表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/372

モブはモブでも少し異色

「ナタリーお嬢さん。お店、開けないのですか?」


 眼鏡越しのバートンの黒い瞳に見つめられ、私はハッとする。

 デグランと一緒にいたあの貴婦人は、誰なのか。

 それが気になり、手はグラスを布巾で磨いているが、心はここに在らずになっていた。


「もう、時間ですね。開けます!」


 なんだか空元気な声をだしている気がするが、仕方ない。

 ともかくいつもの時間に、お店をオープンさせた。


 すると。


 店頭のスタンド看板をじっと眺めている、小柄な男性がいた。

 黒の作業服のような装いをしている。

 黒髪に黒い瞳。眉はキリッとして、背筋がピンと伸び、とても姿勢がいい。さらに凛とした雰囲気を漂わせている。


「!」


 バッチリ目線が合ってしまった。眼光は鋭いのだが、なぜだか怖くはない。私から視線を逸らすことなく、その男性は扉を開け、店内に入って来た。


「いらっしゃい……ませ」


 バートンが一瞬戸惑いつつ、ゆっくりした口調で話し出した。


「あ、あの、言葉は分かりますか?」と。


 私は見慣れているが、バートンもデグランもきっと初めてみたかもしれない。この男性、モブはモブでも少し異色。だって多分、日本人……だと思うから。よく見ると、着ている服は、作務衣に似ている。


「お気遣い、痛み入る。言葉については問題ない。既にここに住み、三年が経つ」


 そう言うとその男性は、再び私に視線を戻した。


「初めまして。自分、精進料理『心』の店主の阿闍梨アジャリと申す。一昨日、こちらのお店の店主が店に来てくださったそうで。わざわざ足をお運びいただき、ありがとうございます」


 深々と頭を下げられ、私もデグランもバートンもビックリだった。

 精進料理のこと、阿闍梨のことも、デグランには話していた。

 バートンは昨晩、デグランから聞いていたのだと思う。

 その顔は「この人があの東方のお店の人か」という表情をしている。


「阿闍梨様、先日は大変美味しい料理、ありがとうございます。素材の味を生かした、実に素晴らしい料理の数々でした。私は東方の食文化を取り入れたメニューを出しているため、阿闍梨様のお料理に、とても興味を持つことになったのですが……。あ、申し遅れました。私は、ナタリー・シルバーストーンと申します。シルバーストーン伯爵家の次女です」


「シルバーストーン伯爵令嬢。これは……珍しい。伯爵家のご令嬢が、カフェを営業されているとは」


 やはりそこ、そう思いますよね。

 ということで簡単に自立を目指し、店を始めたことを説明する。


「ほうほう。この大陸に、そこまで強い自立心をお持ちの女性がいたとは。驚きだ。でも気骨があり、よいのではないか。そんなシルバーストーン伯爵令嬢が手掛ける、きな粉と黒蜜を使ったパンケーキ。ぜひ食べさせていただけないだろうか」


「勿論です。どうぞ、こちらへお掛けください。看板メニューのパンケーキと、アッサムティーをお出ししますね」


 阿闍梨は「それで頼もう」と言い、スツールに腰かける。

 バートンが手早く水の入ったグラスを出す。


「こんなに早くにお会いできるとは、思いませんでした。お忙しい中、ご来店いただき、本当にありがとうございます」


「いや、何。自分の店は、王都のはずれにあるが、それでも同じ王都。市場は王都の中心部にある。サツマイモやいくつかの野菜は、この大陸では見かけることがない。よって自分で栽培をしているが、それ以外は市場で仕入れることになる。よってここまで来ることなど、造作もないこと」


 スツールに座っても、阿闍梨はピシッと背筋を伸ばし、とにかく姿勢がいい。

 しかし。

 僧侶と言えば、坊主のイメージが強い。でも彼は艶やかな黒髪を伸ばしている。胸元までの長さだった。


「シルバーストーン伯爵令嬢は、精進料理のことも知っていたと、聞いている。昨日、来店した王立コンランドアカデミーの講師も勉強熱心だったと、ボブ……唯一の店員の彼が言っていたが……」


 そこで瞳を細め、私をじっと見る。


「精進料理を知っていた。それは本当のようだ。なぜなら精進料理は、僧侶(モンク)に伝わると、シルバーストーン伯爵令嬢は、ご存知のようなのだから」


 そうなのでコクリと頷くと、阿闍梨は黒い瞳を細めて笑う。

 その笑顔は……なんだか慈愛に満ちている!


「僧侶と言えば、坊主ではないか。そう思われたのだろう?」


「そ、そうですね。ですがここは大陸の国。坊主頭は……目立ちますよね」


「王侯貴族の中には、坊主にしてかつらを被るものもいるとか。郷に入っては郷に従えと言う。自分も慣習に従うことにした」


 ということは、この黒髪はかつら……? ブルネットは貴重と言われているのに。


「三年かけ、髪を伸ばした」


「なるほど。そうだったのですね。……絹糸のようで美しいです」


「ほう。シルクとは言わず、絹糸と申すか。本当に、東方への造詣が深いようだ」


 そこでバートンがアッサムティーを出してくれた。

 改めてティーフリーについて説明すると、阿闍梨は目を丸くして驚く。


「これまたなんと画期的な発想! 東方に詳しく、商売の才もありとは。そのような方が、この王都にいたとは。いやはや知り合うことができ、光栄だ。仏の導きに、感謝するしかない」


 ここで何やら唱えるところは、ちゃんと僧侶っぽい!と思ってしまう。

 阿闍梨は念仏(多分)を唱え終えると、改めてバートンが置いたアッサムティーの入ったティーカップを眺める。


「……これは!」


 その黒い瞳を、カッと見開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ