第15話 デート、楽しまないと!
え〜、更新が遅れて大変申し訳ございません。
〈結城唯音〉
そっか……ホラー苦手なんだ。
とんでもなく可愛く思えてきたな。
口角が上がるのを抑え切れずに、私は水族館の暗闇で何とか誤魔化した。気持ち悪いって思われちゃうからね。立花くんにというよりも、周りの人に。
順路に従って、いつの間にか私の手を引いて歩いている立花くん。時々その横顔を覗くけど、まっすぐに前を向いたり、周りを見ながら避けたりしてるだけなんだけど……。何でだろう? カッコいいんだよねぇ!
何かのマジックにかかってる気分!
私と目が合うと、微笑んでくるあたり特に!
本当にもう……心臓が速い!
もう多分人生一回分は心臓動いたよ。
保ってよ……本当に。
「あ、結城さん……これ」
立花くんが立ち止まり、何かのポスターの様な物を指差す。それには、イルカショーについて書かれていた。
それが始まるのは、何故か丁度お昼。最もお客が入らなそうな時間帯。
そして、現在の時刻は、11時45分。
私と立花くんは、互いに目を見合う。
そして、頷いて笑う。
「行きますか?」
「行きましょう!」
立花くんの問い掛けに、私は力強く頷いた。立花くんはそんな私の反応を愉快そうに受け止めながら、地図を眺めて、また私の手を引いた。
仄かな笑顔がどうしても、私の胸を弾ませた。そして、私の顔もまた、どこまでも果てしなく緩んでいくのだった。
道中に色んな水槽があったけれど、それよりも時間がかなり危なかったから、先を急いだ。
出来ればもうちょっとゆっくり見たかったなと思いつつも、また来れば良いかと思った。
「結城さんは、イルカショーって見たことある?」
立花くんが半分だけ振り返るようにそう尋ねてきた。かなり目が輝いているように見えたから、イルカが好きなのかな?
私はその質問で、昔のことを思い出した。
「一度だけ、家族と見たことあります。あの時は本当に水がたくさんかかって大変でした……」
偶然にも最前列に座れたことが良くなかった。
いやね、最初は楽しいの。アトラクションみたいな感じで、水がかかって……。時間が経つにつれてね、気持ち悪くなるんだよね。
夏だから最初は涼しかったんだけどな。
今はまだ春だから、出来れば、ね?
「まだ濡れるには肌寒いから、後ろから見たほうが良いかも……」
「確かに! 分かった! 俺初めてだから、楽しみなんだよね!」
私の言葉に何回も縦に首を振りつつ、楽しみという気持ちが隠し切れていない立花くんは、どうしても犬の耳と尻尾が見えた。
要するに――――可愛い!
いやまぁ、可愛いってさっき言ったら微妙な顔をされてしまったから口にはしないけどね。
やっぱり、男の子って可愛いって言われると、何かう〜んって感じなんだなぁ。
そんな風に考えながら歩いていれば、5分前に会場に到着した。
すり鉢状に凹んだ場所に、同心円を描くようにベンチが並んでいる。底には大きい水槽だ。
既にイルカが泳いでいるのが見えた。
イルカって、何でか分からないけれど、可愛いと思ってしまうよね。ぬいぐるみとか。
立花くんと私は、キョロキョロと辺りを見回した。ベンチはやっぱりそこまで埋まってなかった。お昼時って、みんなご飯食べたいよねぇ。
そそくさとベンチに座った。
そこまで後ろ過ぎず、前過ぎない丁度いい場所だった。
立花くんはソワソワと辺りを見ていた。ついでにスマホで時間を確認したりしてた。
よっぽど楽しみなんだな。
何となく私も周りを見てみると、カップルの多さに驚いた。こんなにいるの?!
いやまぁ、確かに水族館の中にもたくさんいたけど。薄暗くてそんなに分からなかったから…………まさかこんなに人が――というかカップルが――いるとは思わなかった。
――――私達もカップルに見られてると良いな。
そんなことを考えていると、いつの間にか水槽の所に人が出てきていた。イルカショーが始まるようだった。
イルカが空中を舞うように跳んだ。
まるで羽根でも生えているのかと思ってしまうほどに自由に飛んでいた。
ちらりと立花くんの横顔を盗み見る。
イルカショーに釘付けになっていた。子どものようにキラキラした目で。
私の幸福な心も羽根が生えてどこかに飛んでいってしまいそうな気がした。




