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第8話 交換成功

〈立花匠真〉


 連絡先が……聞けない! どうしよう?! 道中はなんか良い感じで話し掛けれたけど、教室に入ったら予想以上に静か過ぎて、口が動かないんだけど!


 結城さんも話しづらそう……。何がともあれ……。


「食べましょうか」


 取り敢えず、俺は笑ってそう言ってみる。間違いなく、笑顔がぎこちないことは分かるぞ、俺でも。


「……っはい!」


 救いを得たような顔で結城さんは強く頷いた。

 だよな……気まずいよな。俺もだ。


 焦ってるのか、恥ずかしいのか分からないけど、弁当の包みを開けるのにかなり手間取っていた。

 俺はその間、そんな結城さんをガッツリ見てました! 可愛かったです!


 そんな風に会話も無しで、黙々と食べることになってしまった……。いや、一緒に食べれるだけで十分嬉しいけどね! ただ、ちょっと……ちょっとだけ話したいだけでね?! 別にね!


 結局、俺は10分程度でさっさと食い終わってしまった。弁当箱を片付けながら、結城さんの方を見ると、ちびちびと食べていた。

 しかも、まだ3分の2は残ってた! 3分の2!


 小動物感が否めない……! かわいい!


 いかんいかん! 顔が緩むのを抑えなければ……キモいと思われる。奈那子に見られたら、なんと言われることか……、恐ろしい!


 とにかく、首を振って顔を戻した。

 そんな俺を不思議そうに首を傾げながら上目遣いの結城さん……。致死量です。


「あの……?」

「ああっ! どうぞ、ゆっくり食べてもらって、大丈夫です!」


 怪しまれてしまった! 必死で取り繕ったけど……逆に怪しくなった……。


 あぁ……良かった。また食べ出した。


 そうしてずっと見てたらいつの間にか結城さんは食べ終わっていた。

 昼休み開始から30分ぐらい。会話は移動中の少しのみ。連絡先はまだ交換出来ず……。


「じゃあ、戻りましょっか」


 俺はそう言って立ち上がった。

 はぁ……連絡先交換できなかったなと思いつつ、ドアへ向かうと、後ろでガタガタと動く気配。

 振り向けば、結城さんが机にぶつかりながらこちらに向かってきていた。

 一心不乱と言わんばかりの様子で、急いで走って、俺の腕を捕まえた。

 ぷるぷると震えながら。俺も震えた。柔らかい感触がめっちゃドキドキした。

 心拍数が多分寿命縮むレベルまで上がった。


 俺はもう止まってたんだけど、気付いてなかったらしい。少しあとに止まってたことに気付いて、顔を赤くした。しばらく俯いてた。

 う〜ん……かわいいね。


「あ、あの!」

「はい……」

「連絡先をっ! 交換してくれませんヵ……」


 最初は大きな声だったのに、段々と尻すぼみになっていくその声が、やっぱり可愛かった!


「えと……立花くん?」

「っはい! 交換しましょう!」


 というわけで、俺も元気よく返してみた。

 いや、そんな余裕っていうわけでもないけどね! むしろいっぱいいっぱいだけどね?!


 そして、2人でスマホをポチポチ。QRコードを読み取り、友だち登録。


 俺の画面には、『唯音』と書かれた人のトーク画面が開かれた。


 フォォォォ!! 彼女との連絡先交換!

 響きがいいな! 彼女と連絡!


 とか舞い上がってたら、スタンプが送られてきた。

 レッサーパンダのスタンプで、よろしくって書いてある。


 結城さんの顔を見てみると、スマホと腕で顔を隠していた。しかし、真っ赤な耳が見えて恥ずかしがってるということは分かった。


「よろしくお願いします」


 俺は結城さんに直でそう投げ掛けた。


 結城さんは少し腕をずらして、ちらりと俺の方を見ると、コクコクコクっと何回も頷いてくれた。


 まぁその姿のなんて可愛いこと! もちろん、昇天しかけた。


「じゃ、帰りましょっか」

「……はい」


 俺の呼びかけに、結城さんは顔を俯かせたまま答えた。

 段々分かってきた。これは俺が嫌なわけじゃなくて、恥ずかしいんだな。


 そう考えると、超意識されてることが分かって、気分がめっちゃ良くなる。うれしい。


 ニヤけそうになる口を押さえながら、教室に帰った。


 教室に着くと、別々に机へと戻っていった。もう少し一緒にいたかったけど、あれ以上近付くと更に離れそうだから、少しずつやっていきたいな。

 俺も慣れてないし。いや、多分こっちの方がでかいな。


 少しニヤけた顔を翔に目撃され、溜息を疲れながら肩を叩かれた。

 俺にしてはよくやったという意味と取る。殺意が芽生えたが、こいつはこういう奴だと飲み込んだ。


 そして、スマホを見せつけ、


「どうだ! 交換してきたぞ!」


 と、盛大にドヤ顔をかました。


「おぉ〜……やっとか。まぁ、よくやったんじゃないの?」


 めちゃめちゃ上から目線で返された。やる気のない拍手付き。


「一歩前進だな」

「おう」


 翔が珍しく笑顔で言うもんだから、悪い気はしなかった。

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