第13話 デート、何もやらかさないようにしないと……(大フラグ)
更新が、とても遅くなってしまい、申し訳ございません。一ヶ月近く放置してしまった。
〈結城唯音〉
約束の時間――――10時。
現在の時刻――――9時。
1時間も前とも、たった1時間前とも言える。
笑いたきゃ、笑って! 浮かれ過ぎて2時間前に来た私を! そして、1時間も周りを歩きまくった私を!
正直、私も思った。
なんか出るの早いなって。
何ならこれ、部活の大会とかに出るような行動の仕方だなって。しかも大きめな大会。駐車場に駐めれなくなるからってね。
まさかそれをデートの日にするとは……。
ふぅ〜……水族館の最寄り駅前に集合とは言われたものの、やることもなく、公園のベンチに座る。目の前にあったから良かった。
少しは時間を潰せそう。
服は……少し腕まくりをしたデニムのブルゾンに、五分袖の白のブラウス。それに膝までの長さの黄味がかった白のスカート。
昨日散々光里ちゃんに電話して相談しながら決めた服装。
多分、おかしくないよね。うん。
一通り自分の服装を顔を下に向けて眺める。少し頷いて、ベンチに深く腰掛ける。
手元の肩掛けバッグの中を覗くと、文庫本があった。ほっこりする島のカフェの話――――ではなく、ゴリッゴリの連続殺人事件のミステリー。
ごめんなさい。可愛くなかった。
でも、面白いからね。騙されるからね。
キョロキョロと辺りを見回して、立花くんが居ないことを確認すると、私は本を手に取った。
時間が溶けた結果。
立花くんが気付いたら横に座ってた。
「…………え?」
「あ、気付いた?」
間抜けな顔をしてるのを自覚しつつ、私は腑抜けた声を上げた。立花くんは普通に微笑みかけてきた。
「いや〜、めっちゃ集中してたから邪魔しちゃ悪いなと思って」
「い、いやいやいや! 言ってください! 今何時ですか?!」
「ん? えっと……10時半とか。結城さん、何時に来たの? この時間でそんなに集中してるって」
一瞬で顔が茹だってしまった。無限に笑顔で話しかけられる。そして、最後の質問、致命傷。
「あ…………えっと、は、8時……」
「え、8時?! 早く言ってよ! 俺ももうちょっと急いで来れば良かった。いや〜、早目に行こうとそれぐらいの時間に着く勢いで家出ようとしたら、翔から連絡が来てさ。俺の行動読んでたみたいで止められた。
やっぱり早く来れば良かったな。そしたら、結城さんと一緒に回れたのに……」
その反応は予想外ですね。とっても残念そうに笑いながら返されてしまった。あ、そうか。
私達は付き合っていて、カップルになった。どれくらい付き合うかは分からない。ずっと付き合うつもりだけど。長くなるかもしれない相手に遠慮って意味があるのかな。
礼儀は大事だ。失礼はあってはならない。
だけど遠慮はどうだろう。
遠慮ばっかりしていれば、相手に何も気持ちを伝えられずに終わる。自然消滅も良いところだろうな。
あぁ……もう少し、自分の気持ちを伝えなきゃな。
「……次からは言ってみますね。私も立花くんとなが〜く一緒にいたいですから」
「っ! ……うん、言ってね」
私も頬を真っ赤にしながらだけど、なんとか笑いながらそう言えば、ちょっと息を呑むような感じになった立花くん。はて、何かあったのかしら。
「あ、もう11時になるね。そろそろ行こっか、水族館」
「あ、はい!」
立花くんが腕時計を見て、そう言う。少し話しただけなのに、いつの間にか時間が過ぎ去っている。これは本当にどういうことかが分からない。
好きな人といれば、時間は溶ける。本を読んでいる時よりも。
そして、何故か気付かぬ内に繋がれている手。私はこのスムーズさに驚いた。
え、こんなにリードしてくれるの?! カッコよくない?! スゴイ!
手が触れているだけで、鼓動が速くなる。手は繋がれていても、立花くんの背中を私は見ている。
どこが悪いという訳ではない。
ただ……これは対等じゃない気がする。
私が手を引っ張られるだけなのは、良くない気がする。
私は少し歩調を合わせて、横に並んでみた。
立花くんは驚いた顔で私を見た。
「あ、ごめん。歩くの速かった?」
「いや、そういうことじゃなくて……。せ、せっかく付き合ったのなら、並んで歩きたいなって……」
やっぱり要望を言うのはちょっと不安だな。これの反応が本当に気になって。これで嫌われたりしたらって思っちゃう。
「……あ、うん。そうだね。俺もちょっと思ってたよ」
立花くんは呆気にとられた様な顔を見せると、すぐに笑って頷いた。きちんと分かってくれるいい人。
すぐに顔を背けてしまったけれど、耳を見れば分かる。とっても赤く染まっていて、恥ずかしかったのかも。
嫌われている訳ではない。
むしろ好かれている。
これを私は自覚すべきだったと思う。
心の奥底から湧き上がる、幸福感を私は噛み締め、繋がった手の握る力を強めた。




