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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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不審者に思われても仕方ない案件

 門を通過した後は、あっという間にエントランスに到着し、デグランを見送ることになる。私は馬車に残り、御者と共に馬車の待機スペースへと移動した。デグランが家族と再会する瞬間を見守りたかったが、エントランスに馬車をいつまでもとめておくわけにはいかない。人を下ろしたら、馬車は速やかに移動が基本だ。


 後ろ髪を引かれる思いだったが、そのままポートランド公爵邸の敷地内に設けられた馬車の待機スペースに到着。御者と共に馬車を離れ、待機小屋へ向かった。


 そこは来客の馬車の御者が、あるじの用事が終わるまで、待機するための建物になっていた。中に入ってみると、それはソファやテーブルセットが置かれている、簡素なワンルームという感じだ。当然だが今の時間、ポートランド公爵邸の来客は、デグランだけ。よってここには御者と私しかいない。そう思ったが母屋からメイドが来て、お茶を出してくれた。


 さすが公爵邸だ。お茶と一緒に出されたお菓子は、普通に母屋の住人が食べるものだろう。何せクッキーやフルーツタルトと共に、チョコレートも置かれていたのだから!


「あの……そちらのお嬢様は、こちらで待機でよろしいのですか?」


 メイドが少し戸惑い気味に尋ねた。


 デグランの同伴者と思いきや、御者の同伴者が馬車に乗っていた……というのはあまり聞かない話だ。不審者に思われても仕方ない案件。


「あ、はい。私はデグラン様のビジネスパートナーで、カフェの経営をしています。今回は付き添いで来ただけですので、こちらで待たせていただくので問題ありません」


 メイドは「そうですか。分かりました」と言い、出て行ったのかと思ったら!


 御者と共に椅子に座り、お茶を飲んでいたら、再びメイドが現れた。


「暖炉はついていますが、冷えるかもしれないので、こちらをお使いください」


 なんと厚手のひざ掛けをわざわざ届けてくれたのだ。出されたお茶菓子といい、このひざ掛けといい、なんて親切なのだろう。使用人が優秀かどうかは、屋敷を守る女主おんなあるじにかかっている。その点、ポートランド公爵夫人は、かなりできた方なのだと推察できた。


 例え父親や兄弟が冷たくても。ポートランド公爵夫人は、きっとデグランを温かく迎えたはずだ。よってデグランは大丈夫。


 そう思いながら、御者と共にお菓子とお茶を楽しみ、朗報を待つことにした。



 御者の待機部屋には初めて来たわけだが、時計がないことに気づいた。これはきっとここで延々と待ち、時計を見て「まだか……」とイライラしないで済むような配慮に思えた。その一方で、置かれた棚を見ると、テーブルゲームや本、ニュースペーパーも置かれている。ソファには毛布も置かれ、クッションを枕代わりに仮眠もとれるようになっていた。


 御者に聞くと、通常は待機部屋で一服……つまりお茶を一杯飲んだ後は、馬の世話や馬車のメンテナンスをするという。だがさっき、馬車を降りた時、公爵邸に仕える馬丁がやってきて、それらすべてをやっておくと言われたのだ。


 ここでも思う。さすが公爵家……!


 というか、御者が休憩できるような気づかいは、ポートランド公爵夫人がそうしているのか、代々ポートランド公爵家がそうしているのか。とにかく立派だと思えた。


 そうやって私が感動しているところに、再びあのメイドが顔をのぞかせたのだ。もしやお菓子のお代わりがいただけるのかしら? なんて思ったら!


「お嬢様。これからポートランド公爵様は、お客様と昼食をおとりになるのですが、ぜひご一緒にどうですか、とのこと。御者の方には別途こちらでお昼をご用意しますので、お嬢様は母屋へいらしていただけませんか?」


 これにはビックリ。思わずメイドに尋ねてしまう。


「あ、あの、ポートランド公爵様は、体の具合がよろしくないのでは? お食事、できるのですか……?」


 この問いにメイドは、苦笑するしかないようだ。


「そう……なんですよね。それについては当主よりお話があると思います。ただ言えることは、昼食をお嬢様とお楽しみになれるくらいの状態である、ということでしょうか」


「そうなのですね……。それは良かったです。お食事が喉を通らないようですと、心配になりますから。……昼食の席につかれるのは、ポートランド公爵様のご家族とデグラン様ですよね。部外者の私が同席してもいいのでしょうか?」


 するとメイドはニッコリ笑う。


「当主は『お客様の大切な同伴者を御者の待機小屋で待たせているなんて! 話は終わったのだから、急ぎお呼びしないと。申し訳ないことをした』とおっしゃり、奥様も『女性一人では心細いですから、そのお嬢様がいらしてくれると嬉しいわ』と言っておられました。ご兄弟も『水臭いじゃないか。そのお嬢さんのことも紹介してくれよ』と口々に言われていましたので、問題ないかと思いますよ」


 この話を聞いた私は、まさに目から鱗が落ちるだった。


 ポートランド公爵夫人は、優しそうだと思っていた。しかしポートランド公爵は変わった人、その兄弟はもしかしたら冷たい人かもしれない……と思ったのだけど。どうもそうではないのかもしれない。


 そう思う一方で。


 遺産を放棄すると言ったから、手の平を返したわけではないわよね?

 基本的に性善説を信じたいタイプではあるけれど……。

 とにかく会ったら、分かるはず。そうなれば返事は一択だ。


「分かりました。お手数おかけいたしますが、母屋への案内、お願いいたします!」

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