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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
 

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腰が抜けそうになる。

 オータムフェスティバルの翌日。


 私はバニラ色のワンピースのプラム色の襟に、デグランからもらった白のコスモスのピンズを飾った。そしてお店へ行くと。


「やあ、ナタリーお嬢さん……! 早速、そのピンズ、つけてくれたんだ」


 デグランはすぐに白のコスモスのピンズに気が付き、嬉しそうにアッシュブランの前髪をかきあげた。少し照れたように喜ぶデグランを見ると、ちゃんとこのピンズをつけてきてよかったと思える。


 その後は、昨日のオータムフェスティバルの話をしながら、開店の準備を整えた。やはり飲食店をやっているので、串焼きや揚げパンについて盛り上がる。


 そんなこんなでいつも通りでお店はオープン。


 ティータイムの時間までは、貴族のマダム達が足を運んでくれた。街の住人のみんなは、昨日のオータムフェスティバルでお疲れなのだろう。


 マダム達は看板メニューのパンケーキを楽しみ、ブラックシロップと黄金ゴールドパウダーのハーモニーを絶賛してくれた。ティーフリーのサービスに驚き、でも自身で好きなだけ数種類の紅茶を楽しめることに、喜んでくれている。


 そのマダム達が店を出たのと入れ違いで、ロゼッタが手伝いに来てくれた。


「あ、あれ~、なんでナタリーお嬢様が、白のコスモスのピンズをつけているの!?」


 ロゼッタはかなり驚いた様子で私に尋ねる。


 そこで私はデグランが自身のコレクションを毎日眺めることができるようにするため、私にくれた……というか預けたのだと伝えた。デグランとしてはプレゼントしたつもりかもしれないが、後から「やはりあのピンズは手元に欲しい」と彼が思ったら、いつでも返すつもりでいたのだ。よって、預かっているという言い方でも……問題ないだろう。


 チラッとデグランを見ると、彼はマダム達が使ったティーカップやお皿を片付けてくれる。


「ふうーん……。白のコスモスのピンズは特別だって、あの年のフォークダンスでは、金物屋のおじさんも、煙管屋のおじいちゃんも……みんな、ピンズ、くれなかったんだよ。かみさんにあげるとか、孫にあげるって言って。それを……」


 なんだかロゼッタが複雑な表情になった時。


 カランコロンと音がする。


 視線をロゼッタから店の入口へ向けた私は腰が抜けそうになる。


 目に飛び込んできたのは、碧みがかった銀髪アイスシルバーに、碧眼の瞳。高めの鼻梁と血色のいい唇と頬。整った顔立ちで、顎から首にかけてのラインは実に秀麗。シュッと伸びた背筋に似合うコバルトブルーの隊服。パールシルバーのマントは副団長専用のものだ。


 そう、私の推しのアレン・ヒュー・サンフォード王立騎士団副団長がそこにいた。


 さらに!


 ホワイトブロンドの見事なウェーブを描く髪、アメジストのような輝く瞳。小顔でほっそりとした首。頬はうっすらローズ色にそまり、可愛らしい口をしている。


 女子にしては背が高く、そのメリハリの効いたボディを包むのは、私の母校、王立サンフラワー学園の制服だ。ピンクに紺色のチェック柄のワンピース、紺色のボレロという制服を完璧に着こなしている。


 彼女はかの悪役令嬢、ニコール・マルティネス!


 ど、どうして……!

 なぜモブの私のカフェにメインキャラである悪役令嬢と、ヒロインの攻略対象であるアレン・ヒュー・サンフォードがいるの!? し、しかも、二人同時に!?


「いらっしゃいませ! えーと、二名様ですか?」


 茫然とする私の代わりにロゼッタが、アレン様に声をかけた。


「いえ、別々です。どうぞこちらのご令嬢から、先に案内をしてください」


 はあああああっ、アレン様の生声を聞いてしまったわ。

 涎がこぼれそうになり、慌てて、口元をナプキンで押さえる。


「ではお嬢さん、どうぞこちらへ」


 ロゼッタは悪役令嬢ニコールを、ティーアーンに近い角の席に案内する。私は右手と右足を同時に出しながら、ぎくしゃくとカウンターから出た。アレン様をイエール氏の定位置の隣の席へとなんとか案内する。


 イエール氏は昨日、「学生の試験の採点があってね。明日はカフェに行けないかもしれない。何せ答案用紙をカフェで広げ、採点するわけにいかないから」と言っていたのだ。だが「行けない」とは言っていないので、特に他のお客さんから要望がなければ、イエール氏の定位置の席は空けておくようにしていた。


「ありがとう」


 席へ案内したアレン様にこう声をかけられた瞬間。


 推しから声をかけられた! 我が生涯に一片の悔い無し!と昇天しそうになっていた。


 でも、「ナタリーお嬢さん!」とデグランに声をかけられ、ハッと我に返り、グラスの水を受け取り、メニューをアレン様の前に置く。


「昨日、妹がこちらのカフェで購入したというパウンドケーキとクッキーを食べさせてくれてね。とても美味しかったです。妹が言うには、『絶品のパンケーキがありますから、それも召し上がってみてください』と言われて……。今日はこれから夜間勤務ですが、その前に、そのパンケーキを食べてみたいと思い、お邪魔しました」


 これにはサンフォード公爵令嬢に、心から「ありがとうございます!」と思ってしまう。


 まさかのヒロインの攻略対象の来店だったが、理由わけがあったということだ。確かに前世記憶でも、アレン様は甘い物が好きなスイーツ男子ではあった。でもゲーム中に甘い物に夢中になっているシーンは、なかった気がする。でもわざわざ街のカフェまで足を運んでいるのだ。間違いなく、甘い物が好きなのだろう!


 顔がニマニマしそうになるのを懸命にこらえて尋ねる。


「妹君のおススメということで看板メニューのパンケーキとアッサムティーをお持ちしますね。当店ではティーフリーのサービスがございまして……」


 そこでロゼッタに肩をトントンと叩かれた。

 はてさて、何かしら?とそちらを見ると。


「あちらのご令嬢、既に注文も終わっているので、対応お願いします! 恋愛相談があるそうです」


 そうか、それならば仕方ない。

 断腸の思いでアレン様に、ティーフリーの説明はロゼッタがすると伝え、その場を離れた。カウンターの中に戻りながら、両手で頬を何度かパチパチ叩き、気合を入れる。アレン様がいることで、完全に前世の推しを愛でたいモードになりそうになるが、恋愛相談をしたい令嬢がいるのだ。恋愛相談を……。


 え、悪役令嬢が私に恋愛相談をするの!?


 シュールで仕方ないが、これは現実だ。

 既にデグランが出した紅茶を飲む悪役令嬢ニコールに声をかける。


「恋愛相談の件、お待たせいたしました。どうぞ、気兼ねなくお話しください」


 なんとなく予想はついていた。

 だが紅茶を飲みながら、ニコールが相談した内容は……。


 自身の婚約者であるジョシュが、ヒロインであるセーラと急接近しており、心中穏やかではない。つい、嫌がらせをセーラに対してしてしまうが、どうしたらいいのか、という相談だった。もちろん、個人名をニコールは口に出していない。だが言うまでもなく分かってしまう。


 なるほどね。


 王立サンフラワー学園に私も通っていたが、私とメインキャラと攻略対象との在籍期間は異なっていた。彼らが入学して一年後に、私は卒業してしまっている。ヒロインが誰を攻略することにしたのか。それは今の会話で確信することになった。


 そうか。

 ヒロインは王道の第二王子攻略ルートを選んだのね。


 そこで私は乙女ゲームの進行を思い出す。


 悪役令嬢が婚約破棄&断罪される王立サンフラワー学園の卒業記念舞踏会まで約四か月。ということは、既にジョシュとセーラの仲は、しっかり深まっている段階だ。


 悪役令嬢ニコールの婚約者である、この国の第二王子のジョシュは、気が強く芯のあるニコールよりも、女の子らしさ全開のセーラのような少女の方がタイプだった……ということで二人は仲が良くなっていた。


 セーラもまた、金髪にエメラルドのような瞳の“ザ・王子様”なジョシュに心惹かれ、婚約者がいるのに……と分かっていても、気持ちが止められない。そして次第に一緒にいる時間が増えたジョシュとセーラの姿を見て、ニコールは不信感を深め、セーラへ嫌がらせをしてしまうのだ。


 ここでニコールにかける言葉は、これ一択だろう。


 丁度、出来立ての「マシュマロサンドパンケーキ黄金パウダーの蜂蜜かけ」が登場した。私はニコールにそれを食べながら聞いて欲しいと、アドバイスを始めた。

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