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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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見事なメロン肩

「失礼。そこの君、どいてください。そちらのあなたも」


 困惑する私のところへ駆けつけてくれたのは……アレン様!


「皆さん、ここには何のために集まっているのですか? 事件も事故も、ここでは起きていません。今すぐ解散してください。周辺のお店の方も困っています。皆さんが解散しないと、王都警備隊を呼ぶことになってしまう」


 アレン様は目にも鮮やかなコバルトブルーの隊服を着ているので、すぐに王立騎士団の騎士であると分かった。さらに副団長専用のマントを着用しているので、とんでもない人物がここにいると、みんな理解した。私を取り囲んでいた人たちは、あっという間に散っていく。


 さらに少し離れた場所に、先程の近衛騎士と同じくらい巨体の騎士の姿も見える。


 アレン様とその騎士のおかげで、カフェを取り囲んでいる人達は、すっかり解散してくれた。ロゼッタの無事も確認でき、この店を取り囲む人々の謎も、ここでようやく解けたのだ。さらに店を開けることもできた。


 店を開けたものの。

 あれだけ沢山の人がいたのに。

 いざ店を開けると、先程の人だかりが嘘のようで、誰も来ない。


 これには何だか拍子抜けだったが、アレン様と助けてくれた騎士に御礼を言い、二人のお目当てであるパンケーキを早速作って出す。何気にアレン様は二日連続で来店してくれていた。


 一息ついた後、さてと考える。

 周辺の迷惑をかけてしまったお店の人に、お詫びの気持ちを伝えたい。


 そうだ!


 クッキーとパウンドケーキを配ることにした。店にはアレン様ともう一人の騎士しかいないが、いつお客さんが来るか分からない。そこでお詫びのスイーツは、ロゼッタに配ってもらうことにした。


「任せて、任せて! お酒飲める年齢ではないけど、この街に暮らして十九年。それなりに顔は利きますから!」


 ロゼッタがそう言ってカウンターから出ると、なぜかアレン様と一緒に来ていた騎士、その名はルグスも席から立ち上がった。


「パンケーキも食べ終わりましたので、念のためでレディの護衛をしてきます」


 青みを帯びた紫の短髪、日焼けした肌に、髪色と同じ色の一重の瞳。

 見事なメロン肩で、背中は冷蔵庫、ナイスバルクな立派な体躯をしている。もう見るからに屈強そうな騎士であり、彼が護衛なら、並みの悪人は戦わずして退散だろう。


 そんな本格的なマッチョマンだが、ロゼッタより何周りも大きそうな手を差し出し、エスコートを始める。しかも……。


「レディ、そのパウンドケーキやクッキーを入れた籠。それは自分が持ちます。あなたのような細い腕に、持たせるわけにいきません」


「え、そ、そんな……!」


 ロゼッタは自身を敬うルグスの態度に、たじたじになっている。頬を赤くしながらロゼッタは「で、では、行ってきます!」と手を振った。アレン様と私で手を振り、その後ろ姿を見送る。


 二人を見送ると、アレン様が立ち上がり、ティーアーンに向かおうとしていることに気づいた。


「あ、立っているついでです。紅茶、私がいれます!」


「そんな。これぐらい自分でやりますよ」


「いえいえ、お客様なのですから。ここは私にやらせてください」


 クスッと笑うとアレン様は「ではお言葉に甘えて、お願いします」と秀麗に微笑む。

 前世でもゲーム画面で何度も何度も見た、拝みたくなる笑顔。


「今日は初めてナタリー嬢が作った看板メニューのパンケーキをいただきましたが……手作りという感じで、素朴な味わいがありました。わたしとしてはこの味、とても気に入りましたよ」


 この言葉に私は「あ~~~」と叫びたくなっている。


 今日、アレン様が来てくれなかったら、あの訳の分からない群衆をどうしていいか分からなかった。その一方で、今の言葉で「よりにもよって、なぜデグランがいない日に来たのですか~!」と言いたくなっている。


 昨日、元宮廷料理人のデグランのパンケーキを食べ、今日、私のパンケーキを食べるなんて! プロと素人の味の差に、驚愕したはずだ。素朴な味わいとはよく言ってくれたと思う。とんでもない気づかいの賜物だ。


 建物を取り囲むように沢山の人がいた。

 その人波が引いた時、拍子抜けしていたが、いや、それが正解だった。


 今日はデグランがいないのだから、お客さんは少なくていいのだ。これ以上、私の及第点のようなパンケーキを食べさせるわけにはいかない……!


「ナタリー嬢はもしやご自身の作るパンケーキに、自信がないのですか?」


 紅茶を飲みながら、アレン様がズバリ指摘するので、泣きそうになってしまう。


「そ、そうですね。デグラン様に比べると、私は……。いえ、元宮廷料理人と自分を比べてはダメですよね。同じ舞台に立てるわけがないのですから」


「デグラン殿はやはり……そうでしたか。彼はあの伝説のスー・シェフのデグランなのですね」


 アレン様のこの言葉に、ドキッとしてしまう。


 デグランが元宮廷料理人であることは、簡単にバラしていいはずがなかった。うっかり、口にしてしまったが……。

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