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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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俺のパンケーキ!

 タム令息が満足そうに店を出た後、令嬢三人組の甘酸っぱい恋の話を、相談ではなく聞くことになった。その後、仕事帰りの事務官、舞踏会へ行く前に立ち寄った令嬢の軽い恋愛相談に乗り、この日は終わる。


 そこから三日間、お店を回して気が付いたことは……。


 ただのカフェなら一人で回せた。

 だが恋愛相談もやるなら、私一人では難しいということだ。


 余裕を持つなら三人。最低でも二人。

 つまりパンケーキ担当と恋愛相談担当、それぞれで一人は必要ということだ。


 オープンから五日間。


 パンケーキを主に焼いてくれたのはデグランだった。彼がいてくれたおかげで、回せた五日間だったと思う。勿論、バートンとロゼッタの兄妹も交代で顔を出し、サポートしてくれた。昼過ぎからティータイムまではロゼッタ、ティータイムから閉店まではバートン、そんな二人三脚までして応援してくれたのだ。


 これにはもう心から感謝で、だが三人の厚意にいつまでも甘えられないと思った。


 そこでカフェの営業が終わり、パブリック・ハウス「ザ シークレット」のオープンの準備を手伝い、そこへバートンとロゼッタの兄妹が揃って顔を出してくれたので、私は今後について話すことにした。


 デグランとバートンはいつも通りの装い。ロゼッタはもぎたてのオレンジみたいな色のワンピースで、私は明るいイエローのワンピースだ。二人揃ってビタミンカラーなので、なんだか元気が出る。


 もうパブリック・ハウスに様変わりしているから、カウンターにもたれ、スツールはなし。


 みんな、まかないとしてデグランが用意してくれたホロホロ鳥のローストに舌鼓を打ち、ビールをゴクゴク飲んで、喉を鳴らしていた。


 そこで私はおもむろに口を開く。


「私の目論見が甘かったようです。一人ではカフェは回しきれないので、調理スタッフを一名、雇おうと思います」


 まずはそう切り出し、話を続ける。


「今のところ、売り上げの方は順調です。パウンドケーキやクッキーは連日完売で、販売量を増やしたくらいですし。それに食器類も売れて、陶芸家に還元ができ、お金を出すから自身のティーセットを使って欲しいという話も出ています。よってちゃんとお金を払い、人を雇用できると思うのです」


「なら、俺を雇ってくれよ、ナタリーお嬢さん」


 ホロホロ鳥のローストをペロッと平らげたデグランが、そうするのが当然、というように提案してきたので、ビックリしてしまう。


「え、でもデグラン様はそうまでして働かなくても……。それに夜遅くまで『ザ シークレット』を営業して、日中は体を休めたいのではないのですか?」


 するとバートンとロゼッタがクスクス笑い、デグランは頭を掻く。


「ナタリーお嬢さん、デグランは店を閉じたら、もうすぐに二階でバタンキュー。水浴びは翌日。それで昼前に起きてきたら、ソーセージを作ったり、肉の下ごしらえをしたり。自分しか食べないまかないのために、せっせっせと料理をしているのです。気にせず、こき使ってやってください」


 バートンがそう言うと、ロゼッタが手を挙げる。


「私は別に無償でいいので、恋愛を学ぶために顔を出させて下さい! たまにクッキーかじらせてもらえれば、嬉しいです!」


「画材屋は店内の匂いが独特なんですよね。でもカフェはいつも甘いいい香りがして……。いい気分転換になります。僕も引き続き、勝手に手伝わせていただきますよ。パウンドケーキをたまに味見させてもらって」


 バートンとロゼッタの言葉を受け、デグランが口を開く。


「まあ、そういうわけだ、ナタリーお嬢さん。俺は正直、何度もこのカフェの看板メニューのパンケーキを作っているから、もはや“俺のパンケーキ!”くらいの気持ちになっている。だから俺にこれからもパンケーキを作らせてくれ!っていうのが実は本音かな。それに黄金ゴールドパウダーもそうだけど、前にちょろっと言っていたブラックシロップ、俺、作ってみたいし」


「えー、何、ブラックシロップって!」


 ロゼッタが目を輝かせ、私は黒蜜のことを話す。するとバートンが「そういうものを新たに作ろうという発想が面白いですね」と興味を持ってくれる。


 三人は本当にいい人達だった。結局バートンとロゼッタは、お店のスイーツ目当てに遊びに来るだけだからと、これまで通り、手伝ってくれることになった。


 デグランも「週に一回、俺の店『ザ シークレット』で一杯飲んで、金を払って帰ってくれること。あとは厨房が暇な時は、好きに料理をさせてくれること。これが俺の雇用条件だ」と言って、正式に引き受けてくれたのだから……。


 本当にラッキーだと思う。


 カフェでは幸運続きだが、実家では……。


 私が離れで暮らすようになり、毎日何かやっているらしい……とは分かっているが、特に干渉はしてこない。それでいて時々、縁談話が来ていると、釣書が届けられた。そしてその釣書を見て、げんなりすることになる。


 相変わらず、政略結婚としか思えない縁談話ばかり。


 驚いたのは、三十歳も年上の男性は嫌だと私が言ったからだろうか。生後三か月の赤ん坊との縁談話を持って来たのだ! この赤ん坊が結婚できる年齢では、私はどう考えても高齢出産。これは縁談話を断り続ける私への当てつけ……そんな風にさえ思えてしまう。


 前世では親子関係は良好だったのに。転生したこの世界では、上手くいかない。それは……両親だけが悪いわけではないだろう。ここは乙女ゲームの世界であるが、貴族社会でもある。貴族の結婚は家同士の利害が優先されるのだ。平安時代の貴族の結婚がそうだったように。


 頭では分かっているのだが、前世記憶もあるせいか、どうしても受け入れることができない。そこはこの世界の両親に対し、申し訳なく思う。だからといって、持ち込まれる縁談話に首を縦にふるつもりはなかった。


「ナタリーお嬢さん、できたぞ!」


 デグランの声に我に返る。


 今日は、あいにくの大雨。それでも一応、店を開けているが、一向にお客さんは来ない。でもデグランはちゃんといつもの時間に来てくれた。


 だがカフェをオープンしたものの、お客さんが来ることはなく、暇だった。私はカップを磨いたり、帳簿管理をしたり、窓を拭いたり。


 一方のデグランは、黒蜜作りを始め、どうやら完成したらしい。


 いつもの髪色と同じアッシュブランのズボン、そしてデニムの風合いのシャツ。その上に黒いエプロンをつけ、厨房に立つデグランに近づく。今日の私はペールブルーのワンピースを着ていた。そしていつもの白のエプロン。


 店内に漂う、香ばしく甘い匂い。


「ほら、どうだろう」


 デグランが嬉しそうに黒蜜をすくったスプーンを差し出す。


「熱いから、ふー、ふーしてからな」


「あ、はいっ」


 ふー、ふーと息をスプーンにのった黒蜜に吹きかける。するとデグランの手が、髪を耳の上にかけてくれる。親切でやってくれたことだ。髪が黒蜜に触れないようにと。


 でもこれには思わずドキッとしてしまう。


 思わず上目遣いでデグランを見ると。


「ナタリーお嬢さん、その上目遣い、反則だぞ~」と言ったデグランが、天井を見上げ、左手で顔を隠すようにしている。


 え、あれ? 少し頬と耳が赤い?


「味見しないなら、俺が舐めちゃうよ?」


 指の間から瞳をのぞかせ、そんなことを言うので「え、待ってください!」とその手を掴み、スプーンを頬張る。


 あ、すごい! まんま黒蜜だ!


 スプーンを口にいれたまま、デグランを見ると……。


「無自覚か? ズルいぞ、ナタリーお嬢さん」


 そう言って困ったように笑うデグランが、なんだか妙に艶っぽくて、ドキドキしてしまう。


 というか、男の人の手をこんな風に掴んでしまうなんて!


 慌てて、スプーンを口から離し、同時に掴んでいたデグランの手も離した。


 触れたデグランの手が、予想以上にすべすべで驚いた。思いがけず、手をガン見してしまったので、誤魔化すように口を開く。


「意外と腕、逞しいんですね……」


「うん!? まあ、あれだな。昔は大勢の料理を扱っていたから、調理器具も重いし、肉や魚を捌くのに、意外と力を使うからか?」


「あ、なるほど……」と答えながらも、私は一体何を質問しているのよ!と大反省。


「それで、ナタリーお嬢さん、どうかな?」


 頬を少し赤くしながら、デグランが尋ねた。

お読みいただき、ありがとうございます!


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