第12話 デートに誘いたい!
〈立花匠真〉
俺は、ベッドの上で土下座をカマしていた。理由は、まぁ分かるよな。
もちろん、翔への頼み事である。困った時の翔さんだぞ! もう、ここ最近頼り過ぎではないかというくらいに話を聞いてもらっている、翔さんだ。
その翔さんにわざわざビデオ通話で頼み込んでいる。その内容は――――
「結城さんを、デートに誘いたいですっっっ!!!!」
「普通に誘えよ」
俺が土下座でそれだけ言うと、絶対に小バカにした感じで返された。見てないけど分かる。はぁ? とでも言いたげな顔で頬杖ついてんだよ、こういう時。
顔を上げれば、想像と寸分違わぬ翔の姿。いや、本当に一緒だな。
「頼むよぉ……。俺だけで考えたらろくな事にならないって予想がつくんだ〜!」
「いや、努力しろよ。そもそもがおかしい」
引き続き土下座を続ける俺に、冷静にツッコんできた。こいつ……出来る!
「お前、この状況でふざけたこと考えてんだったら、これ切るぞ」
「はい、申し訳ございませんでした。二度といたしません。どうか、電話を切るのだけは止めてください」
ヤバい。翔に見捨てられたら、俺はガチで終わる。再び頭を下げた。
「はぁ……まぁ良いぜ。で、具体的に、どういうことを俺に聞きにきたんだ?」
「デートに誘うのは、まぁ付き合ってるし、俺がドキドキしながら誘えば良いんだけどさ」
「ドキドキするのか……」
「どこに誘えば良いのかってことなんだよな。これが一番難しい」
翔。お前の途中に入れた茶々は無視するぞ。
「ふぅ〜ん……予想以上にしっかり考えててびっくりだわ」
「お前さ、俺を何だと思ってんの、マジで」
「恋人なのにも関わらず、今更奥手になる変人」
「……マジいいかげんにしろよ」
「何をだよ」
「……うん。もう…………良いよ」
「なんでお前が勘弁したみたいな感じなんだよ」
こいつ……びっくりするぐらい、自分が何言ってるか分かってないだろ。何なの、こいつ。
「それで! どこ誘えば良いと思う?」
「そうだな……無難なラインだったら映画とかだけど、お前結城さんの好み知ってるか?」
その問いには、俺は首を横に振って答えた。知ってるわけないだろ! 先に付き合っちゃったんだから!
「だろうな。だから、明日の昼休みに一緒にご飯でも食べながら話し合うのが、お前らだったら良いような気がする。俺はもう気づいたからな。お前らに一般常識は通用しない」
「おいおい……まあいいや。ありがとな。そうしてみるわ」
散々貶してきやがったな。何でこんなに言われんの? それでも、翔が経験豊富なことには変わりはないからな。指示には従ってみよう。
翌日の昼休み、昨日同様に空き教室に入って、机を向かい合わせて座る。なんだかんだで、まだ少し緊張しながらも普通に食べ出した。
よし、切り出そう。
「あの、結城さん」
「は、はい……」
「今週の日曜、デートに行きませんか?」
「は…………でっ! ………………行きます!」
結城さんは一瞬フリーズした後、少し頬を赤らめながら頷いてくれた。うん、うれしい。可愛い。
頬を手で押さえながら、ワタワタと慌てている様子は非常に微笑ましかった。何を慌てているのかはよく分からないけど。
そんなに嫌なのかな? 俺泣きそう。
まぁ、流石にそういう訳ではなさそう。
多分……恥ずかしいか、慣れてないか。俺とおんなじ感覚なら。
「それで、なんだけど」
「はい」
「どこに行こっかっていうのが決められなくて。どうせだったら相談して決めようと思って」
「あぁ……」
結城さんは、拍子抜けーみたいな顔して頷いた。え?! 自分で決めないとやっぱダメだったか?!
「そうですね! 初デートですもんね! 二人で楽しみたいですもん!」
すごく手を握り締めて同意してくれた。うん……良い人。
「どこ行きます?」
「そうですね……デートの定番は、映画館とかですが……」
「なんか、ですよねぇ……」
「はい……」
こんなおんなじ考えになることってある?! 映画は微妙って、やっぱり?! 個人的に、2時間も結城さんと話せないのがちょっと嫌。
「え〜……後は、水族館?」
「あ、良いんじゃないですか?!」
「…………っ、水族館が良さそうですね」
結城さんの目がとても輝いた。一瞬見惚れちゃった……ヤバいわ。破壊力。
「そうですね! 行きましょう!」
「水族館にしましょう!」
「はい!」
う〜ん……なるほど。
結城さんって、水族館が好きなんだ……。
あ、でも話す話題とかきちんと考えとこ。
次回、初デート編へ。行きます。




