな」

「本当に」

「ほんとだってば。なんなら後で輝夜に聞いてみてよ」


 凛花は嬉しそうに微笑んで前を向いた。

 相変わらず。いつ見ても綺麗な横顔だ。そして身に纏う魔力の輝きも。


「ところで、なんで凛花も俺のブレスレットの中に入れるの」


 その質問に彼女はおもいっきり咽せていた。


「え、まあ、ほら。あれです。私と輝夜は一心同体的な面もありますから」


 すごく動揺してないか。


「まさか知らない間に入れ替わったりなんかしてないよね」

「それこそまさかですよ。あはははは」


 これは黒だな。

 案外、俺に関しては分かりやすいんだよな。

 嘘というか、誤魔化すのが下手というか。まあ、恋愛に関してはポンコツだからな、凛花は。


「もしかして今、私のことをポンコツとか思ってました」


 え、凛花も読心スキル待ちなの!


「持ってません! 口に出してました」

「うそだ。絶対に持ってるでしょ。凛花なら世界の理も変えられって知ってるからね、俺は」

「変えられませんから! 私は神様じゃ、あ、り、ま、せ、ん!」


「あ、かわいい。それ、とってもかわいかった。ねえ、もう一回やってよ」

「な、絶対にしません!」


 凛花は耳まで真っ赤にして顔を背けた。

 引退して重圧から解放されたからなのかな。なんか、とても幼く感じる。

 まあ、出会った時の設定的には結と同じで、俺の四つ上だもんな。永遠の20歳か。かなり羨ましい。


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