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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

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何か、悟りでも開けたのかしら……?

 阿闍梨は、アッサムティーの入ったティーカップを眺めると。


「……これは!」


 短く叫び、その黒い瞳をカッと見開いた。

 その様子を目撃したバートンと二人、驚いて息を呑む。

 デグランはこちらに背を向け、鋭意パンケーキを焼いている最中だった。


 何か、悟りでも開けたのかしら……?


「これは、矢絣柄ではないか。よもやこの大陸で、母国を彷彿させるティーカップに出会えるとは! それにソーサーも同じく矢絣柄。自分は店を開けるにあたり、できれば母国の陶磁器を用いたいと考えた。だがそんなもの、平民の手に届く店では扱っていない。まれに骨董市で見かけても、それは欠けていたり、割れて半分だったり……。とても客に出せるものではない。シルバーストーン伯爵令嬢、あなたは伯爵家のご令嬢。ゆえにこのような品も、たやすく手に入るのか?」


「あ、いえ、そのティーカップとソーサーは販売しています。値段は……」


 すると阿闍梨は両手をカウンターにつき、立ち上がろうとした。が、足が床に届かないことを思い出したようで、腕組みをして、咳ばらいをする。


 なんだか少し、コミカルな方ね。


 そう思いながら、ドロシーのことを紹介する。


「ぜひ、買い受けたい。そしてドロシーという陶芸家を、ご紹介いただきたい。その値段であれば、店で使う皿や小鉢、湯飲みなど一通りを注文できそうだ。なんて良心的な価格!」


 ドロシーは将来、ビッグになるかもしれなかった。

 でも今はまだ陶芸家の卵。

 この値段で手に入れることができるのは、今だけだろうと思う。

 その点、阿闍梨はラッキーだ。


「自分は大陸にやってきた時、仏の御心を広める心意気でいた。だがこの大陸で、神と呼ばれる存在は、一つしか認められていない。なかなか受け入れられず、乞食同然となってしまい、これではいかんと一念発起し、店を始めた」


 あ……それはその通りだ。

 この大陸には、かつてギリシャ神話のような神々がいた。しかし今となっては、なかったことになっていた。


「自分は守銭奴のつもりはないが、この国で生きて行くには、金貨が必要とよく分かった。それからはコツコツとこの三年間で、金を貯めることになったのだが……。これはきっと、この器たちと出会うための、仏のお導きだったのだろう……」


 うん……?

 なんだか微妙に違う気がする。でも細かいことは、指摘しない方がいいだろう。

 何せドロシーの上客になってくれるのだから。

 しかも私はこの後、醤油について話を聞きたいのだから。


 そこへナイスタイミングでデグランが「マシュマロサンドパンケーキ黄金ゴールデンパウダーのブラックシロップ(黒蜜)かけ」を出してくれた。


「阿闍梨様、こちら、アツアツでこそ、一番美味しくいただけます。まずは召し上がってください」


 私がそう伝えると、阿闍梨は素直に応じる。


「! そうであるか。ならば、いただきます」


 両手を合わせ、合掌すると、阿闍梨は当たり前のように、ナイフとフォークを手に取る。

 何ら問題なく一口目を口に運ぶ。

 作務衣でパンケーキを食べる長髪の阿闍梨は、何だかシュールだ。


「懐かしい味わいに、この大陸の食べ物が、なんともあうことか! そうか。このような融合もあったのだな。自分は精進料理を正しく出すことに腐心したが、このような方法もあったのか……!」


「あ、阿闍梨様。これはある意味、邪道です。阿闍梨様のお店は、正統派のメニューでいいと思います。もし二号店を出すなら、その時は和洋折衷をしてみてください」


「なるほど。……確かにその方がいいかもしれぬ。精進料理は庶民が好む。だが和洋折衷にすれば、貴族が足を運ぶ可能性も出てくる。……いい差別化になるな」


 阿闍梨はどうやらこの三年間で、どっぷり俗世に浸かったようだ。間違いなく、商売上手!


「このきな粉と黒蜜は、シルバーストーン伯爵令嬢が作られたのか?」


「レシピは何かの書物で見ました。きな粉は私も作ることはありますが、黒蜜も含め、こちらのデグラン様に作っていただいています」


「なるほど。……デグラン様、君は本物の黒蜜を口にしたことがあったのかね?」


 問われたデグランは、布巾で手を拭くと、私の横へとやって来た。


「残念なことに、本物のクロミツは、口にしたことがありません」


「それでこの再現率。素晴らしい。それにこのパンケーキ。外のサクッとした感じに反し、中はふわっとし、それでいてしっとり。マシュマロのとろけ具合も完璧だ。君は実に素晴らしい料理人だ」


「ありがとうございます。自分はまだ、アジャリ様のお店に行くことができていません。ですが次の休みには、必ず足を運びたいと考えています。アジャリ様の料理もぜひ味わたいと思っているんです。……ところでナタリーお嬢さんから聞いたのですが、ショーユという調味料が、アジャリ様のお店にはあるのですよね?」


 デグランが、聞きたいと思っていた醤油の話題を出してくれた!

お読みいただき、ありがとうございます!

お知らせです。


【完結】新章「カルーナとイチョウ:邂逅の物語」

ほっこり、心温まる物語

祖父母や田舎のことを懐かしく思い出す。

あの時にもう一度帰りたい――そんな郷愁の物語。


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章ごとの読み切り作品。

1話辺りもさくさく読めるボリュームになっています。

歯磨きしながらスマホで読める!

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最近、いろいろ疲れたなぁと思ったら、この作品で心の洗濯を!

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