第3話 俺の彼女
〈立花匠真〉
はぁ〜…………え? 付き合えた? めっちゃ嬉しいんだが。
「とりあえず、椅子に座りましょ」
「あ、うん。そうだね」
結城さんがかわいい声で俺に話しかけてきた。顔はめちゃめちゃになっていた。多分俺もだけどね。
この子、俺の彼女なんだよな……ヤバいな。ニヤニヤしてるな……今1番顔がキモい。
「お待たせ致しました。当店自慢のパンケーキでございます」
イケメンのカフェ店員が注文してないのを持って来た。めっちゃ美味そうな、フルーツとクリームたっぷりのパンケーキ、二皿。え? 事故?
「注文してませんけど……?」
結城さんが困惑しながらそう伝えると、
「もちろん、こちらは店からのサービスでございます。俺と店長がウズウズしちゃったから、出来れば貰ってください。同じ学校の生徒だから。おめでとう」
イケメンは微笑みながらそう言ってきた。
え? 心までイケメンなの?
とか思ってたら、衝立を挟んだ隣のテーブルを見て、
「おい、お前ら! 出歯亀とは、いい度胸してんな! 壁いっぱいいっぱいに寄って話聞こうとすんな!」
と怒鳴った。
ちょっとだけ立ち上がって見てみると、顔面偏差値高めの集団(6人の男女)がバツが悪そうに笑っていた。
「ごめんって右京。しょうがないじゃん! こんなの聞くしかないって。ねぇ、天翼」
イケメン(スカート着用)が立って謝った。
「いや、僕は悪かったと思うけど……。聞いちゃったからなぁ……」
かわいい人(ズボン着用)が申し訳無さそうに頭をかいた。
「と、言う訳で、早めに食べて出て行った方が良いと思う。こんなヤバい奴らが店にいるから。イチャイチャするんだったら、駅までの道とかで」
イケメン店員は人を殺せそうな笑みでアドバイスをくれた。……めっちゃ良い人!
「不純異性交遊はダメですよ! 流石にそれは生徒会長として許せません!」
「はいはい、みぃちゃん落ち着いてね〜。そんなことはねバレなきゃいいんだよ、バレなきゃ」
見覚えがあると思っていた低身長女子――絶対130ぐらいの身長だよ、あの人――はうちの学校の生徒会長だった。隣のチャラ男風イケメンは笑ってこっちを茶化してくる。
あの人……絶対性格悪いな。
「あはは……」
「……っ!」
俺は笑って誤魔化して、結城さんはもろに受け止めてしまったみたいだった。
顔真っ赤でかわいいなぁ……。
ってそんな場合じゃねえな。
よくよく思い出してみれば、この人たち、うちの学校で有名な美男美女グループじゃん。
えっと……確か2年の先輩で……。ほんとにヤバいなこの人たち。
「君たち、1年生?」
イケメン店員はが聞いてきた。
「あ、はい。そうです」
「そっか……後輩だ!」
一応答えた俺に、嬉しそうな感じで返してきた。顔の力つよいな〜。
俺には無い強さだ。
「あ、食べれないか……ごゆっくり」
イケメン店員はそうして去って行った。
いつの間にか出歯亀集団も元に戻って、テーブルに座っていた。嵐のようだな……。
「じゃあ、食べましょうか」
「はい……!」
俺は取り敢えず、笑って結城さん言って、そのまま食べ始めた。
ちなみに、パンケーキは緊張と喜びで味を感じなかった。多分、美味しいと思う。
イケメンさんの助言通りに早く食べて、出て行こうとした。
俺は早く食べ終わったんだけど、結城さんはかなり遅かった。
ちびちびとパンケーキを少しずつ食べてるのを、俺はゆっくりと眺めてた。なんか小動物みを感じた。
要するに、めちゃめちゃかわいい。
目が合うと、顔を真っ赤にしてすぐに反らすあたり、めちゃくちゃ俺の心臓を速くしてる。
そうこうしていると、いつの間にか結城さんも食べ終わっていた。
「お金は……」
「注文してないけど、払わないとですよね」
「っ!」
結城さんが小さい声で言ったのを、しっかりと拾って返したらめっちゃ驚かれた。
「あはははっ! そんなに驚く?」
「私は、独り言のつもりだったんです!」
「あははっ、そっかぁ」
肩をビクッてさせたのが、面白いのとかわいいので、流石に笑いが込み上げてきた。しかも止まらないんだな、これが。
結城さんはおっきく頬を膨らましてたけど、それもかわいいので、オッケイです!
財布を持って、出入り口のドアの横にあるレジまで行くと、イケメンがいた。
「こちらは当店からのサービスになるので、お代は頂きません」
俺たちの持ってる財布を見てそう返された。
「えっ、でも……」
「頂きません」
「流石にそれ……」
「頂きません」
俺と結城さんがそれぞれで文句を言っても、食い気味で断られた。
「じゃあ……なんかすみません」
「うぅ……ほんとにいいんですか?」
俺はなんとなく謝って、結城さんは申し訳無さそうに確かめた。
「はい、大丈夫です。ご来店ありがとうございました。また来てくださいね。今度はあいつら抑えとくんで」
「「あはは……」」
笑うしかなかった。
ドアベルを鳴らしながら、外に出たら、もう既に暗くなり始めていた。
「あ、急いで帰らないと、ですね」
「そうですね」
結城さんは空を見て、そう言った。俺も同意しとく。
駅までの道を一緒に歩いて行く。不思議なくらいに気持ちが高揚していて、酔うってのはこんな感じかなと思う。
だからかな。
我ながら良く出来たと思うわ。
横に並んで歩いていた時に、手を繋いでみた。
結城さんは驚いたように、手を引こうとしたが、それよりも強い力で押さえた。
俺は横から顔を覗き込むようにしたが、結城さんの顔はそっぽを向いている。
その仕草に不安になった俺は、
「ほんとに、俺でいいんですか? 付き合っても」
と聞いた。
「っ!」
結城さんは目を大きく見開いて、俺を見た。
多分、俺がめちゃめちゃ不安そうな顔をしてたから、慌ててた。申し訳ない。
「………………、ちがいます……立花くんだったから、立花くんだからいいんです!」
意を決したように、目を閉じて、両手を握って、向かい合って少し大きめな声で言ってくれた。
はぁ…………良かったぁ。ほんとに俺でよかったらしい。
「というか、私は好きだった言ったと思うんですけど! お互いに言っちゃったから、今付き合ってるんですよね!」
ちょっとキレ気味で怒られました。
「はい、すみません……」
謝ります。これは俺が悪かったです。
せっかく付き合えたのに、こんな風に言うのはバカだよな……。
「反省してくださいね。私はあなたが好きなんです。覚えといてください!」
結城さんは顔を真っ赤にさせながら、俺の目を覗き込む。
そして、手を離して駅へとまた歩いていった。
俺も少し小走りをして、追い付いた。
「(俺も好きですよ)」
大きな声で言える自信が無かったから、耳元で囁いた。あれ? なんかこっちのほうが自信アリげに見えるような……。
「〜〜〜っ!」
結城さんは耳を押さえて、俺の方を向いた。
俺の彼女はかわいかった。
〈サービスに行く前の店長とイケメン店員の会話〉
イケメン店員:俺、サービスしていいですか? 俺のバイト代からの天引きで。
店長:駄目だ。私の給料から引く。これを持って行きなさい
イケメン店員:行ってきます。
このイケメン店員の話はこれで連載しています。↓↓
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書き方がだいぶ下手なのと、こちらの作品と性格がだいぶ違います。その点を注意して、見てみてください。