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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

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モブ男子学生くんの悩み

 パンケーキを作りながら、聞こえてくるデグランとモブ男子学生くんとの会話。


「僕、男爵家の三男なんです。二人の兄は、既に婚約者もいて、一番上の兄は来年結婚。でも僕は三男だからって、両親も婚約を急いでいる様子がないんです。もしも僕が好きな人ができたと言ったら、相手が貴族であれば、あっさり交際を許してくれそうなんです」


「へー、それは良かったじゃないか。貴族って言ったら、政略結婚。意に沿わない相手とも、家門の利益優先で、結婚しなきゃいけない」


「そうなんですよ。クラスメイトからも羨ましがられます」


 フライパンを温めながら、ちょっと前の私だったら、モブ男子学生くんの言う通り、羨ましいと思っただろう。自由な恋愛なんて、夢のまた夢、が当たり前の世界だから……。幸い今は、違う。


「でも……気になる女子がいても、無理なんです」


「なんで無理なんだ?」


「だって……話せません」


「!? 高飛車な女子で、相手にされないのか?」


 デグランの問いに「違います!」と答えたモブ男子学生くんが語ったこと。それはここ最近、嫁姑問題や、体目的などの悩みに対応してきた私からすると、実にピュアな悩みだった。幼い頃、近所の年上のお姉さんに憧れるのとも違う。それは初恋らしい、初々しい悩みだ。


 気になる女子がいる。でも話しかけることができない。何を話していいか分からない。話しかけても相手にされないかもしれない――そんな悩みだ。恋愛経験など、ないに等しい、学生ならではの悩みと言える。


「クラスメイトなんだよな、その女子は?」


「そうです。今はまだ。でも春になれば、クラス替えがあるので……」


「なるほど。仲良くなるなら今のうち、ということか。でも社交界デビューは? クラスが違うとなっても、舞踏会でダンスに誘うとか、できるだろう?」


「む、無理ですよ。そんなみんながいる前で!」


 パンケーキを裏返しながら、「なるほど」と思う。ダンスへ誘うのは、大勢がいる場だ。もしそこで断られると、皆の前で恥を晒すことになる。モブ男子学生くんが「無理!」というのも納得だった。


「そうか。その女子と、二人きりになるようなチャンスは、ないのか? 例えば掃除当番でゴミ捨てを一緒にするとか」


「貴族の通う学校なんで、そういうのはすべて、用務員がやってくれます」


「さすが貴族の学校だな。じゃあ、日直もないか」「あります!」


 焼けたパンケーキをお皿に盛りつけていた私は、食らいつくように答えるモブ男子学生くんが可愛らしく、思わず笑みがこぼれる。


「そ、そうか。とりあえず、座れ。立ち上がる必要はない。日直があるなら、その女子と二人きりになるチャンスもあるだろう?」


「それは……ありますけど、何を話せばいいのか……」


「そんなの決まっているだろう」「えっ!?」


 焼いたマシュマロをサンドし、きな粉をふりかけていた私は、モブ男子学生くんの「えっ!?」の声の大きさに驚く。危うくドバッときな粉をかけそうになり、焦りながら、心の中で「セーフ」と息を吐く。


「せっかく二人きりになれた。そこで『好きな花は何ですか~?』なんて流暢に聞いている場合ではない。次に会う約束を取り付ける。それが重要!」


「な、なるほど……!」


「例えばこんな風にする。『自分は甘い物が好きだけど、スイーツのお店にも、カフェにも、男子一人では入りにくい。もしよかったら、一緒に行ってくれないか? 勿論、ご馳走するからさ!』――こんな感じだ。いきなり好意全開だと、女子も引くだろう? これまで意識していない男子から、急に誘われたら。だからあくまで人助けで付き合って欲しいと、お願いするわけだ」


 デグランったら、女性との交際経験はないはずなのに。ちゃんとよく分かっている。確かにいきなりろくに接点がない相手から「あなたのことが気になっています。カフェに一緒に行きませんか」では荷が重い。その点、一人では行きにくいから、同行してもらえると助かるであれば、応じやすい。しかもちゃんとご馳走すると言っているのだ。


 私は感心しながら仕上げの蜂蜜をかけ、モブ男子学生くんの前に出す。

 甘い香りに、彼は瞬時にとろけそうな顔になっている。

 デグランが「これはすぐに食べるのが重要だ。俺が話している間、気にせず食べるといい」と伝えると「分かりました、師匠!」とモブ男子学生くんは、ナイフとフォークを手に取る。


 デグラン、いつの間にか師匠になっているわ。


「ただし、準備は必要だ。誘うからにはスイーツの店なり、カフェを調べておく必要がある。『え、どこのお店に行きたいの?』となるからな。さらに甘い物が苦手、という女子もゼロではない。ゆえに事前に、甘い物が好きかは要確認だ」


「はあ……。美味しい」とモブ男子学生くんが笑顔になり、そしてデグランの話に応じる。


「事前準備、納得です。それは確かに必要なことですね。……でも、もしも断られたら……」


 パンケーキに夢中でぱくつきながらも、モブ男子学生くんがデグランに尋ねた。

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