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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

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自分と同じと思っていた!?

「ただ、お二人は来月、もう結婚されるんですよね? 順番を間違えたのかもしれないですが、先にハネムーン状態なのではないでしょうか。大好きなあなたと結ばれ、それが嬉しくてたまらない。さらにきっと彼にとっての初めてがあなたで、とにかく今はそちらの欲求が高まっている。でもそれは大好きなあなただから、だという気もします。まだ若く体力もあり、止まらない……ということも、考えられます」


 そこでアッサムティーが用意できたので、ミルクと共に提供。

 令嬢が紅茶を一口飲んでから、話を再開させる。


「本当に欲求の処理だけ望むなら、娼館へ行くこともできるわけですからね。……でもこれも推測にしか過ぎません。この件は胸に秘められ、誰かに相談したのは、私が初めてではないですか? でも来月結婚をする相手ですよね。そしてこの世界では、離婚が基本的に認められていません。つまりどうしたってその彼と、結婚することになるのです。打ち明けるのは無理……とは言ってられません。素直にご自身が感じていることを、彼に伝えてみてください」


 これには令嬢は「え」となるが、結局、どんな悩みであっても。他人に話しただけで、まるっと解決はない。当事者同士が、動くしかなかった。


 私ができることは、気づきを与えるのがせいいっぱい。

 なんとか幸せになって欲しいから、懸命に言葉を紡ぐ。


「男性というのは、女性の気持ちに疎いものです。女性は『言わなくても分かるわよね?』と察してくれることを求めがちですが、男性は『言われないと分からない』という傾向が強いのです。毎度求めに応じたということは、あなたも自分と同じと思っている可能性も高いのです」


 令嬢はハッとし、何かに気づいてくれたようだ。


「ここはちゃんと『毎回、そればかりだと心配になる。あなたのことは嫌いではないし、大好きです。でも次のデートは観劇をして、食事をしたら、それで家に帰りたいわ』と伝えてみることです。そこで初めてお相手は『あ、そういうデートをしたかったんだ! 僕は自分の欲求ばかり優先させ、彼女を不安にさせていたんだ』という気づきにもなります」


 そこで令嬢の顔が「なるほど!」になる。さらに尊敬の眼差しを、こちらへ向けてくれた。

 でもそんなに大したことを、言っているわけではない。

 結局、求められ、ノーと答えると嫌われると思い、受け入れていることが多いのだ。そして自分の気持ちを素直に伝えることを、ためらっている。だがしかし。言わないと分からないもの。言葉にすることが大切だった。特に彼女の場合、もう来月結婚をするのだ。遠慮をしている場合ではなかった。


 頑張って。幸せな未来のためにも。勇気をだして!


「気づきの次は、行動変容です。あなたの気持ちを知ってもなお、自身の欲求を優先するのであれば。これまたご両親に、相談した方がいいでしょう。ですが、いろいろ悩んだけれど、誤解だった……ということもあります。あなたの気持ちを汲み、次のデートでは食事だけで解散した……となるかもしれません。まずは婚約者と話してみましょう」


 そこでタイミングよくパンケーキが登場。令嬢は「ありがとうございます! 私、婚約者と話してみます」と言ってくれた。これには安堵し、「では冷めないうちに召し上がってください」とパンケーキをすすめる。彼女は喜んでぱくぱくと食べ始めた。


 この様子なら、ちゃんと婚約者と話ができるはずだ。


 結局、今日のカフェの最後のお客さんは、このご令嬢だった。彼女は身も心も大満足で、お店を後にしている。そしてカフェのクローズとパブリック・ハウスの開店準備となった。


「ナタリーお嬢さんのさっきのアドバイス、すごいと思いましたよ」


 バートンがしみじみとそんなことを言うから、ドキッとしてしまう。

 悩みの相談内容が、これまた大人なものだったから……。


「男性の気持ちが手に取るように分かっているというか……。恋愛相談カフェなんて言っても『うん、うん。そうなんですね』と相槌を打って、聞くだけかと思っていました。でも実際は違う。しかも今回のような悩みにも、ここまで適切なアドバイスができるなんて……。ナタリーお嬢さん、恋愛経験が豊富なんですか?」


 これには片付けようとしていたティーカップを、落としそうになる。


「ち、違いますよ、バートン様! 学生時代、同級生の恋の悩みを、沢山聞いていただけです」


 前世で結婚相談所のコーディネーターをしていたなんて、言えるわけがない。


「それだけでここまでのアドバイスができるなんて……。それだけなのかな? あ、質問です!」


「な、なんですか!?」


 なんだかまだ動揺が収まらないまま、問い返すと、バートンはこんな質問を投げかける。


「意中の相手に、ライバルを意識し、告白できない男性がいたら、どうアドバイスしますか?」


「!? バートン様、そんなにライバルが多い女性を好きなのですか?」


 するとバートンが「ぷっ」と噴き出し笑い出す。

 「ナタリーお嬢さんは鋭いのか、鈍いのか、どっちなんですかね?」と言っているが、もう何が何だか分からない! とにかく聞かれたことには答えようと、思案を巡らせる。


 ライバルが多い相手……。


 そんなの結婚相談所の会員では、当たり前だ。よって何かピンとくるところがあったら、名乗りをあげるよう、アドバイスをしていた。手を挙げたところで、即結婚でもない。迷っている間にお相手は、別の誰かとマッチングし、次のステップへ進んでしまうかもしれないのだ。ゆえに。


「名のならないことには、何も始まりません。まずは名乗ることではないでしょうか。でもいきなり告白が難しいなら、『友達からお願いします』でもいいと思います。ライバルを意識し、ためらう。それは自信がないということも、理由の一つなのではないでしょうか。それならば『まずは友達からスタートで、その間に自分はどんどん成長し、君に好きになってもらうよう、頑張ります』……がいいのではないですか?」


「「なるほど!」」


 スツールを倉庫にしまいに行っていたデグランが店に戻り、バートンと声を揃えて返事をしている。


 デグランもまた、ライバルが多い女性を好きなの……?


 というかバートンもデグランも、意中の女性がいるのね……。

 なんだか寂しい気持ちになりながら、売上金を巾着袋にしまった。

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