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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二章】

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まさかのお客様

 元気にカフェをオープンし、そこに本日一人目のお客様として来店したのは……。

 上質な濃紺のスーツを、ビシッと着ているこの男性は!


「お、お兄様……!」


 ラズベリー色のワンピースに、バニラ色のエプロン姿の私は、ビックリしながら声を絞り出した。


「やあ、ナタリー。母上から、ナタリーのカフェの看板メニューが絶品だから、絶対に食べた方がいいと言われてね。でも週末は混む。狙い目は平日だと言われた。そこでアカデミーの授業がないこの時間に、来てみたよ」


 まさかの私の兄、二歳年上の伯爵家次期当主たるジョニー・シルバーストーンが来店し、ビックリしてしまう。兄はイエール氏が講師を勤める王立コンランドアカデミーに在籍中で、この春に卒業を控えていた。王立コンランドアカデミーとここ(カフェ)は近いので、来店しても不思議ではない。だが!


 来るなら来ると、朝食の席で言ってくれればいいのに!


 髪色と同じズボンに、デニムを思わせる風合いのシャツを着たデグラン。カナリア色の明るいワンピースに、白エプロン姿のロゼッタ。二人とも驚きの眼差しで、兄を見ている。


「……突然の訪問になったのは、申し訳ないと思う。毎日顔をあわせているんだ。事前に足を運ぶと言えばよかったと思う……だが、その、悩みが……」


 モブでお馴染みのブラウンの髪に手をあて、兄は私と同じ、琥珀色の瞳を細める。


 悩み。


 悩みと言えば、ここは恋愛相談カフェ。

 え、まさか、兄は恋愛相談をするため、このカフェに来たの!?

 妹に恋愛相談なんて、するのですかー、お兄様!


「ナタリーのお店で恋愛相談をやっていることは、タム男爵の令息から聞いたんだよ。先日、シュールルの演奏会で、ばったり会った。彼、遂に婚約者が出来たんだぞ。同伴していたよ。僕は挨拶をしたのだけど……。すると『恋愛相談カフェ「キャンディタフト」のおかげで、婚約者が決まった!』と教えてくれた。調べたら、ナタリーのお店じゃないか」


 これには「あ~」である。タム男爵の令息と言えば、破談二十回令息として知られ、確かにこのカフェにやってきていた。そして私は、恋愛相談に乗っている。ちゃんとアドバイスもしていた。


 オータムフェスティバルで再会した時、彼は別人のように変身しており、近々縁談相手と会うと話していたのだ。その後、その相手ととんとん拍子で婚約したと、わざわざ手紙で知らせてくれている。


 その後、婚約にまつわる手続き、双方の両親や親戚への挨拶。そういったことで、タム男爵の令息は多忙だった。カフェに足を運ぶことは、できていない。だがどうやら行く先々で、このカフェのことを話題に出してくれた。知らず知らずのうちに、宣伝をしてくれていたようだ。


「なるほど。事情は理解しました。どうぞ席にお座りください」


 私はカウンター内にいたので、ロゼッタにアイコンタクトをとる。ロゼッタは頷き、マダム二人組が座る席から一つ空けた席へ、兄を案内した。兄はちゃんとロゼッタに挨拶し、私はその間に、グラスに水を入れる。そしてメニューと共に、カウンターテーブルに置く。デグランはマダム二人組に、出来立てのパンケーキを出していた。


 その甘い香りに、兄はチラリとパンケーキに目を向ける。


「看板メニューと、それに合う紅茶、アッサムティーでいいですか?」


 尋ねると兄はコクコクと頷く。デグランを見ると「ナタリーお嬢さんが作らなくていいのか?」と目で聞いている。兄は看板メニューを食べに来たと言ったものの。本題は、自身の恋愛相談だ。ならばパンケーキは、デグランが作ったもので構わないだろう。むしろ今は私に、悩み相談をしたいはずだ。


 そこでデグランに「私は恋愛相談にのるので、パンケーキはお願いします」と伝える。デグランはウィンクで「OK」と応じ、生地の準備を始めた。


 それにしても。


 悩み相談なんて、屋敷ですればいいのに。なぜ、わざわざこのカフェで……と思いながら、兄に店のシステム、90分制でティーフリーであること、悩み相談もその時間の範囲で聞くことを説明する。


 そう、このカフェでは他のお店ではやっていない独自システムがある。最初の一杯は私がサーブする。だが二杯目以降の紅茶をお代わりは、ティーアーンからご自由にどうぞ、というものだ。ちなみにティーアーンは、金属製の紅茶専用で使われる卓上湯沸かし器。注ぎ口から紅茶が出てきてくれるので、私がサーブしないで済む。


「……へえ、それはすごいシステムだね。紅茶一杯分の支払いで、二杯目以降を自由に何度でもいただけるなんて。これは……そちらの元宮廷料理人くんの考えたプランなのかい?」


 するとデグランは、フライパンを手にこちらを振り返り、ニッコリ笑顔で応じる。


「ナタリーお嬢さんのお兄様、初めまして。このカフェの調理人のデグランです。ティーフリーのシステム、自分が思いついたものではありません。自分は料理を作れても、彼女のような発想はできません。ティーフリーは、ナタリーお嬢さんのアイデアです」


「そうなのか! すごいじゃないか、ナタリー!」


 兄が瞳をキラキラと輝かせる。

 モブなのに、兄も顔面偏差値が高い。その笑顔、妹ではなく、婚約者に向けてください、と思う。


 そう。


 兄には婚約者がいるのだ。ゆえに恋愛相談と言われても、何を相談するつもりなのか思ってしまう。まさか婚約者がいるのに、他に好きな人がいるとか、面倒なことを言い出さないわよね……と思いながら、兄を見る。


「あ。恋愛相談するなら、とっととしろと?」


 さすが兄妹として過ごしている時間が長い。私の性格もよく分かっているようだ。

 家族なのだから、ここは遠慮はお互いに不要。頷くと兄が口を開く。


「では早速だから相談させてもらうよ。実は、婚約者と母上のことで、悩んでいる」

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