プロローグ~常連さんと新たな仲間~
カフェには常連さんもついている。王立コンランドアカデミーの理工学部で講師をしているイエール伯爵。レネ・スザンヌ・サンフォード公爵令嬢。彼女の兄であり、騎士団の副団長アレン・ヒュー・サンフォード様(実は私の推し!)。第二王子の婚約者のニコール・マルティネス侯爵(なんと悪役令嬢)。セーラ・シスレー子爵令嬢(ヒロイン!)……。
なぜか乙女ゲームのメインキャストまで、カフェに続々来店し、もうビックリ!
ちなみにデグランつながりで、王妃まで来店してくれている!
モブなのに、がっつりメインキャストと絡んでしまった(汗)。特に悪役令嬢ニコールとヒロインであるセーラには、恋愛アドバイスをした結果。大きな変化も起きている。
ビッグニュースは、ニコールとジョシュの結婚式が、再来年の春と発表されたことだ。学園を卒業し、一年の準備期間を経て、遂に二人はゴールインする。イエール氏とセーラだって、来年の春に卒業をする。そうなれば、個人授業をする先生と生徒という関係も卒業だ。そこで二人は婚約するのでは?と私は思っている。
そして縁談話でもめていた両親とも、王妃の口添えもあり、和解している。父親は、支度金目当ての縁談話を、持ってくることもない。家族はみんな、私のカフェを応援してくれている。
さらに新たなる仲間もできた。
東方からの渡来人であり、僧侶の阿闍梨。黒髪に黒い瞳。眉はキリッとして、背筋がピンと伸び、とても姿勢がいい。さらに凛とした雰囲気を漂わせ、商売上手。彼は王都のはずれで精進料理のお店『心』を営んでいる。
阿闍梨と知り合うきっかけを作ってくれたのは、ゲームではヒロインの攻略対象だったアレン・ヒュー・サンフォード、王立騎士団の副団長様だ。そして私の推し!
碧みがかった銀髪に、碧眼の瞳。高めの鼻梁と血色のいい唇と頬。整った顔立ちで、顎から首にかけてのラインは実に秀麗。シュッと伸びた背筋に似合う、コバルトブルーの隊服で、カフェに足を運んでくれることが多い。隊服にあわせ、着用しているパールシルバーのマントは、副団長専用のものだ。
そのアレン様は、デグランの料理への探求心に対し、食への探求心を持っていた。自身が心から美味しい物を食べたいと考えるアレン様は、肉好きが多い貴族社会の中で、精進料理の素材を生かした味に開眼。私にも紹介してくれたのだ。
前世日本人の私は、懐かしい和の味に大感動! アレン様とは飯友になれたと思う。
そのアレン様が精進料理のお店『心』に私を連れて行ってくれて、阿闍梨と知り合うことができた。阿闍梨は私のカフェにも足を運び、デグランとも意気投合。自家製の味噌と醤油を『キャンディタフト』に提供してくれることになったのだ!
おかげで店の看板メニュー「マシュマロサンドパンケーキ黄金パウダーの蜂蜜かけ」は、トッピングが「蜂蜜」「ブラックシロップ(黒蜜)」「みたらし(醤油のおかげ!)」から選べるようになった。
さらに『キャンディタフト』と『心』で使う食器を卸してくれているのが、陶芸家のドロシー。ダークブラウンに琥珀色の瞳。おかっぱ頭のドロシーは、数少ない女性の陶芸家の卵だった。この道で食べて行くのは厳しく、皿洗いのアルバイトをしていた。だが、『キャンディタフト』と『心』に食器を卸すようになり、かつお店では食器を気に入ったお客様に販売もした結果。ドロシーの食器は大人気となり、入荷待ちになっている。
元々ドロシーは王都のはずれの村に育ち、陶芸家を目指したのも、貧しかった家では食器もまともなものがなかったからだ。
「年を取ったら、これは芸術品です、みたいな一点物も作りたいです。でも今は、毎日の生活で使ってもらえる器を作りたいんですよ。多くの人に手に取ってもらい、食卓が笑顔になる手助けができれば……」
売れっ子になっても、値段を釣り上げず、でも自身で作るには数が限られる。お手頃だけど、数は限定。おかげでドロシーの人気は一過的ではなく、長く続いていた。
そのドロシーは、ニコールとジョシュの婚約周年祝いパーティーで、バートンのパートナーになってから、たまに二人きりで食事をすることもあるとか。そしてニューイヤーを境にドロシーとバートンは急接近し、そして……。二人の関係に素敵な変化が訪れる。
一方、バートンの妹であるロゼッタも、アレン様の部下であるルグスと順調に関係を育んでいた。






















































