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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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せ、正論過ぎて何も言い返せないっ!

「このカフェの手前で、マルティネス侯爵令嬢と顔を合わせることになりました。彼女はわたしがこのカフェに入ろうとしていることに気づくと、立ち止まりました。わたしとしてはレディファーストにしたかったのですが、譲られていると分かりましたから、先に店内に入ることになりましたが……」


 そこでアレン様は紅茶を口に運び、しみじみと呟く。


「あの時の彼女は思いつめた表情をしていて、何があったのかと気がかりでなりませんでした。ですが今の彼女はどうでしょう。まるで肩の荷が下りたかのように、清々しい表情に変わっていました。こんな風に誰かの顔つきを変えられるカフェなんて、そうはありません。わたしはとても気に入りましたよ、こちらのカフェが」


 そこでアレン様は綺麗に食べ終えたパンケーキのお皿も示し「こちらのパンケーキも勿論、気に入りました。看板メニューなだけありますね」とデグランと私を順番に見た。


 これには胸に喜びがじわじわと溢れてくる。


 なんというかさっきまでは、イケメン! 推しメン!――と、実に浮ついた気持ちでアレン様を見ていた。でも今は、リアルに存在する一人の人間として、アレン様を見ることができている。なぜって。彼が恋愛とは無関係に、このカフェのことやパンケーキを褒めてくれたからだ。


 乙女ゲームに登場するヒロインの攻略対象である男性キャラクターは、当然だが口にするのは恋の囁き、愛の言葉が多かった。それを期待するのが、乙女ゲームであり、それで正解。


 でもリアルなアレン様は人として素晴らしいと感動できた。


「そうだ。これから会う騎士達にも差し入れしたいので、パウンドケーキやクッキーをいくつか包んでもらってもいいでしょうか?」


「それは勿論です!」


 すぐにロゼッタが紙袋を用意してくれて、私はパウンドケーキとクッキーを次々と入れて行く。


「ではわたしもマルティネス侯爵令嬢の真似をさせていただきます」


 そういうとアレン様は、私から紙袋を受け取りながら、なんと金貨二枚を差し出した。


「こ、こんなにですか!?」


「このパウンドケーキとクッキーもいただきましたからね。騎士というのは、見た目と違い、甘党が多い。体を動かすため、甘い物を欲するのでしょうか。……おそらく、奴らがここに来たら、まさに食べ尽くすかもしれないです。これでは足りないかな」


 そう言ったアレン様は結局、金貨五枚を置いて店を出て行った。


「すごい気前のいいお客さんでしたね。あ、王立騎士団の副団長でしたっけ。めちゃくちゃかっこいいですね! 騎士団と言えば、パレードでも見かけますけど、たいがい、鎧兜に甲冑だから……。まさか兜の下があんなにハンサムだと思いませんでしたよ~」


 ロゼッタの瞳が恋する乙女のようにハートになり、輝いていた。

 これは前世の乙女ゲーのファンイベントでも、よく見かける顔つきだった。

 ならば……。


「ロゼッタ、アレン様は素敵よね。でもアレン様は、私達からすると手の届かない雲の上の方よ。何せ王立騎士団の副団長。そしてこの国で五つしかない公爵家の筆頭。さらにそこの嫡男なのよ。こういった次元の違う方はね、愛でて楽しむの」


「愛でて楽しむ……?」


「そう。アレン様のことを密かに応援するの。公にやるとこの世界ではきっと変人扱いされちゃうから。ニュースペーパーや噂話でアレン様の活躍を知ったら、『ああ、さすが私の推しだわ』って自己満足するの。それだけでも活力になって、日々元気に生きて行けるわよ」


 ロゼッタは「分かりました、ナタリーお嬢様!」と指を鳴らす。


「舞台俳優でお気に入りの方を応援する感覚ですね!」


「そう、そうよ。そうね。この世界ではそれがあったわ。それはね、素敵な騎士様にも当てはまるのよ。“推し”として応援するの」


 実際、貴族の令嬢は、宮殿に足を運ぶと、騎士達の修練場をのぞく。


 そこで汗ばむ季節であれば、上半身裸で訓練に励む騎士や、見習い騎士を眺め、ため息をもらすのだ。そしてもし舞踏会や晩餐会で見かけたら……と、淡い期待をする。


 恐らく、そこで見かけた騎士のことをみんな、密やかに心の中で、推していると思うのだ。だがしかし。この世界に“推し活”の概念なんてないから……。


「なるほど! アレン様なら、このカフェにまた来てくださりそうですし、それに彼の部下の騎士様も来てくれそうですよね。そうなったら沢山の騎士様の“推し活”ができますね!」


「そうよ! まさにパラダイス!」


 そこでぽすっと私とロゼッタの頭にデグランが手をのせた。


「まったく何をいいだすのかと思えば。ロゼッタ、浮かれている場合じゃないだろう。バートンが『いつまで経っても浮いた話がない、このままでは婚期を逃す』と心配していたぞ。騎士と町娘が結婚なんて、ありえないんだから、現実を見ろ、現実を」


「もー、デグラン、うるさい~!」


 ロゼッタは頬を膨らませ、なんだか可愛らしい。


「それにナタリーお嬢さんも!」


 ギクッとする私にデグランは……。


「公私混同はしない方がいいぞ。お客さんはあくまでお客さんだ」


 せ、正論過ぎて何も言い返せないっ!


「そ、そうですね。気を付けます……」


 ロゼッタと私の頭から手をおろすと、デグランはため息をついて告げる。


「そろそろ閉店の片づけをするぞ」


 これにはロゼッタと二人、「「はーい」」と返事をする。

 返事をしつつ、ただ愛でるだけで、その先のことは考えていないのに、と、今さら反論を思いついていた。


 だってモブの私にとって、推しであるアレン様は、前世同様、雲の上の存在。

 それが奇跡的にこのカフェに現れ、会話までして、褒められたのだ。

 少しくらい浮かれてもいいんじゃないですかー!なんて珍しく口をへの字にしていると。


 デグランが何とも言えない表情で私を見ていたが、フイッと横を向いてしまう。


 さっきまで正論を言っていたデグランは普通だったのに。

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