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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

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牧歌的に扉のベルが鳴る

「たかが伯爵家の分際が、筆頭公爵家の嫡男に手紙を書く? 何を図々しいことを」


 こんな意地悪な物言いをする人間、この世界で私は、一人しか知らない。

 ブリトニー・ペギー・ウッドハウス!


 ウッドハウス侯爵令嬢は、ブロンドを思わせるハニーブラウンの髪を、今から舞踏会に行くの?と思えるアップにし、真っ赤なコートを着ている。口紅も真っ赤で、圧迫感を覚えてしまう。


「調べましたよ、ナタリー・シルバーストーン伯爵令嬢。あなた、伯爵令嬢のくせに、こんな街中で店をやっているなんて! そんなに財政がひっ迫しているのかしら、シルバーストーン伯爵家は。随分と落ちぶれたものねぇ」


 扇子を口元にあて、ウッドハウス侯爵令嬢は、値踏みするように店内を見渡す。

 デグランとバートンが同時に何か言おうとしたのを、私は制した。

 ウッドハウス侯爵令嬢は、とにかく面倒な女性だ。

 デグランとバートンを巻き込みたくない。

 彼女の標的は、私だけで十分だ。


 それに前世経験において。

 出る杭を打つような女性は、その杭を庇う男性がいると、怒りを増幅させる。嫌がらせはエスカレートだ。場合によってはその男性も、とばっちりを食う。


 ということでここは私が、ウッドハウス侯爵令嬢を撃退し、可及的速やかに帰ってもらおうとすると……。


 カラン、コロンと牧歌的に扉のベルが鳴る。


 そして店内に入って来たのは……セーラ!

 苺ミルクのような淡いピンクのコートで、愛らしさ全開で店内に入って来た。

 イエール氏は一緒ではない。一人だった。


「ナタリー様! 昨日教えていただいたお店、とっても美味しかったです。イエール先生も気に入ったと言っていました! 『野菜がこんなに美味しいものとは思わなかった!』って、二人して感動していたんですよ。それで今日はこれから屋敷で、イエール先生に勉強を教えていただくのですが、パウンドケーキとクッキーを、いただいてもいいですか? 今日からパウンドケーキ、紅茶味なんですよね!」


 確かに今日からパウンドケーキは、紅茶の茶葉を使った新商品だった。ちなみにクッキーも、プレーンと紅茶風味の二種類販売だ。


 しかしウッドハウス侯爵令嬢という、悪意の塊がそこにいるのに。

 セーラの天真爛漫さで、ピリピリしていた空気が収まった気がする。


 ひとまずバートンに目配せし、セーラの対応をお願いした。


「……あ、あなたは……シスレー子爵令嬢! どうしてこんな下賤な者のお店に!? しかも何が入っているか分からない商品を買うなんて! お腹を壊しますわよ」


 セーラの登場で、ほんわかした空気が漂った。だがウッドハウス侯爵令嬢の一言で、一気に氷点下まで下がった。


 さすがにこれには私も怒りが沸き、口を開きかけたが……。


「驚きました! 学校では、ルージュは禁止なのに。このお店に顔を見せるため、わざわざオシャレされたんですね~! でもその真っ赤な血みたいコートと、濃すぎるルージュで、なんだか娼婦みたいですよぉ。お洒落の仕方、学ばれた方がいいですわよ。それに下賤がいるようなお店。そんなお店にいるあなたも、仲間認定されちゃいますよ。さあ、どうぞ、お帰りくださいませ」


「なっ、何を、ちょっと……!」


 セーラは有無を言わせず、ウッドハウス侯爵令嬢を店から追い出し、扉の鍵までかけてしまった。

 ウッドハウス侯爵令嬢は、キーキーとわめきながら、扉のガラス窓に、手にしている扇子を叩きつける。


 すると。


 周囲のパブリック・ハウスの店主や店員さん、そのお客さん、通行人が、ウッドハウス侯爵令嬢を指さし、ひそひそと話し始める。


「ちょ、何ですの! 失礼ではありませんか! 人を指さすなんて!」


 ウッドハウス侯爵令嬢が、キーキー声で喚く。

 さらにみんなが、冷たい目線を彼女に向けている。


 この界隈のみんなは、仲間意識が強い。

 こんな風に余所者が、しかも貴族の令嬢が、上から目線で騒ぎ立ててれば……。


「これは何事ですか! そこの娼婦、店頭で騒ぐとは何事か! 営業妨害をしていると、通報が入ったぞ!」


 王都警備隊が駆け付けた。

 ウッドハウス侯爵令嬢の肩を、左右から二人の隊員が押さえる。

 「娼婦なんかじゃありませんわーっ!」と叫ぶが、ウッドハウス侯爵令嬢は、そのまま連行されていく。離れた場所で、彼女の馬車の御者が、オロオロしている。


「弱い犬ほどよく吠える――と言いますが、まさにその通りですね。さて。ナタリー様、デグラン様、バートン様。うるさい蠅は追い払いましたので、もう忘れましょう! バートン様、クッキーはプレーンもくださいね!」


 セーラのこの一言を合図に、私達は動き出す。

 私はせっかく来てくれたセーラのために、アールグレイを入れる。

 バートンは紙袋にクッキーを入れていた。

 デグランは「やれやれ」と調理台を布巾で拭いている。


 紅茶を用意しながら思う。

 セーラはやはり、ヒロインだ。

 ヒロインは悪役令嬢にはいじめられるが、それ以外では度々ヒロイン・ラッキーに恵まれる。今回のように、ヒロインであるセーラが心底怒りを感じれば……。


 彼女の前から、強制排除される。


 ウッドハウス侯爵令嬢は、見た目は派手だが、それでも所詮モブ。

 モブがヒロインに盾ついて、敵うはずがなかった。


「ではこちらをどうぞ」


「ありがとうございます、バートン様!」


「シスレー子爵令嬢、よろしかったらこちらの紅茶、お飲みください。蠅を追い払ってくださったことへの、心ばかりの御礼です」


「まあ、ありがとうございます! ベルガモットがいい香りですね~」


 セーラはスツールに腰かけ、嬉しそうに紅茶を飲み始める。

 初めてここに来たセーラは、ウッドハウス侯爵令嬢とは別の意味で、猜疑心に溢れていた。

 それが今は……。


 本当に。

 人の巡り合わせって不思議だな、と思いながら、使った茶器を片付けた。

お読みいただき、ありがとうございます!

先日から本作の誤字脱字報告をしてくださる読者様がいて、本当に助かりました。

いいね!で応援くださる読者様も、いつも感謝です。

いろいろな御礼を込め、この話を更新しました。

重ねてになりますが、応援、ありがとうございます☆彡

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