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転生したらモブだった!異世界で恋愛相談カフェを始めました  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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それ、賛成ー!

 イエール氏は私に謎解きのようにこんなことを言った。


 ――「しかし不思議だな。私などより他者への関心がナタリー嬢は強いはずなのに。デグランくんに対して知らんぷりとは」


 デグランに対して知らんぷり……?

 私に対して、デグランが何か合図を送っているのかしら?


 チラッとデグランを見る。


 今日はバートンに加え、ロゼッタも来て、パブリック・ハウス「ザ シークレット」のオープン前のまかない料理に、舌鼓を打っていた。白身魚のフリットは揚げたてで、岩塩とレモンを絞っていただくのだけど、これが絶品! 白ワインと一緒にいただいているが、無限に食べられそうだった。


 つい、まかないの美味しさに気持ちが向かってしまう。

 そうではなくて、デグランの合図。


 しばらく観察したが、デグランはいつも通りだった。イエール氏が何を示唆しているのかは……分からなかった。


 そんなことを思っているうちにフリットを食べ終え、白ワイン一杯、飲み終えていた。


「よーし。俺はこれから頑張るぞ。あ、そうだ!」


 そう言ったデグランが、ポスターをごそごそとカウンターの下から取り出した。

 そのポスターを広げ、私達に見せながら、デグランが告げる。


「もうすぐ、街でオータムフェスティバルがある」


 デグランのこの言葉に、バートンとロゼッタは嬉しそうに瞳を輝かせる。一方の私は「オータムフェスティバル?」だった。


「まあ、これはさ、この街で行われる、街の住人のための、お祭りだ。でも街のお祭りの割に、規模は大きい。ここ数年は、貴族だって顔を出すんだぜ」


 デグランの説明に「なるほど!」だった。

 小規模、中規模の祭りは、よく街ごとに行われている。

 それは貴族達の、舞踏会の代わりのようなもの。

 よって貴族は舞踏会へ、街の住人はフェスティバルを楽しむ――そんな風に住み分けができていた。おかげで「貴族ばかり娯楽があってズルい」とはならずに済んでいる。ちなみにフェスティバル開催にあわせ、国からの協賛金もでるという。


「俺はさ、基本的に毎年フェスティバルに出店はせず、他の店で飲み食いをしているんだけど……。今年は店を出してもいいかな、と思う。店を出すと言っても、俺の方ではなく、カフェ『キャンディタフト』の方な。日中、ナタリーお嬢さんのパウンドケーキやクッキーを販売して、夜はさ、みんなでフェスティバルを見て回ればいいかなと思ったわけだ」


「それ、賛成ー! フェスティバルって、みんなお祭り気分だから、財布の紐も緩んでいるの。だからもう、なんでも買ってくれるんだから!」


 ロゼッタによると、画材屋なのにフェスティバルの日、店を開けているという。何を販売しているのかというと、例えば「スケッチセット」。これはスケッチブック一冊と、水彩絵の具をセットにして、紙袋にいれたもの。だがこれが嘘のように売れまくるのだと言う。


 というわけで、一週間後に行われるオータムフェスティバルへの参加は決定。

 ポスターも飾ることになる。

 その日は屋敷でパウンドケーキやクッキーを作るが、店でも作ることにした。

 甘い匂いを漂わせれば、絶対にお客さんが集まって来るというバートンの意見を採用した形だ。


「じゃあ、今日からオータムフェスティバルに出店するって、ガンガン宣伝しておくから」


 デグランがそう言えば、バートンとロゼッタも、応援すると言ってくれる。


「画材屋で飾っているポスターに、恋愛相談カフェ『キャンディタフト』が出店していると、メモを貼っておきます」


 そう宣言し、バートンが微笑んだ。


 結局、オータムフェスティバルの話題が出ることで、イエール氏の謎かけのような言葉は……すっかり頭から抜けてしまった。


 ◇


 オータムフェスティバルでは、ルールがある。

 それは出店者が着る衣装。

 男性は、青のギンガムチェックのシャツに、革製のズボンにブーツ。

 女性は胸元が大きく開いた白の長袖のブラウスに、革紐で編み上げされたビスチェ。ふわっと広がった赤のギンガムチェックスカートに、白のエプロン、そしてショートブーツだ。肩からショールをまとってもいい。


 お店に着くと、既にその装いのデグランが、準備を進めてくれていた。


「おはようございます、デグラン様!」

「おはよう、ナタリーお嬢さん。……似合っているな、その衣装」

「! ありがとうございます。デグラン様もよく似合っていますよ」


 そう、デグランはまるで……前世で行ったことのある、銀座のアパレルショップの外国人店員さんみたいだ。アメリカから日本に初出店したというその直営店は、店内が香水の匂いに満ち、モデルさんのような外国人スタッフが沢山いた。そして彼らはこんなギンガムチェック柄のシャツを着ていたことを、思い出していたのだ。


「よし。じゃあ、売って、作って、売りまくるぞー!」


 デグランの不思議な掛け声と共に、フェスティバル参戦が始まる。


 十一時からフェスティバルスタートなので、そこまでの間にパウンドケーキやクッキーを作る。カラフルなペーパーを敷いた籠に、出来立てのパウンドケーキやクッキーを並べ、冷ましながら陳列。今回、イチジクのパウンドケーキ、ドライフルーツミックスのパウンドケーキ、マロンのパウンドケーキを用意した。クッキーはさくさくのアーモンドクッキー、たっぷりバターのプレーンクッキー、黄金ゴールデンパウダー入りクッキー。


 どんどん焼き上げ、陳列していると、時計塔の鐘が鳴る。


 普段は十二時に鳴る鐘だが、フェスティバルの開始に合わせ、鐘が鳴らされていた。


 でも鐘が鳴る前から、既に沢山の人々が集まって来ている。


 するとお店にもデグランのお店の常連さんは勿論、カフェに来店してくれたお客さんも次々と足を運んでくれた。


 旦那さんの歯軋りを相談した婦人は「お医者さんに診てもらって、かなり改善されたのよ。アドバイスをもらうまで、医者に診せるなんて考えてもいなかったから、本当に助かったわ! 今、忙しくて行けないけど、また『キャンディタフト』にも足を運ばせてもらうわ」と言ってもらえた。


 さらにあの懐中時計オタクの令息は、可愛らしい令嬢を伴い、パウンドケーキやクッキーをたっぷり購入してくれた。「君のアドバイスのおかげで、ぼくは自分の趣味を、彼女に話すことができたよ。彼女はぼくの趣味を理解してくれた。そして懐中時計を作る時間を、ちゃんととることもできている」と耳打ちしてくれたのだ。


 これにはもう、嬉しくなってしまう。


 あのフランス人形のような令嬢も、婚約者と共に来店し、パウンドケーキやクッキー全種類を購入してくれた。しかもその婚約者の着ている上衣のポケットには、素敵な刺繍があしらわれている。聞くとフランス人形のような令嬢が、刺繍したものだという。


 つまり私のアドバイスに従い、自身の趣味の刺繍に没頭し、婚約者にエールを送った。その結果、婚約者は逆に彼女を気遣うようになり、今日も休日出勤だったがそれを調整し、一緒にこのフェスティバルに来たのだという。


 二人の仲がさらに深まったことは、実に喜ばしい。


 喜ばしいを通り過ぎ、デグランと共に驚いたのは、タム男爵の令息だ!


 彼は癖毛で髪が多いことを悩んでいた。そしてヘアオイルをべったりつけ過ぎていたが……。


 今は髪を短くし、癖毛を生かしたゆるふわヘアになっていた。チャコールグレーのセットアップを着ていたが、肩にフケはない! 清潔感もあり、聞くと来週、縁談の相手と会う予定があるという。


「絶対にうまくいきますよ!」と私が言うと「ありがとうございます。無事、婚約者ができたら、彼女を連れ、カフェへ行きます」とタム男爵の令息は言ってくれた。


「ナタリー嬢、デグランくん。パウンドケーキとクッキーをもっと焼いてもらえるか? この通り、今日は私の教え子たちを連れて来た。食べ盛りですから、頼んだよ」


 そう言って二十二人もの教え子を連れてきてくれたのは、イエール氏!


 おかげで用意していた商品が、ほとんど売り切れ。


 勿論、同時進行で作り続けている。


 その後も客足は絶えることはない。

 デグランも私も、まさに彼が言っていた「売って、作って、売りまくるぞー!」になっていた。


 こうして夕方まで、あっという間に時間が過ぎた。


「少しだけ、作り過ぎちゃいましたね。でもこれはバートン兄妹に渡そうと思います」


 私がそうデグランに声をかけた時。


「もしよろしければパウンドケーキとクッキー、一つずついただくことはできるかしら?」


 おっとりとした令嬢の声が聞こえた。

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