大盛況なカフェの日常
「あ、ナタリーさん、いいですよ。ティーフリーの説明は私がしておきます。そのまま、恋愛相談、続けてください」
「すみません、助かります!」
常連さんの言葉に助けられ、私は令嬢の恋愛相談を続ける。
平日なのに。
恋愛相談カフェ『キャンディタフト』はオープンと同時に満員御礼!
忙しい理由。
それは。
ついにバカンスシーズンに突入したから!
つまり毎日が週末のような状態。
よって今日は水曜日で平日なのに、週末並みに混んでいる。
さらに。
今日はロゼッタもバートンもいないのだ!
というのもロゼッタはルグスとの婚約が決まり、今日はまさに両家の顔を合わせが行われている。水曜日は画材屋の店休日であり、そしてルグスも休みをとることができた。こうしてルグスの屋敷で会食が行われているわけだ。
ルグスは男爵家なので、私の時と同じように、婚約するとなるとやるべき儀式(!?)が沢山ある。
今日は、ルグスの実家で会食。だが後日、阿闍梨の豆腐料理専門店『粋』で、ロゼッタの両親主導で会食がある。さらに来月は婚約式もあるのだ。
ロゼッタは街の人間であり、貴族ではない。でも結婚相手が貴族となると、それは大変!
私もできる限りのアドバイスをして、ロゼッタを送り出したが……。
ルグスの両親は優しい。ロゼッタが貴族ではないことも分かっている。ゆえに婚約に伴い発生する持参金なども配慮してくれるはずだ。
さらに、さらに。
季節のフルーツを包んだ「フルーツ大福」も大盛況。
みんなテイクアウトで購入するので、気軽にカフェへ顔を出してくれる。
一日百個は軽く売れてしまう。
アレン様の方で、阿闍梨のお店『粋』の近くに大福専門のまさに一坪ショップをオープンしたが、こちらも連日大行列。バカンスシーズンに入り、もうこの行列はどこまで続くのか、という状態だった。
というわけで、今日はデグランと二人で回すから、とても慌ただしい。
「はい。通常サイズのパンケーキ、トッピングは、ブラックシロップ(黒蜜)。お待たせいたしました!」
この忙しさの中で、冷静にパンケーキを焼き、大福販売に対応してくれているのが、デグラン!
さすが宮廷晩餐会で大人数の料理の提供を手掛けていただけある。
動きに無駄がなく、かつパブリック・ハウスで培った気配りで、来店客の表情を読み取るのも完璧。
「お客様はフルーツ大福をお求めですね? おいくつ用意します?」
もうこんな感じで一目見ただけで、お客様のニーズを掴める!
デグランが優秀で助かるが、それ以上に私を助けてくれたのは、常連さん!
私が恋愛相談に集中できるよう、新規来店客に、説明してくれるのだ! ティーフリーの説明は勿論、豆腐を使ったパンケーキであることまでちゃんと紹介してくれるのだから……。まさに『キャンディタフト』に通ってくださっているだけある。おかげでなんとか、この日のカフェの営業を終えることができた! 常連さんは神様です!
「ナタリーお嬢さん、お疲れ!」
頑張ったご褒美で、デグランがシャンパンを開けてくれた。おかげでパブリック・ハウス『ザ シークレット』オープン前のまかないは、ゴージャスな雰囲気だ。でもシャンパン登場で正解だと思う。
なにせ今日のまかないは、冷製ショートパスタのキャビア添え。
熱病から回復したデグランへのお祝いで国王陛下が届けてくれたキャビアの瓶詰。このキャビアを使い、オリーブオイルで和え、そして全体にレモンを絞ったのが、この冷製ショートパスタなのだけど……。
美味しい!
シンプルな分、キャビアの味を存分に味わえる。さらにレモンのさっぱりした感じが、今の季節に丁度いい。そして合間に飲むシャンパンにもよく合う!
「ナタリーお嬢さん、すごくいい顔しているな」
「それを言うなら、デグラン様も、とてもいい顔をしていますよ」
「それは当然だろう? 大好きなナタリーお嬢さんが、嬉しそうな顔をしているんだ。それを見たら俺は当然幸せになる」
デグランの言葉にさらに笑顔になってしまう。
いつも思うのだ。彼の言葉は魔法だと。
だってこんなにも私を楽しい気持ちにできるなんて。
しかも言葉だけで。
ただまかないをデグランと二人で食べる。
それなのにとんでもなく気持ちが満たされていた。
そこでコンコンと扉を叩く音がする。
振り返ると、そこに見えたのは、ロゼッタとルグス!
「ナタリーお嬢様、ただいま~」
「お帰り、ロゼッタ。会食はうまく行った?」
「はい! それでお土産をもらったんです!」
つまりロゼッタはお裾分けを持ってきてくれた。
わざわざ持ってきてくれた理由は、受け取ってすぐに分かった。
「これは……東方からの舶来品ね。すごいわ。落雁だわ」
「さすが、ナタリーお嬢様。そうなんです。副団長の商会で取り扱いが始まったそうで、砂糖と穀物の粉でできているとか。硬いそうですが、甘くて、癖になるって!」
「ほおー。こんなの初めて見たな。チョコレートのようにも見える」
デグランと私は、パスタを丁度食べ終えていたので、早速落雁をいただく。
「確かに硬い。でも一度崩れると、じわじわと溶けて行くというか……不思議だな。それに形も面白い。なんというか、紋章みたいに思える」
初めて食べる落雁に、デグランは興味津々。
一方の私も、前世でも滅多に食べなかった落雁を、転生したこの世界で食べられることに感動だった。
この後、『ザ シークレット』はいつも通りオープン。
私はロゼッタとルグスと共に家路に着いた。
お読みいただき、ありがとうございます!
【お知らせ】
『悪役令嬢です。ヒロインがチート過ぎて嫌がらせができません!』の第二部がスタートしました!
https://ncode.syosetu.com/n4280ji/
併読されていた読者様、お待たせいたしました。
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ぜひご覧くださいませ~☆彡





















































