どうして今さらそれが……
国王陛下に呼ばれ、デグランは宮殿に行った。
そして国王陛下と謁見したという。
何を話したのかと思ったけれど……デグランの身元が判明した?
確かに彼は孤児院育ちだと聞いている。今さらだろうが、両親が誰であるか分かったということだろ。だが宮殿で国王陛下と謁見し、デグランの身元が判明しているのだ。つまり身元が判明したことを伝えたのは、国王陛下になるのでは? もしそうであるならば、なぜ国王陛下がデグランに伝えるの?
いろいろ疑問は生じているが、これはデグランが話してくれないと、何も分からない。
「え、デグランのお父さんとお母さんが誰か分かったの!?」
「そうなんだよ。聞いて驚けよ、ロゼッタ!」
デグランは両手を腰に、仁王立ちで告げる。
「国王陛下の弟君であるポートランド公爵、知っているか。公爵家は数が少ないから、さすがの俺でも知っていた。まさか自分の両親が公爵夫妻だなんてな。驚きだよ」
これにはロゼッタが「えええええっ」とスツールから立ち上がり、バートンはフリーズし、私は「えっ」と言って息を呑んだ。ポートランド公爵と言えば、アレン様の次の次に有名な公爵家。ポートランド公爵には、後継ぎとなる嫡男と歳が離れた弟さんがいたはずだ。
年齢的に当てはめるとデグランは次男、ということかしら?
そして孤児院には、どういう経緯で入れられることになったの?
この場合、孤児院に入れられる可能性として高いのは、ポートランド公爵の私生児だった場合だ。その存在は認められず、秘匿されることになる。
「どうして今さらそれが分かったんだ?」
バートンが尋ねると、デグランは「それはここだけの話だ。と言ってもきっと近いうちに公になると思うが……。誰かに話せば首が飛ぶ案件だ。大丈夫か?」と私達三人の顔を見る。
デグランは普段と変わらぬ調子でとんでもないことを口にしている。本当は外部に漏らしてはならないことを、話そうしていると分かった。
聞いて、いいのかしら?
そう思ったらバートンが、こんなことを言いだした。
「デグランに危ない橋を渡らせることはできないな。だからこれは僕の独り言」
そうバートンは言い置くと、こんなことを話しだした。
「人は死に直面すると、懺悔をしたくなるもの。過去の罪を突然告白したり、許しを請うたり。それは罪を許してもらい、天国に行きたいから、ということではないかな」
これを聞いたロゼッタと私は「ああ、なるほど」と呟くことになる。
まだ公になっていない。だがポートランド公爵は、体調が思わしくないのではないか。病の床に臥せ、そこでデグランを幼い頃に捨てたことを懺悔した。兄である国王陛下に対して。例えば国王陛下がお見舞いに訪れた時に。
「今さら自身が親であると名乗り出ることになった経緯は分かりました。でもそもそもなぜですか。なぜデグラン様が……」
「ナタリーお嬢さん、俺が孤児院にいたことは知っているんだな。あ、別に隠していないから、構わないよ。貴族の子どもが孤児院に引き取られたとなると、私生児だと思うだろう。でも違うんだ。俺はどうやらポートランド公爵の次期当主とは、双子だったらしいんだ」
「「「えええええ!」」」
これはバートン、ロゼッタ、私の声が、見事に揃った。
私生児ではなく、双子!?
双子なら孤児院に引き取ってもらう必要なんてないと思う。
「ポートランド公爵は、結婚を機に爵位を賜り、臣下へと下った。でも王族として育ち、幼い頃には現国王陛下と共に、王太子教育も受けていたらしい。王太子の身に何かあった時のスペアとして。その時に学んだことを、公爵になってからも覚えていた。そしてもう王族ではないのに、ついその慣習を実践してしまったらしい」
デグランはそう言って、恐るべき話を始めた。
「王族では双子は禁忌。出産で先に母親のお腹から出てきたというだけで、一人は兄と認められ、未来の王太子で次期国王。対して数分差で生まれた弟は、第二王子で王太子のスペア。双子の弟やその取り巻きが反乱を企てることが、過去に何度か起きていた。そこで王族で双子が誕生した場合。弟の存在は秘匿され、遠縁に預けられることが通例になったそうだ」
そこまで話し、デグランは「そんな深刻な顔をするな」と笑うが。
聞いたバートンもロゼッタも私も。
青ざめていた。
だって。
ポートランド公爵は既に王族を離れている。王族ならではの慣習は無視していいのに。それなのに無意味にその慣習に従い、デグランを手放したのだ。そんなこと、あっていいわけがない!
「まあ、俺の親父?はちょっと変わっていたんだろうな。もう王族ではないのに。双子の弟だった俺を、実は手放していたという話を公爵から聞いた国王陛下は、ビックリだった。だが他でもない実の弟の公爵の頼みだ。国王陛下は俺を呼び出し、事実を伝えたわけだ」
「……ポートランド公爵の言いたかったことは、『実は自分が君の父親だ。以上、終了』だけだったわけではないですよね?」
私が尋ねるとデグランは笑いながら「まあ、さすがに。それだけではないな」と答える。そしてこう続けた。














