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プロローグ

 なんちゃってSF魔法バトルラブコメファンタジーになりますが宜しくお願いします。

 日本という国は色々な面で特殊だ。

 それは日本人が好み、生みだすアニメや漫画をみれば充分に理解してもらえるだろう。

 とにかく突拍子もなく奇天烈なその物語は日本人以外には発想も出来ない。少女が魔法少女に変身して悪を倒すとか。その魔法少女が少しエッチな目に合うとかなど、他所の国の人からすれば何故そんな発想が出てくるのか理解に苦しむ事だろう。


 だが、それらの物語は他所の国でも大人気だ。


 ここに集い、日々開発に勤しむ若き六人の研究者達も、そんなアニメや漫画を現実に変えるべく集まった夢見るオタク達だ。

 普通に歩めば其々の分野で国内トップの博士となり、その名を歴史に刻むだろう若者達は寂れた山間部の田舎で極秘に研究開発に取り組んでいた。


「殿下も物好きだよなぁ」

「まあ、生粋のオタだし」


 並んでパソコンモニターを眺め、忙しくキーボードを叩きながら、髪の長さだけが違う顔そっくりの男女が忙しく動かす指とは違って呑気にそんな話をしていた。


「魔法少年少女現実化計画。いやあ、僕らだけでは難しいならAIに手伝わさせればいいじゃん。なんて妄想じみた意見に賛成するとは思わなかったよ」

「まあ、殿下にも違う思惑があるし。ただ、私達がアンドロイドだって言った時の殿下のあの間抜けな顔には笑わせてもらったけどね」


 そう言って二人はクスクスと笑いだし、キーボードを打つ手を止めていた。


「じゃあなんで医学や生物学に精通した奴も居るんだよって話なんだけどな」

「そうそう。妄想を現実に。が、私達の合言葉だし」


 二人の楽しそうな会話に惹かれたのか、少し離れた場所で猫背で作業していた男が二人に顔を向けた。


「けどさ。実際馬鹿げた話なんだけど。まあ、僕は殿下が驚くのも分かるけどね」

「なに言ってんのさ。君が言い出した事だろ」

「そうだよ。あんた、馬鹿げた話のつもりで私達に話したってことなの」

「いやいや。僕達なら出来るって思ってたさ。ただ、常識人には、ってことさ」

「確かに。あっははは」

「もう、私達を非常識な人のように言わないでよね。せめて、夢見る若者。的な感じで言ってよ」


 そんな楽しげな無駄話をしていると部屋のドアが開き、身なりの良い若者が部屋に入ってきた。そして彼等を見渡し何かを言いかけるが、その場の雰囲気を察してため息をついた。


「どうしたのよ、殿下」

「ため息なんてつくと幸せが逃げるよ」

「うんうん」


 彼等にあきれられながら殿下と呼ばれた若者は部屋の中央にある椅子に座ると一度深呼吸をした後に口を開いた。


「君達にはお手上げだよ。せっかく良い報告を持ってきたというのに」

「あ、アマテラスちゃん完成したの」

「おおお、ついに」

「ちょ、待ってよ。なんで分かるのさ」

「うーん。だって、そろそろかなって」

「うん。完成間近って連絡来てたし」

「うんうん」


 それを聞いて殿下と呼ばれた男はがっくりと肩を落とした。


「けどさ。やっぱり瀬織津姫の方が良くない」

「えぇ、やだよ。呼びづらいじゃん」

「うんうん」

「今更、名前の話をするの。その君達の感性はどうなってるのさ。もっと完成を喜んでもいいだろ」


 そう言ってまた殿下は深く息を吐いた。


「通過点にしか過ぎないから」

「うん。僕達の目標はまだまだ先だからね」

「そんなのは分かってるけどさ。でも、世界初の偉業だよ。もっと誇ったり喜んでもいいと思うけど」


 世界初の自立行動を可能とした人工知能搭載アンドロイド。発表と共に世界を一変させたアンドロイドのその誕生はわりと淡々としたものだった。


「成功は確信してたし」

「まあ、それにあれだよね。殿下にとってもこれからが本番でしょ」

「うんうん」

「そうだけどさ。そうなんだけど、みんなで喜び合いたいだろ。祝杯をあげるとか」


 祝杯と聞いて、三人は一斉に殿下にジト目を向けた。


「な、なんだよ」

「飲めないし」

「嫌いだし」

「頭痛くなるし」


 三人がお酒を飲めない事を忘れていた殿下に非難のジト目をさらに強めて向ける。


「シャンメリーで祝杯ってことだよ」

「時期的に売ってないし」

「うんうん」


 言い逃れも許されないこの状況に殿下の頬が引き攣る。そんな時、また部屋のドアが開いて男女三人が部屋にやってきた。


「じゃじゃーん! アマテラスのお披露目だよ!」


 三人が左右に別れると白いワンピースを着た長い黒髪の見目麗しい女性が一歩前に出る。


「こうしてお話するのは初めてですね。マスターの皆様」


 自然で滑らかに、鈴を転がすような声色でアマテラスが挨拶をすると、席に座っていた三人の研究者達は一斉にアマテラスに詰め寄り、アマテラスを間近で食い入るように観察し始めた。


「あ、あの、マスターの皆様」

「お、この困惑。さすが私が思考プログラムを組んだだけあるよ。完璧じゃん」

「あの、あまり触れられると恥ずかしいというか、なんというか」

「おお、この肌の感触。まさに人間そのものだね」

「ちょっと。女の子の胸を揉むなんてサイテーだよ!」


 女性研究者は自分と顔の良く似た男の手を思いきり叩いた。


「いたっ! いや、でも確かめとかないと、そこは」

「確かめなくても良いんだよ! もう、アマテラスちゃんも遠慮しないで、こんな時は怒ってもいいからね」

「はい、マスター」

「ちょっと余計な事教えないでよー」

「うんうん」

「だっああああぁ、うるさい! このセクハラオタク共が。離れろ!」


 女性研究者がアマテラスに群がる男性達を有無を言わさず引き離す。


「マスター桜。ありがとうございます」


 アマテラスはとてもアンドロイドとは思えない仕草でほっとした感情を見事に表現すると、その場にいた者達から感嘆の声があがる。


「殿下。これ、完成度ヤバくないですか」

「なんか想像していたより遥か斜め上だ。これは世界に凄いインパクトを与えると思う」


 笑顔で二人の女性研究者と話すアマテラスに周りに居た殿下と研究者達はそんな感想を漏らしていた。


「どっから観ても人間そのものだ」



 政治、経済、社会までも一変させたアマテラスはこうして誕生した。

 しかし、開発した研究者達によれば、アマテラスの最大の功績は魔力を発見し、魔法少年少女ならぬ魔力を行使して変身して戦うバトルメイガスシステムを作り上げたことだ。それは突如空に出現したゲートから現れ世界を蹂躙した未知の生命体に唯一対抗できる手段だった。


 けれど、まだこの時はそんな未来が訪れるとは誰一人思ってもいなかった。

 ただ、自分達の妄想を現実にしていただけだった。

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