見応えがある!
「ナタリーお嬢さん、ロゼッタ、ティータイムまで観戦してきていいですよ」
バートンのお言葉に甘え、ロゼッタと二人、観覧席へと向かう。
ゲートにいる係員はバンダナを見て、会釈してくれる。
ロゼッタと私も会釈し、そして建物内から観覧席へ出ると……。
大歓声が起きている!
闘技場は前世のコロッセオにそっくり。
階段状に設けられた観覧席は満席。席から立ち上がり、興奮気味の応援者が多いということは……今いる場所は、一般向けに販売された席ね。上品に座っているのが貴族達の観覧席。
先に観覧しているデグランの姿を最初は探した。でも人が多くて見つからない。デグランなら知り合いが多いので、観覧席がなくても、彼らに呼ばれ、一緒に見ている可能性が高かった。一緒に観覧したい気持ちはあったが、仕方ない。視線を対戦が行われている眼下へと向ける。
見下ろした中央の対戦スペースには、兜に甲冑姿の出場者が戦っている様子が見えた。
兜や甲冑は、素人から見ると似たようなものにしか思えない。でも着用しているマントの色が赤と青になっているので、区別がつきやすかった。
剣や盾など自前なのだろうが、騎士が使う三角盾を装備しており、とても一般部門とは思えない。ただ、騎士であれば、その盾に紋章が描かれることも多い。だが一般部門の出場は平民が多かった。他国からの参加者には騎士もいるのかもしれないが。
その結果なのかしら? 彼らの持つ盾にはブドウが描かれていたり、ビールが描かれているものもある! ユニークでそれを見るのが楽しい。観覧席はないので立ち見だったが、それが気にならないくらい、見応えがあった。
「なに、あの人、めっちゃ強くないですか?」
「本当ね。動きが速いと思うわ」
甲冑や兜は、十二単ではないが、まとえば相当な重量があると思う。だが青のマントに馬と青薔薇が描かれた盾を持つ男性は、甲冑を着ているとは思えない程が動きが速かった。
「剣術という観点から見ると、まだまだ未熟ですが、あのスピードは大したものです。基礎体力があるのでしょうね。そして体の柔軟性。俊敏性。秘めているポテンシャルはかなりのものですよ。騎士養成学校に入り、鍛えれば、騎士になれるでしょうね」
声に振り返ると、そこには……。
ブロンドの長い髪を後ろで一本に結わき、アイリス色のセットアップを着たアレン様がいる!
ロゼッタの婚約指輪を盗んだ強盗犯を捕らえるため、囮作戦を決行した時。
アレン様は変装していた。その時と同じ変装をしている!
将来有望な人材を見つけるため、剣術大会に足を運んでいると聞いていたが、今日もちゃんと来ていたようだ。
「出店の方はどうですか?」
「おかげさまで、次のティータイムで完売になりそうです!」
「そうですか。それは良かったです。気になり、足を運ぼうと思ったのですが、この姿が珍しいのか、囲まれてしまい……」
つまりは令嬢達に囲まれ、身動きがとれなかったのね。
でもそれはそうだろう。
アレン様の持つ高貴なオーラは隠しきれない。
見るからに高位貴族で貴公子。だが舞踏会や晩餐会などのサロンで、見かけたことはない。
何者なのか。
そう思った令嬢が、興味津々でアレン様を取り囲んでも……おかしくない!
「アレン様はこの辺りの席で、観覧しているのですか?」
「いえ、貴族向けの観覧席にいたのですが、ナタリー嬢の姿を見つけ、移動しました」
一般向けの観覧席は人も多いだろうに……。あ、立ち見していたから目立ったのかしら? それに騎士をしていれば敵味方の区別を瞬時にする必要があるだろうし、きっと目がいいのだろう。
「わーーー、いけ! いった! すごい! 勝った!」
ロゼッタは、動きの速い、青薔薇の盾の男性の勝利に、大喜びだった。
その後も、この俊敏な青薔薇の盾の男性が、勝ちを重ねて行く。
この快進撃に、一般観覧席、特に男性たちは大盛り上がり。
熱狂的に応援する彼らの話から、青薔薇の盾の男性は、初出場であることが分かった。
だが。
「うわ~。次の対戦相手、強そう……というか、怖い!」
ロゼッタの言葉に同意するしかない。
何しろ青薔薇の盾の男性に対し、登場した赤のマントの対戦相手は、まさに重量級。
ルグスを思わせるマッチョマン。
「さすがに勝てないですかね」
「剣での戦いは、剣術だけでは決まりません。それをあの青薔薇の盾の男性が理解しているのか。お手並み拝見ですね」
アレン様のこの言い方だと、勝てる可能性もあるのかしら……?
そう思いながら、始まった対戦を見守る。
重量級のある相手は、機敏に動ける青薔薇の盾の男性に対し、動きが緩慢に思えた。でも振り下ろされる一撃は……。
青薔薇の盾の男性が、距離をとった。
「盾が壊れると思った……」
ロゼッタの呟きに同意だった。
動きの速い青薔薇の盾の男性は、重量級の相手に、素早く攻撃はできる。だがしっかりガードされ、まず攻撃が入りにくい。さらにどっしりとしたその体では、攻撃が通っても、ダメージが伝わりにくいようだ。そして間合いが詰まっている時に、思いっきり攻撃を食らうと……。盾で防御しても、その重い一撃を受けると、すぐの反撃ができないようだった。
ここまで、その重い打撃で相手を沈めて来たのだろう、このマッチョマンは。
青薔薇の盾の男性の快進撃は、ここで終了と思われたが……。
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【お知らせ】連載再開☆彡
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生!
でも安心してください。
軌道修正してハピエンにいたします!』
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お待たせいたしました!
併読いただいていた読者様、ぜひお楽しみくださいませ。
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