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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
 

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気に入ってくれるかしら?

 間もなく冬が始まる月曜日のこの日。

 私はデグランが父親に会いに行くのに同行することになった。


 少し世話を焼き過ぎたかしら?と思うものの。


 いつも朗らかに笑っているデグランの、孤独だった幼い頃を想像すると、どうしたって寄り添いたい気持ちになってしまう。それにポートランド公爵は、王族の双子の慣習を、貴族になってからも守るような、少し変わっている方だ。病に倒れているということで、弱っている可能性もあるが、何か変なことを言いだすかもしれない。


 話を聞く限り、母親はまともそうだが、兄弟だって突然現れたデグランに「遺産狙いだ」と冷たい態度をとるかもしれなかった。デグランは、宮廷料理人として働いていた時も、シェフの裏切りや隣国の執拗な引き抜きにウンザリし、旅に出ている。


 普段は飄々として、メンタル強そうに見えるが、そんなことはないと思う。


 もしポートランド公爵邸を訪問し、嫌な思いをしたのなら、すぐに話を聞いてあげたいと思ったわけだ。


 ということでデグランがもし傷つくことがあったとしても。元気が出るように、ビタミンカラーの代表格ブリリアントイエローのドレスを着ることにした。クリーム色のレースや刺繍があしらわれ、華やかだが、落ち着いている。


 少し肌寒くなっているので、アイボリーのロングケープコートを着て行くことにした。


 まずはデグランを馬車で迎えに行き、ポートランド公爵家に行くことにする。


「おはよう、ナタリーお嬢さん! わざわざ迎えに来てくれて、ありがとう」


 お店の前に貴族らしき男性の後ろ姿を見つけた時。今日が店休と知らず、お客さんが来てしまったのかと思った。お詫びしないといけないと思っていたが……。


 馬車が止まり、扉を開けてもらってビックリ。

 その男性はお客さんではない。

 デグランだった!


 いつも後ろで一本に結わいているアッシュブラウンの髪は、おろしている。そうするといわゆる襟足の長いウルフヘアになっていた。さらに前髪も左側だけ後ろに流すようにしている。髪型だけでも普段のデグランと違う。


 さらに着ている服もカジュアルではなく、セットアップだった。青みがかった月光のような月白色のシャツ、深みのあるマリンブルーのセットアップ、タイは濃紺。日焼けしたサーファーのような健康的な肌をしているから、海の色がよく似合う!


「デグラン様、見違えました。店休なのにカフェに来てしまったお客さんかと思いましたよ!」


「ははは。馬子にも衣裳だろう。宮殿で働いていた時でも、こんなきちんとした服を着ていなかったが……。何せ公爵家に行くからな」


 そこで私が馬車から降りようとすると、「そのままで。俺がすぐに乗るから」と言い、私を制した。デグランはあっという間に馬車へ乗り込み、ポートランド公爵邸を目指し、出発となる。


 対面に座ったデグランに、私は用意していた包みを渡す。


「なんだい、ナタリーお嬢さん」


「デグラン様には前にコスモスのピンズをもらったでしょう?」


 そのピンズは今もロングケープの襟元に飾られている。それをチラッと見たデグランは嬉しそうに目を細め、「そうだな」と頷く。


「いろいろよくしていただいているのに、これまで一度も御礼をできていません。よってこれは日頃の感謝を込め、プレゼントします!」


「えええ、そんな、気にしなくてもいいのに」


「そうはいきません。受け取ってください」


 贈り物は、差し出されたら余程の理由がなければ受け取るもの。デグランは確かに受け取ってくれた。


「ありがとう、ナタリーお嬢さん。帰ったらゆっく」「今、開けてください!」


 前のめりで被せるように声を出すと、デグランはビックリした顔をしたが「わ、分かった」とすぐに正方形の箱のリボンをほどき、そして中の箱を開ける。


 しばし固まるデグランを見て、私は思わず笑いそうになった。


「な、な、ナタリーお嬢さん、こ、こ、これはっ……!」


「これから向かうのは公爵邸ですから。それなりの身だしなみをしないといけません!」


「そ、それはそうだけど……」


 デグランへのプレゼント、それはタイに飾るピンとカフスボタンだ。どちらも装飾品としては小さなものだが、そもそも男性はアクセサリーをじゃらじゃらつけるわけではない。ステッキや帽子にこだわる人もいるが、デグランはまだ若いのだ。ちょっとした装飾品で、品の良さアピールでも十分だった。そして貴族の男性は、対面した相手のそう言った装飾品を、さりげなく見ているのだ。


「カフスの金具は真鍮で、白蝶貝(シロチョウガイ)を加工したものです。採光により、放たれる光沢が変わり、どんな色の服でも合います。一つ持っていれば、いろいろなシャツに合わせることができますよ。タイにつけるピンも、カフスとお揃いです。金具は真鍮、白蝶貝の表面には、金粉がふりかけられています。今日の濃紺のタイに、ピッタリです!」


 ピンもカフスも、宝石を使ったものが人気。だが、さすがにそれではデグランが、受け取りにくいと思った。白蝶貝であれば、街の名士と言われるような平民でも、身に着けている。それでも高価であるが、宝石を使ったものより、受け取りやすいはずだ。そう思い、選んだわけだけど……。


 気に入ってくれるかしら?

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