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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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自分の舌で確認するのが一番

 デグランと向かったお店は、いわゆるインドカレーのお店。


 この乙女ゲームの世界には、不思議なことに、いくつか前世で実在する国が存在していた。その一つがインド。思うに、ゲームの制作陣の中に、無類のインドカレー好きがいたのかもしれない。


 ということでデグランと向かったそのインドカレーのお店、その名もマサラキッチン。


 最近、出来たばかりのお店で、まだ知る人ぞ知るお店だ。食にうるさい一部の貴族達の間で知られ始めており、デグラン曰く「これから人気店になるだろう」とのこと。そして私もそれは同意だ。前世で食べたインドカレーは、とても美味しかったのだから、この世界でも人気になると思った。


 案内されたお店は、内装は西洋風。豪華なシャンデリア、壁にかかる絵画はオペラの一幕を描いたもの。一見するとインドカレーのお店だとは分からない。


 でも料理を注文し、それが運ばれてくると……。


 前世であればインドカレーは、ステンレス製のカトゥリという容器にカレーや野菜やスパイスが盛り付けられ、タールというお盆のよう皿にのせられて、焼き立てのナンと共に提供される。でもさすがにこの世界に、ステンレスはまだない。ゆえに真鍮製の容器とお盆のような皿が使われている。でもそうやって盛り付けられたインドカレーは、前世で見たことがある!と思える姿。つまりは本格的にインドっぽい。


 デグランは登場したカレーについて、事前に勉強していたようで、分かりやすく説明してくれる。


「これがチキンマサラという、鶏肉を使ったカレーだ。そしてこれがキーママサラ。これは鶏ひき肉と、タマネギなどの野菜類で作ったカレーだ。サラダは、刻んだトマトとキュウリをひよこ豆と和えたもの。そしてこれはアチャールというピクルスだ。タマネギ、ニンジン、セロリと馴染みがあるよな。そしてこの巨大なパンは、ナンと呼ばれている。小麦で作られているが、独特の作り方をしているんだ。釜の内側に貼り付けて焼いている」


 そう説明した後、デグランはニコリと笑う。


「以上は文献で俺が得た知識。果たしてどんな味わいなのかは、自分の舌で確認するのが一番だ。食べよう、ナタリーお嬢さん」


「そうですね。いただきます!」「ああ、いただきます!」


 そこからの食事の時間は、いつものまかないタイムのように、とても楽しかった。チキンマサラ、キーママサラ、どちらも本格的な味わいだ。特にチキンマサラは、スパイシーで舌に残る辛さがある。おかげでナンが進む! 合間の箸休めにアチャールは最適で、ポリポリといけてしまう。ひよこ豆のサラダは、食べ慣れている。だがかかっているソースがヨーグルト風味なので、いつもと一味違う。


「ナンは結構、大きなサイズだった。でもナタリーお嬢さん、ペロリと平らげたな」


「そうですね。カレーと一緒に食べていると、パクパクといけてしまいました。チキンマサラのチキンは、食べ応えがあり、味も染み込んでいます。これは単独でも楽しめますね」


「事前にチキンをマリネしていると思う。チキンそのものに、しっかり味付けをしたものを使っていると思うな。ところでナタリーお嬢さん。水切りしたヨーグルトを蜂蜜で味付けした、濃厚かつクリーミーなデザートがあるそうだが」


「食べたいです!」


 デグランは「そうこなくっちゃ」と笑い、店員さんに合図(アイコンタクト)を送る。デザートと一緒にチャイを注文すると、デグランはスッと背筋を伸ばして私を見た。


 どうしたのかしら?


「ナタリーお嬢さん。今日は朝から一日、俺に時間を使ってくれてありがとう」


「そんな。むしろ初めてのスケートやこのカレーといい、新しい世界をデグラン様と体験できました。とても楽しかったです。ありがとうございます」


 私の言葉にデグランの頬が、ぽっと赤くなったように思える。


「……俺さ、ようやくスタート地点に立てたと思うんだ」


「スタート地点?」


「これでも俺は、公爵家の次男だ。副団長は……筆頭公爵家の嫡男。さらに高い場所にいるけど……。でも、なんというのか身分の壁、みたいなのはもうないからさ。……だからこれからも今日みたいに……デート、して欲しいな」


 私が何か言おうとしたまさにその瞬間に、デザートとチャイが到着した。店員さんがテーブルに並べるのを眺めながら、デグランの今の言葉を反芻することになる。


 そうか。デグランはポートランド公爵家の次男になるんだ。貴族の一員。確かに私との間の身分の壁は、なくなるわ。


 うん? でもなぜデグランは、自身とアレン様を比較したのかしら? 上には上がいるということを言いたかったのかしら? うーん、でもそんなこと、言ったところであまり意味がない気がする。


「!」


 デザートとチャイが並べられたのに、私が黙り込んでいるので、デグランが捨てられた子犬のような不安な顔で、こちらを見ている。


「デグラン様、本当におめでとうございます。貴族になると言っても、きっとデグラン様は、デグラン様であり、変わらないですよね。急に鼻高々になられたら、『えっ』と思ってしまいますが、そうはならないと思います。そんなデグラン様だからこそ、またデートしたいです!」


「……! 嬉しいよ、ナタリーお嬢さん。これからもよろしくな」


 デグランの表情が明るく輝き、見ているこちらまで頬が緩んでしまう。なんだか無性に照れ臭くなり「デザート、いただきましょう!」とはにかみ笑いになっていた。

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