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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

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ウエルカム・モブ!

 月曜日の狩りの帰り道。


 森に近い道は、でこぼこ道が続いた。

 揺れも激しく、ロゼッタはレナードの素晴らしさや、温室で見た珍しい植物について、語っている。それを熱心に聞いていたが。

 森を離れ、舗装された道に入ると、スプリングの効いた馬車の座席の揺れは、なんだか心地いい。


 気づけばロゼッタと二人、眠ってしまった。


 休憩所に立ち寄り、そこで一度、目覚めている。しかもジンジャーティーも飲み、さっぱりしたのに。再び馬車に乗ると……。またもぐっすり。


 こうして私とロゼッタが睡魔に襲われている間。


 ポートランド公爵と、双子の兄レナードと同じ馬車に乗ったデグランは。

 狩りの話から始まり、デグランの手料理について二人が熱く語り、楽しい時間を過ごしたようだ。さらにポートランド公爵邸に到着すると、夫人と弟も待っている。家族水入らず、食事と会話を満喫し……。


 その日、デグランは公爵邸にそのまま泊まり、翌日、朝帰り!


 カフェの開店に合わせ、二階から降りてきたデグランの顔色は、すこぶる良い。

 月曜日の狩りでデグランは、家族といい思い出をまた一つ、作ることができたようだ。


 そうやって少しずつ。

 家族との思い出を作る。

 幼い頃に得ることができなかった、両親の愛情を知り、兄弟との絆を紡いでいく。

 デグランが幸せな思い出を重ねることを、私は願う。


 そんなことを思っている間にも、開店準備は完了。

 いつも通りの装いのデグランとバートン、私はホワイトピンクのワンピースに、オフホワイトのエプロン姿でカフェを開ける。


 オープンすぐは、マダムや令嬢の来店が続く。

 だがその来店ラッシュがひと段落した時。

 珍しい!

 紺色のブレザー、ピンクの生地にチェック柄のウールのベスト、紺色のセンタープレスされたズボン。これは王立サンフラワー学園の、男子生徒の制服だ。そしてダークブラウンの癖毛に、琥珀色の瞳。平均的な身長と体重――間違いない。ウエルカム・モブ!だった。


「いらっしゃいませ」


 ちょうどエアポケット的に、お客さんがいない時間帯。バートンが、ティーアーンに近い角の席に案内する。モブ男子学生くんは、少し落ち着かない様子で席についた。ここはバートンに、説明をしてもらった方がいいだろう。


 アイコンタクトを送ると、バートンは完璧なウィンクで応じ、モブ男子学生くんにメニューやティーフリーの説明をしている。その間にグラスに水を注ぎ、カウンターテーブルに出す。


 バートンの説明を聞き終えたモブ男子学生くんは、チラッと私を見た。そしてメニューに視線を戻し、なんだか困った顔をしている。


 え、初対面だと思うのに。なぜ私を見て困った顔になるのかしら!?


 すると、スッと私の横に来たデグランが、気さくにモブ男子学生くんに声をかける。


「彼女は、恋愛相談に乗ってくれるナタリーお嬢さん。頼れる姉御だ。彼女のことは、気にする必要はない。パンケーキ、食べたいんだろう? ここはカフェだ。それにパンケーキが看板メニュー。注文したところで、何もおかしくない。むしろ当然。恥ずかしがる必要はない。俺もこのパンケーキが好きだ。男子が甘いものを好きでも、変ではないさ」


 デグランのアドバイスに、モブ男子学生くんの顔が笑顔になる。


「で、では。このパンケーキと、紅茶は……」

「アッサムティーがあいますよ」


 すかさずバートンが飲み物のフォローすると、「それでお願いします!」とモブ男子学生くんが答える。パンケーキを作るためにデグランが、私は紅茶を入れるために、それぞれ動き出す。一方のモブ男子学生くんは、バートン相手におしゃべりを始めた。


「あれぐらいの年齢の時って、女性や周囲の目を意識しちゃうんだよ。多分、彼は『男のくせに甘いものばかり食べて』と誰かに言われたことがあるのかもしれない。甘いものは、女子供が食べるもの――というイメージが、彼の中でできているのかもしれないな」


 生地をかき混ぜながらデグランが言うことに「なるほど」だった。前世結婚相談所に足を運ぶのは、社会人が多かった。男子学生との接点なんてなければ、男兄弟がいたわけでもない。しかしこの世界では、兄がいる。だがその兄は、次期伯爵家当主として、みっちり子供の頃から、英才教育を受けている。


 兄の成長は著しく、精神年齢は、実年齢よりぐっと上。私より先に、どんどん大人になってしまった。結果、いわゆる男子思春期のあるあるを、目の当たりにした記憶もない。


 一人で遠慮がちに、このカフェを訪れたモブ男子学生くん。甘いものを食べるため――ではないだろう。恋愛相談をしたいはず。でも私で大丈夫かしら?そう思いながら、アッサムティーとミルクを出すと、モブ男子学生くんが私と目を合わせず、困ったように尋ねる。


「あ、あの。恋愛相談。さっきの男性にしたいのですが……」


 これは予想外の展開。でも同性からアドバイスをして欲しいと思うのは、至って普通のことだ。「彼女が何を考えているか、分からない!」という時は、女性に相談するといい。だが「他の男子ならどうするだろう?」と思った時は、男性に質問するのが妥当なこと。


 ということで選手交代。


 デグランが、モブ男子学生くんの恋愛相談に乗ることになった!


 ロゼッタ情報でデグランは。


「デグランに好きな女性? え、これまでいなかったと思います。今は……いるっぽいですけど。子供の頃は、お兄ちゃんと三人でいつもつるんでいたでしょう。宮廷料理人になってからは……彼女作る暇なんてなかったと思う。それにパブリック・ハウスを始めてからは……店がデグランの彼女みたい! それに暇があれば食の探求ばっかしているし。恋愛経験は、だからゼロでいいと思います! 私と同じで」


 つまり、恋愛経験はゼロ。


 そんなデグランが、モブ男子学生くんの恋愛の悩みに、どんなアドバイスをするのか。


 気になる!

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