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無口で幽霊的な猫  作者: 柿丸
はじまり
1/4

第1話 幽霊?

 私は生まれつき、みんなから無視されている。


 私を生んだ母親は、兄弟の毛づくろいをするのに、私にはしてくれない。


 おっぱいを飲みたくてねだっても、飲ませてくれない。


 だから兄弟が飲んでいる時に混ざっていくしかなかった。


 食事も母親は兄弟にしか持ってこなかった。


 こっそり奪って食べたりしたが、私はすぐに独り立ちした。


 集会に行っても、誰も反応してくれない。

 毛づくろいをしても、返してはくれない。


 目を合わせるたびに威嚇されたり、縄張りから追い出されたりもされない。


 みんなが行く年老いた人間の元へ行っても、ご飯はもらえなくない。

 私のことを撫でてくれる人間もいない。


 ご飯は食べれる。

 ご飯は私だけに反応しないから、他の猫に比べて簡単に調達できる。


 なぜ私だけ無視されているのか、生まれてからずっとわからないかった。



 しかし、先日とある人間に会って、何故私が無視されるようになったのかを知ることができた。

 その人間は、危険な道のそばに立っていた。


 危険な道というのは、黒色で硬い道のことだ。

 その道は、大きくてうるさくて早い奴がよく通る道だ。


 私は、ダメもとでその人間のそばまで寄って行った。


 もしかしたら私を無視しないかと思った。

 それは感だった。


 この人間は他の人間と違っていると思った。

 実際、違った。


 私に話しかけてくれた。


「猫さん、私のことが見えているの? あなたもしかして幽霊?」


 その人間は猫の言葉を話していた。

 私が人間の言葉を話していたのかもしれない。


 私はその人間を見つめた。

 人間はしゃがんで私を撫でた。


「幽霊? なんで猫の言葉を話せるの?」


「質問が多い猫さんね。……あなたは、何を迷っているの?」


 人間は少し微笑んだが、少し悲しそうな表情もしていた。


「何のことだかよくわからない」


「そう。……あ、あと私が猫の言葉を話しているわけではないわ」


「なら、どうして私と話せる?」


「それは、あなたと私が同じだから」


「同じ?」


「そう、幽霊だよ。私たちは」


 人間は言った。


「幽霊?」


「そうね……、幽霊ってのは、死んだけれども、生きているみたいになっている状態のことだよ」


「よくわからない。それに、私はまだ死んではいない」


「最初は理解が難しいと思うわ。あなた、こっち側に来たばかりみたいね。私が色々教えてあげようか」


 私は、それからその人間について行って色々なことを教わった。


 例えば、危ない道は道路と言うとか、幽霊は人間が一番多くて犬や猫などは少ないということ、人間の名前は梨華ということだった。


 人間には個人を識別する名前というものがあるらしい。

 猫は、匂いで判別できるから名前なんてものがあっても意味ないだろう。


 そう言ったら、梨華からクロという名前を付けられた。


 幽霊についても説明があった。

 幽霊は生きているものには見えない、死んだ存在らしい。


 たまに生きているものにも見えるようにしているものもいるらしいが。

 頑張れば実体化できるらしい。


 そして、幽霊同士は見えるらしい。

 他にも幽霊には特徴がある。


 やるべきことが残っている死んだ者がなる姿らしい。

 そのやるべきことというものについて、初めて梨華に会ったときに「何を迷っているの?」と聞いたらしい。


 大体の生き物は自分が死にそうになることを理解する。

 理解して死んだ者は、幽霊にはならない。


 突然死んだ場合や心残りというものがある場合は幽霊になるという。

 そして心残りを解消すれば、成仏といって違う世界に行くことができるらしい。


 私に心残りなんてあるのだろうか。



 梨華という人間は、恋人を欲しがっていたのに、恋人ができる前に事故死したことが心残りらしい。


 そして幽霊となった今は、心残りである恋人をずっと探しているという。


 一体それにどんな意味があるのだろうか。

 私にはそれがわからなかった。


 しかし、私は梨華について行った。

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