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第5話 連絡先を……

〈立花匠真〉


 次の日の朝6時、しっかりと早起きをした。清々しい程の目覚めだ。

 そして、彼女が出来た。しかも、結城さんが相手ということを思い出して悶えること、10分。ふと思い出した。


 俺、連絡先交換してねぇな。


 やったわ。マジで忘れてた。嬉しすぎて頭から飛んでた。え、これどうすればいいんだ? 普通に聞いていいのか? 昨日聞くの忘れてましたって。 気まずいだろ、これは。俺がバカだってことが分かっちゃうじゃん!


 そして、困った時の翔さんの召喚だ。


『(匠真) なぁ、結城さんの連絡先聞いてないんだけど』

『(匠真) どうしたら良い?』


 打っても返信が来ねえ……。どうなってやがる、こいつ。俺の事はどうでも良いのかよ。散々何かしてたくせに。


 身支度をした後、二階の自室から降りて、朝ご飯を食べてる最中に来た。ちなみに、打ち込んでから20分経過な。ナニコレ?! メンヘラみたい!


『(かける) さてはお前、バカだな』

『(匠真) 悪かったなバカで』

『(匠真) 誰だって舞い上がって忘れるだろ、あの状況』

『(かける) まぁノロケはどうでも良いから、しっかりと聞き出せよ』

『(匠真) え、手伝ってくんねえの』

『(かける) 手伝うか! それぐらい自分でやれ』


 それで会話は終わった。はぁ〜、とバカでかい溜息を食卓で吐いた。


「ちょっとあんたうるさいわね〜。なに? 彼女から連絡でも来たの? あ、あんたに出来る筈もないわね」

「ちげえよ。そもそもその連絡先がゲット出来てないから困ってんの」


 ボサボサとした長い髪をガシガシと掻きながら、うちの姉上様が話しかけてきた。キャミソール姿という、もうちょっと身なりを整えろ。大学2年生だろ! 髪のボサボサ具合が化け物だ。山姥だ。


 それでもまぁ、外面がすごいからな。大学じゃモテてるって話らしい。もっぱら、本人の談だから信憑性はゼロだが。


「あ? 彼女の連絡先をゲットねぇ……聞けばいいじゃない。やれやれって、彼女ぉ?!」


 見事なノリツッコミを見せた我が姉上様だった。


「あれ? 言ってなかったっけ?」


 俺は精一杯のドヤ顔で返した。そう、何を隠そうこの女、彼氏が出来たことがない。この無駄に自信満々な女は、好きな人の前で奥手になり、何も出来なくなるシャイガールなのだった。


「え、なになに?! え?! ちょっ、おかーさん! たくが彼女できたって!」

「え、なになに?! 彼女?! あの好きな子ができたとか言ってたあの子?!」


 あ、こいつやりやがった! お母さんを呼びやがった! そしてお母さんも喜々とした表情で台所から出てくるなぁ!

 やめろ。そいつは帰ってきた俺の顔で、俺に好きな人ができたって悟ったんだぞ!


「……そうだよ」


 と叫びたい気持ちを我慢しながら、そっぽを向いて返した。


「キャー! 良かったわね〜! たくちゃん、初恋成就じゃないの?!」

「あんた、これ初恋だったの?!」

「だからイヤだったんだよ! あんたらに言うのが! 2人は揃うとめんどくさくなるから!」

「そんなこと言わないでよ〜」

「まさかたくに先を越されるとは……」


 何か一人ショック受けてる奴がいるぞ。存分に味わえ。姉貴よりも先に彼女を作った俺の勝ちだ!


「あ、ヤベ! 俺もう行くわ」


 時計を見ると、いつも出る時間より十分遅れていた。さっさと食パンを片付けて、カバンを持って玄関に向かう。今日は色々な教科が入ってて重かった。


「あ、逃げた!」

「たくちゃん、帰ってきたら沢山話聞かせてもらうからね〜」


 姉貴は叫び、お母さんからは怖い脅しのようなものが聞こえた。聞かなかったことにしよう。


 とりあえず小走りで駅に向かうと、意外といつもの電車に間に合ってしまった。悪いことじゃないんだけどね。むしろいいことなんだけどね。


 その後は普通に歩いて学校に向かった。教室に入ると、既に翔が席に着いていた。


「よぉ、匠真」

「おぉ、翔」


 翔は物音に気付いたようで、スマホから顔を上げて俺の方を見て軽く挨拶をした。俺も軽い挨拶を返す。


「さっさと貰い行けよ」

「まだ来てねえだろ」

「そういう心意気で、って話」

「分かってる」

「よろしい」

「…………」


 翔は澄ました顔で言ってきた。なんだコイツ……偉そうだな。ちょっとイラッときたけども、そっち関連の経験がだいぶあるのを俺は知っている。

 こいつは中学ん頃からエグい位モテてきている。


 バレンタインに袋持参は当たり前。学年の終わりには確実に告白されている光景が風物詩と言っても過言じゃないくらいの奴だ。この高校に入って、1人モテまくる人がいて、そのお陰でコイツは平穏な生活を保ってる。


 よくよく考えてみたらコイツ、バケモンじゃねえか。よく俺関わってきたな。


「まぁ、付き合うってんなら、連絡先は必要だろ?」

「そりゃな」

「ベッドに寝転がりながら、返信に迷ったりしたいだろ?」

「したい……」

「よし、じゃあ放課後までに交換しろよ」

「は?! 早くね?!」

「妥当なラインだろ。そうしねぇとお前、めちゃめちゃ長引くだろ? 俺は知ってるぞ。こういった類のことに距離置いてきてるから、恥ずかしくて行きづらいんだろ?」


 俺の事を見透かしたような事を言ってきやがった。なんだかんだで、付き合いはそこそこ長いからなぁ……。ぐうの音も出ない。


「その通り……」

「なら制限時間設定した方がやりやすいだろ?」

「ごもっとも……」

「罰ゲームは、俺に一食分学食奢れよ」

「分かったよ!」


 勝手に罰ゲームまで決められ、ヤケクソで叫び返す俺。なんか俺、いじめられてね?


 俺は、結城さんとの連絡先交換(放課後までにしないと奢らなければならない)を決意した。


 ……だって奢りたくねえからな。

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