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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
 

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私達だけの秘密よ

 王妃から「この場にいる私達だけの秘密よ?」と言われた。対する答えは当然――。


「「勿論です、王妃殿下!」」


 ロゼッタと声を揃え、返事をしてしまう。

 その様子を見て、王妃はクスクスと微笑み、話し始める。


「デグランはまさに“カリスマ”だったわ。宮廷料理人の見習いとして、宮殿に来たのは十六歳だったけど、その時は既に、多くの調理道具の扱いも、野菜の切り方、魚や肉の捌き方、全部マスターしていたわ」


 つまり基礎はできているため、後は晩餐会や舞踏会に合わせ、はたまた王侯貴族に向けた独特のルールを取得すればいい状態だったわけだ。ということは、デグランは子どもの頃から宮廷料理人になるべく、英才教育を受けていたのかしら?


 よくよく考えると、バートンとロゼッタと幼なじみであるとは聞いていたが、子ども時代の詳細は聞いたことがなかった。


「デグランは王都の孤児院育ちで、幼い頃から料理作りに熱心に取り組んでいたらしいの。孤児院を慈善活動の一環で訪れた侯爵が、日曜バザーで販売されていた肉料理を食べ、あまりの美味しさに仰天したのよ。いつもカツカツで運営していると聞いていたのに、こんな高級肉をどうしたんだ、って孤児院長を問い詰めたの。そうしたら使っている肉は安物。ただ、調理した子どもが凄腕だった。その子どもがデグランだったのよ」


 これには私も仰天だった。


 バートンやロゼッタと幼なじみということは、この辺りにデグランの両親は住んでいるのかと思っていたのだ。ただ、パブリック・ハウスを運営しているデグランは夜が遅い。そこで彼は店の二階で一人暮らしをしているのかと思っていた。でもどうやらそうではなかったようだ。


「まさか子どもが作ったなんてと侯爵は驚愕し、デグランを宮廷料理人の見習いにすべきだと動いて……そうしてデグランは宮殿へやってきたの」


 そこからのデグランは、まさに水を得た魚。どんどん学習し、知識と腕をさらに磨いていく。仲間であってもライバル、足の引っ張り合いになることも多いと言われるが……。元来の明るくサッパリしている性格もあり、そんな争いになることもなかった。


 すぐにトウルナンとして厨房内をサポートするようになり、あっという間にソーシエになってしまう。ソーシエは、料理の味を決めるソース作りを担当している。とても重要な役割だ。そこから半年もないうちに部門シェフとなり、スー・シェフまで昇りつめることになった。


「もうね、陛下も私もデグランの料理の虜だったのよ。シェフはいるのよ。でもね、デグランの地位が上がっていくと、明らかに料理の味と質が変わったの。そうなると、これはデグランのおかげね、って分かってしまう。もはやデグランがシェフになるのは、時間の問題だったのよ」


 そんな折、美食で知られる隣国の王族を招いての宮中晩餐会が催されることになった。シェフは最高級の食材を買い集め、レシピを考案した。フォアグラ、キャビア、トリュフは勿論、肉は鴨肉、羊肉、牛肉、鶏肉、はたまた鹿肉、雉肉、イノシシ肉までありとあらゆるものを揃える。魚もヒラメ、鯛、タラ、サーモン、トラウトなどの川魚も用意された。高級とされるスパイスも揃え、砂糖もたっぷり準備し、贅を尽くした料理を提供しようと考えたのだが。


 デグランはこんな提案をしたという。


「美食大国であるならば、口で既に存分に旨い物を味わっていると思います。奇をてらった味付けは、彼らを驚かせても、唸らせることは難しいでしょう。では定番の味わいでは飽きたと思わせてしまうかと。そうなると斬新さがある味を提供しつつ、口で楽しむ以外を提案するのです。つまり、旨いは当たり前。次のステップとして、目を楽しませる」


 この発想は当時のシェフにはなく、デグランから提案された時は、驚き、感動し、そして焦ることになる。こんなアイデアを出せるスー・シェフなら、すぐに自分を追い越すのではないかと。でもそれを表に出すような器量の狭いことはできない。


「名案だ、デグラン。その案でいこう」と応じた。


 こうしてデグランのプランを元にシェフが監修し、完成した料理は、もうそれ自体がアート。

 季節は丁度、今と同じ初夏。

 目にも涼やかな前菜は、ガラスの球体を潰したような器に盛られている。野菜はパールサイズにくり抜かれていた。それはオレンジ(ニンジン)、グリーン(豆)、イエロー(コーン)で、それらが器に散りばめられている。そこにまるで一粒チョコのように形作られたチーズの生ハム包み、チーズのスモークサーモン包み、チーズのオリーブのせが配置されていた。


 色鮮やかなビーツのスープには、ワンポイントで、エスプーマと淡いピンクや紫のエディブルフラワーを飾った。それはもう飲んでしまうのが惜しいぐらいの艶やかさ。


 そんな料理が続々と登場し、美食大国で知られる王族達は、その味と芸術作品のような見た目を絶賛した。食後の紅茶とクッキーが出された時、シェフが晩餐会の場に呼ばれた。隣国の王自らが、シェフに会いたいと言ったのだ。


 シェフが登場すると、拍手喝采。

 王妃も国王も惜しみない拍手を送った。そして隣国の王は、提供された料理についていろいろとシェフに尋ね、最後にこんな質問をした。

「この奇跡のメニューはすべてあなた一人が考案したのか?」と。

 シェフはどこかで焦燥感を募らせていた。デグランのその才能に。圧倒的なカリスマ性に。そこで、禁忌を犯す。


「ええ、これらのメニュー、レシピはすべて私が一人で考案したものです」


 そう答えたのだ。


 本来であれば、ここはせめて「私は勿論、多くの仲間と共に考えあげたメニューです」とでも言っておくべきだった。部下を無視した手柄の独り占め程、醜いものはない。


 その結果、厨房ではシェフに対する反感が高まり、デグランをシェフにと推す声が強まる。国王陛下もさすがにシェフのあの一言はヒドイと感じていた。ゆえに、現在のシェフを降格させることも考えたが……。


 そうする前にデグランが動いた。

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