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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

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なぜかデグランが

「ですよね。私も最近知って、今、夢中になっている柄なんです。東方から戻った交易船が、タンモノと呼ばれる生地を、積んでいたそうなんですよ。上質なシルク生地で、この模様が織り込まれていて。これ、鳥ですよね。可愛らしい。そしてこれは、矢のヴェインみたいな模様ですよね。こっちは独特の幾何学模様で」


 そうか。昨晩のアレン様もそうだけど、少しずつ、この世界に大陸外の文化も入ってきているのね。いまだ、武器は剣・槍・弓が主流で、爆弾はあるものの、銃はまだない。その爆弾も採掘での利用がメイン。でも確実に新しい文化は、大陸に広がっていくのだろう。


 そうなると和柄に目をつけたドロシーは、先見の明があるわね。前世の歴史を考えると、東方の文化は貴族が珍しがり、流行るはずだ。


「そうね。とてもユニークで、素敵だと思うわ。それに珍しい物が好きな貴族が、喜んで飛びつきそう。ぜひ、お店で使ってみましょう」


 私の言葉にドロシーの瞳が輝く。


「本当ですか! 良かった! ではこの三つは今日、置いていきますね!」

「ええ、そうしてください」

「良かったねー、ドロシー!」


 ドロシーはロゼッタと同じ、十九歳。

 二人は顔を合わせた時から、意気投合している。


「そうだ、ドロシー! 今度さ、宮殿にお兄ちゃんと一緒に行かない?」


「!? き、宮殿!? そんなところ、私、む、無理ですよ」


「大丈夫、大丈夫。私だって初めてだし。でもね、招待されたの。宮殿で開催されるパーティーに。しかも、ドレスもプレゼントしてくれるって。お兄ちゃんの同伴者になれば、ドレスも無料で手に入るんだよ。パーティーでは美味しい料理も食べられるし、貴族とも知り合える。宮殿で使われている高価なお皿とかも見られるから、勉強になるんじゃない?」


 どうやらロゼッタは、バートンの同伴者にドロシーをスカウトするようだ。

 バートンに相談せず、勝手に決めて大丈夫?と思うものの。

 なんだかんだでバートンは、ロゼッタに甘い。きっと許してしまうのだろう。


「わ、分かりました。検討します。それでそのパーティーは、いつなんですか?」

「えーとね、それは……」


 カラン、コロンのベルの音に「!?」と顔を入口に向ける。

 今日は開店前に尋ねてくる人が多いと思ったら……。


「デグラン……?」


 なぜかデグランが二階からではなく、店の入口から入って来た。


「おはようー。あ、ドロシー来ていたんだ。元気にしてたか?」


 デグランが気さくに声をかけ、ドロシーも「おはようございます、デグラン様!」と応じている。


 料理人にとって、自身の作った料理を盛り付ける陶磁器は、とても重要。デグランもまた、ドロシーの作品を気に入っており、よく「こんな皿が欲しい。作れるか?」と、個人的にリクエスト(注文)していた。


 ということで、ドロシーとデグランがフレンドリーに話しているのはさておき。


 なんで店の出入口から、デグランは登場したの?


 服装はいつもの装いだが、よく見ると、なんだか荷物を持っている。いわゆるずだ袋だ。


 何が入っているのかしら? 何か食材でも買いに行ったの……?

 

 以前、デグランが初めて店休をとった時。

 休みを使い、何をしているのかなんて、気にならなかったのに。

 今は……とても気になってしまう。

 本人に聞けばいいのだろうが、詮索しているとは思われたくない。


 疑問は残るが、まずは開店準備だ。


 この後、ドロシーも手伝ってくれて、開店準備はスムーズに終わる。

 さらにデグランがガレットを焼いてくれて、開店前の腹ごしらえも完了。

 ドロシーも満腹となり、笑顔で帰って行く。


 「キャンディタフト」に自身の作品を卸すようになり、ドロシーはアルバイトでやっていた皿洗いの仕事からは、解放された。それでもまだまだ陶芸家の卵という立ち位置で、生活はカツカツ。こうやってお店に顔を出してくれた時は、まかないを出すようにしているし、お土産でパウンドケーキやクッキーももたせている。


 芸術家の卵というのは、本当に大変だと思う。

 微力ながらでも支援できればというのが、私の想いだった。


 ということでドロシーが帰るのと同時で、お店をオープンする。

 午前中は晴れていたのに、今、空を見上げると曇り空。

 ドレスが汚れるのを嫌うので、今日は女性のお客さんは少ないだろうと思っていたら……。


 早速、お客さんがやってきた。

 男性客お一人様からのスタートだ。


 しかもこの方は……。


 一人で来店。そしてこの体躯の良さ。髪色はブラウンにヘーゼル色の瞳。そこは安牌のモブ同盟だが、間違いなく、騎士だ。でもこの地味な苔色のマント、赤にゴールドの宝飾たっぷりの隊服――って、近衛騎士!!!


 私は素早く窓から店舗の外を確認する。


「ナタリーお嬢さん、どうしたんだ……?」


 お客様を案内せず、窓に向かった私に仰天しながら、デグランが声をかける。

 ロゼッタは私の代わりに、接客してくれていた。


 私はまず、通りや近隣のどこかに、ゴージャスな馬車が止まっていないかを確認。さらに苔色のマントの男性が、他にもいないか確認し――。


 改めてスツールに座る近衛騎士に近づき、尋ねる。


「お客様、いらっしゃいませ。……そのお姿から察するに、近衛騎士の方ですよね。今日は……何用で?」


「あ、失礼しました。本日は完全なるオフでの来店です。厳密にはこの後、夜間勤務で、その前に立ち寄りました」


 なんだ、そうだったのね……。

 そこでようやく緊張し、強張った全身から力が抜ける。

 またもやお忍びで、王族の誰かが来店したのかと思った。


 デグランもロゼッタも「近衛騎士」というワードで、私のさっきの行動を理解したようで、「なるほど」という顔をしていた。


「わざわざ勤務前の来店、ありがとうございます。……恋愛相談、ですか?」


 私が問いかけると、近衛騎士は照れたように頷く。


「もしや王妃殿下がいらした時、いらっしゃいました?」


「はい。その通りです。裏口の見張りについていました。その間、なんとも甘い香りをかいでしまい……。看板メニューの『マシュマロサンドパンケーキ黄金ゴールデンパウダーの蜂蜜かけ』を食べたくなったのと、恋愛相談で、来店した次第です」


「了解しました。ではオーダーは、看板メニューと、紅茶はアッサムティーでいいですよね?」


 近衛騎士はコクコクと頷き、ロゼッタが出していたグラスの水を口に運ぶ。

 私はカウンター内に戻り、恋愛相談とティーフリーについて説明し、そして声をかける。


「では、あなたの悩み、お聞かせください」

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