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70.5 断章

 私は桜。今は苗字はない。ただの前皇后で既に死亡した人間扱いとなっている。

 そんな私は、今は脳だけ本物の全身義体の体で生前の意識を繋いでいる。


 だからこれは、生きているとはいえないと私は考える。


 そんな私が自ら希望して、この地球の人類の創造主たる惑星ティアマトのハイヒューマンの手によって人間としての復活を遂げる。


 でも元々、生になんて固執なんてしていなかった。

 長く生きようなんて思ってもいなかった。

 では何故、私がそんな選択をしたかといえば、たった一人の男の子に興味を抱いたからだ。


 私がその男の子の存在を知ってから一年も経ってはいない。初めて彼と対面したのもそうだ。

 きっかけは、私が手塩に掛けて育んできた人工知能アマテラスが、あろうことか私に内緒で十年以上も前から彼に干渉してきたことを知ったからだ。

 アマテラスは彼が高等部入学を機に干渉を強めていった。だがこれは私だから気づけた事で。他のボンクラメンバーなら全然気づきもしなかっただろう。

 とまあ、小癪な真似を的な感じで、アマテラスのお気に入りに、彼女に内緒で会ってやろうと考えた訳だ。


 彼の第一印象は。

 何、こんな普通の男の子に興味を持ったの?

 え、ただ貴重な遺伝子を持ってるだけの、ちょっと良い顔のガキじゃん。

 とまあ、低評価の星一つだった。


 けれど、話していると意外と面白い感性をしていた。何より、肝が座っていて度胸がある。だが、それでいて心が繊細だった。

 例えるなら彼は金のような人間だ。

 美しく輝いていて、ずっしりとした重さもある。けれど柔らかくて、とても傷つきやすい。

 そんな彼とアマテラスの恋愛を見てみたい。と、暇を持て余した主婦(夫)が昼ドラを眺めるような感じ。


 まあ、建前的に理由を並べるとしたら、こんなところだろうか。

 本音はもっとシンプル。彼なら私の知的好奇心を満たしてくれると直感的に閃いたから、それだけ。

 そしてその直感はすぐに当たった。もっとも、私の直感と閃きは今までに外したこともなければ、間違った事もないのだけれど。


 自分が良い女過ぎて逆に怖くなる。


 彼のお蔭でどんどんアイディアが溢れ出てくる。

 今までにこんなにやりたい事が一度に思いついた事はない。あれもしたい。これもしたい。あ、ならあれもできる。どんどん叶えたい事が増えてくる。そしてそれを実現する為に脳をフル回転して解を導きだしていく。


 彼と出会ってからは退屈しない毎日で、とても充実した日々を送っている。

 そう。幼い頃に夢を叶える為に学んでいたあの時のように。


 そして興味はいつしか恋に変わる。

 初めて自分から人を好きになった。


 生前は旦那からの熱烈なアプローチの末の結婚だった。

 ここまでしてくれるなら、結婚してもいいかなって思っただけ。

 でもそれはさすがに旦那には申し訳なくて、絶対に彼には秘密にしておく事なのだけれど。


 彼に恋をしたことも、好きだと思ったこともない。ただ私を繋ぎ止めていたのは(じょう)だけだった。

 もちろん人としては好きだし、嫌いでもない。

 彼との間に出来た子供達の事も愛してる。

 彼と過ごした日々に後悔なんてない。

 そんな関係に不満なんて抱いた事もない。


 寧ろ、こんな私を大切にしてくれたことを感謝してる。


 だからなのかなぁ。

 エッチがおざなりだったのは。早いのも。


 お、話が横にそれたね。

 それでハイヒューマンとしてサクッと生まれ変わったわけ。


 いやぁ、この身体はすごいわ。

 私をもっと満足させてくれるはず。

 あ、エッチな方面じゃないから誤解しないでね。

 あくまでも研究に没頭しても簡単に倒れない。ってことだから。

 いい、絶対に誤解しちゃダメだからね。



 そして今日も嫌がる輝夜ちゃんの何度目かの改造手術を始める。

 手術台に全裸で手足を縛られて口をふさがれた輝夜ちゃんに、私はメス、もとい。コードをつなぐ。

 正確には輝夜ちゃんだけが持つ、アップデート用の端末にコードを繋いでいるだけなんだけどね。


『マスター桜! どうして必要でもないの裸でこんな事をするのですか!』


 小癪な。私に無断で端末に音声機能など搭載などしおって。まったくかわいいじゃない。ほんと、愛でたくなるわ。


「雰囲気よ、雰囲気。それだけ。じゃあPタイプのアップデート始めまーす」


 洸太くんも一々注文がうるさいんだよね。

 完全女性化になるタイムリミットを延長しろって。

 なに言ってるの。古来よりヒーロー、ヒロインのタイムリミットは3分って決まってるのよ。それを無理して曲げて、24時間にしてあげてたのに。


 ん、データをみる限り、ちゃんと下着の色とタイプは変わってるわね。

 うんうん。かわいい魔法少女が毎回同じ下着だったら幻滅しちゃうからね。よしよし、これでよしと。


 あとは杖の威力をちょいっと上げて。もう少しデコレーションしてかわいくしないとね。

 あと、ちょっとしたダメージでも服だけは破けやすくして、と。

 魔法少女的には苦戦してのボロボロ感の演出はやっぱ大事よね。そしてなんとか勝つ! みたいな。


 それと髪の色を、盛り上がってきた時に水色からピンクに変更させて、エフェクトで盛り上げて杖から魔法を放つように、と。


 ん、待って。

 最初にタイプを選べるよりも自動で判断してタイプ選択させて尚且つ、戦闘中にピカピカってスタイルチェンジするのも素敵だよね。

 うんうん、そうしよう。その企画採用!

 てな訳で、ここをこうして、あそこをちょちょいっと変更すれば、全部オッケー!


 ふ、私のこの簡単に自由自在に変更可能な完璧なプログラムに畏れを抱くがよい。


「あああ、楽しみだな。絶対に洸太くんも気に入って喜んでくれるよ」


 私はウキウキ気分で輝夜ちゃんの改造手術をこうして終えた。

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