浮気問題に答えはあるの?
近衛騎士の彼が帰ると、イエール氏とセーラが来店した。
二人は揃って看板メニューとアッサムティーを楽しみ、会話を楽しんでいる。
もう私が声掛けする必要もない。
さらにそこに歯軋りマダムとそのお友達マダムが来店したが、この二人はホリデーシーズンでの旅行の話で盛り上がっているので、恋愛相談はなし。二人へのパンケーキと紅茶の提供も終わり、そこでデグラン、ロゼッタの三人で「浮気」について話すことになった。
「ねぇねぇ、ナタリーお嬢様。さっきの方は、奥さんの妊娠がきっかけで、浮気に走りそうになったんですよね? でもそんなこととは関係なく、浮気をされたら、どうするのがいいのですか?」
「そうね。恋人が浮気した場合と、結婚相手が浮気した場合で、対応が異なるのだけど……。まず恋人が浮気した場合。『浮気された!』って、怒っているはずなのに、とてつもなく悲しくなることもあると思うの。よってまずは冷静になることが重要ね。気持ちを落ち着かせ、自分がどうしたいのか、考える必要があると思うの。浮気をするような相手とは、綺麗さっぱり別れたいのか。それともそれでも交際を続けたいのか」
「交際を続けたいなんて、思うのか、ナタリーお嬢さん」
デグランが洗い物をしながら尋ねる。
「私は……浮気するような相手はダメです。ですが人によっては、それでも好きという方もいますから」
「なるほど」
「それで自分の気持ちが固まったら、どうするんですか、ナタリーお嬢様」
そこで私はステップとして、まず、本当に浮気をしているのかを確認すること。次に本人に浮気の事実を確認する。そしていつもと同じ。感情的にならず、冷静な話し合いをすること必要だと説明した。
別れを決めたなら、もうキッパリ別れる。もしやり直しをするつもりがあるなら、なぜ浮気をしてしまったのか、相手の意図を知り、改善案を共に考える必要があった。
「よく聞かれるのが、『一度浮気した人は、また浮気しますか?』という質問。でもこれこそケースバイケースで、その人の性格によるところも大きいと思います。ただ、浮気を繰り返しやすい人の傾向は、ある程度分かるかと」
「へえー、そうなんだ。例えばどんな傾向なんですか?」
ロゼッタが興味津々という表情で聞いてくる。
「まず、自分に甘い人間です。浮気相手と過ごす時間は、スリリングで背徳的。その刺激がもたらす快感に流されるような人間は、浮気を繰り返す可能性が高いです。さらにそう言ったタイプはストレスにも弱く、浮気を逃げ場にすることもあります」
少し似た傾向で、「浮気相手から惚れられている」と感じ、それにより自己評価が高まるタイプもいる。そう言った人間も自尊心を保つために、浮気を繰り返す傾向があった。
さらに浮気に罪悪感を覚えないタイプも、当然だが浮気を繰り返す。倫理観がずれている人間に、いくら浮気が悪と説いても、理解はされない。それに元々そちらの欲求が強いタイプは、一人では飽き足らないとなってしまう。もはや本能的に複数の相手と関係を持たないと、どうにもならないというタイプも、当然だが浮気を繰り返す。
「交際相手に不満があり、それを言えずにはけ口を求め、浮気した。このパターンもとても多いです。さらには交際が長引き、マンネリ化して、つい浮気した、なんてことも。こうなると浮気した相手だけではなく、浮気された相手にも関わってきます」
「おや?」と思ったのは、いつの間にかイエール氏とセーラも、歯軋りマダムとそのお友達マダムも、なぜか私の話を真剣に聞いている。今は誰かの悩み相談に乗っているわけではないのに。なんだか注目されていることにドキドキしながら、話を続ける。
「ただ、私としては、結婚していない二人なら、潮時なのだとも思えます。不満について相手に打ち明け、改善を模索しない。マンネリ化していると感じても、二人で話して解決策を模索しない。その時点でもう、二人の関係は終っていると思います。そこで無理矢理延命をするくらいなら、キッパリ別れ、次に進んだ方がいいと、思ってしまいますが……。でもすべては『自分がどうしたいか』です。結局、最後の決断は、自分自身でするしかないですからね」
これには聞いていた全員が、拍手をしてくれた。
なんだか猛烈に恥ずかしくなる。
「結婚しており、離婚できない夫婦の浮気は、どうする?」
イエール氏が紅茶を口に運びながら尋ねる。
「そうですね。この世界では、基本的に離婚は認められませんから。辛いところです。できればお互いに一度気持ちをリセットし、思いやりと優しさを持ち、新たな気持ちでやり直して欲しいですね」
破綻しているなら、離婚すればいいのに――と思ってしまうが、それができないのが、この世界なのだ。ならばできる限りの最善を、考えるしかないだろう。
「浮気以前の生活を思い出し、そこで良かったことに、もう一度二人で取り組む。例えば共通の趣味を持っていて、共に取り組んでいた時は上手くいっていた。でも結婚して忙しくなると、そんな趣味も忘れ……だったら、もう一度夫婦でその趣味をやってみるのもいいと思います。他にも夫婦で共同作業を行ったり、目標を決め、そこに共に向かうようにする。離婚できないのなら、愚痴を繰り返したり、過去を蒸し返しても意味がないですからね。そこはもう、些細なことの積み重ねだと思います」
「ナタリーさんって、まだ二十歳よね? よくそんな人生達観したようなアドバイスができるわよね。……うちの息子、まだ婚約者もいないのよ。どうかしら? これでも我が家は男爵家ですのよ」
歯軋りマダムがとんでもな提案をすると、そのお友達マダムまで、こんなことを言い出す。
「リード伯爵家はご存知? そこの嫡男の方が、お嫁さん探しを始めたそうよ。あそこは海運業で財を成しているから、将来有望。私、誰かいないか探して欲しいと頼まれているの、どうかしら?」
もう驚きの提案を受け、あわあわすることになってしまった。
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諦めた私は、婚約破棄と断罪を受け入れる覚悟だった。
ところが、思わぬ人物の行動で、婚約破棄と断罪の回避に成功。
晴れて婚約者と結婚することになったが……。
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