第10話 帰り道
〈立花匠真〉
俺は昼休みが終わり、安心と歓喜の気持ちを織り交ぜながら、午後の授業を受けた。
なぜか奈那子は少し不機嫌っていうか、沈んだ顔してたけど。
そんなことは置いておこう!
結城さんと連絡を交換した今、やりたいことはただ一つ!
一緒に帰ること!
これは外せない。そのためには……。
「匠真、どうしたんだ? そんな難しい顔して」
「お? わかるぞ……数学の課題だよな。むずいよな」
机に座って考え込んでいた俺に話し掛けてきた奴らがいた。翔ではない。二人組……っていうか、カップルって言った方があいつらは喜ぶな。
顔を上げれば、メガネを掛けた呆れ顔の奴と制服の中にパーカーを着込んでいる明るい髪色のアホ面がいた。
メガネは黒野勇壬。パーカーは日向壮一郎。
どちらも俺が高校に入ってから出来た友達だ。
何を隠そう、コイツラはカップルである。
まぁ、最初に言われた時は驚いたけど、普通にしてるから別に何も感じなくなったな。たまに目の前でいちゃつかれるのはイラつくが。
「いや、違うわ。あ、ちょっと待っとけ」
「うん? なんだ?」
「さぁ……?」
俺は結城さんについて話そうと思ったけど、本人に確認を取った方が良いと思って、途中で話すのを止めた。不審な目で見つめられた!
スマホを引き出しに半分ほど突っ込みながら触る。
『(匠真) あの〜』
『(匠真) 翔以外の友達にも彼女できたって言っても良い?』
『(匠真) 結構仲の良いひと』
とトーク画面に打ち込んだ。
すぐに既読が付いた。顔を向けると、俺と同じようにしてスマホを触る結城さんが見つけられた。
『(唯音) 良いですよ』
『(唯音) 別にそこまで隠したいという訳でもないですし』
『(唯音) 立花くんが信頼しているというのであれば』
返信が来たので、二人の方を俺は向いた。
「彼女ができました」
二人にVサイン。
「は?」
「へ〜。良かったねー」
勇壬はとぼけた声を出して、壮一郎はパチパチと手を叩いた。
「いやいや、お前に出来るわけ……」
「でも勇壬にもできたよね」
「……悪かった」
勇壬が首と手を同時に振ると、壮一郎は勇壬の顔を覗き込んだ。勇壬は言葉を詰まらせて、そのまま壮一郎を抱き締めた。
いや、ちょっと意味分からんわ。
「おいおい、よそでやれよ」
「おお、悪い」
「え〜? 珍しく勇壬から来たのにー」
「俺はまだ彼女とそんなこと出来てないの!」
「なんだ、嫉妬か。ダサいぞ」
「黙れ!」
残念そうに二人は離れた。
俺だって結城さんとそんなふうにイチャコラやりてぇよ! ただ……まだちょっと恥ずかしいかな。
「で、何悩んでたんだ?」
「…………たい」
「え?」
「彼女と一緒に帰りたい!」
勇壬が聞き返したのに、俺はそこそこ大きな声で返した。
「は……?」
「へー」
勇壬はまたまたとぼけた顔をして、壮一郎は分かっているのか分かっていないのかといった反応。
「普通に言えよ」
「恥ずかしいから言ってんだろうが!」
数度目の呆れ顔で返された……それが言えたら悩んでねえよ!
あぁでも、もうそろそろ先生が来てショートホームが始まんな。放課後になる前に話をつけないと。
「……やるか」
「そうだな」
俺が引き出しの中のスマホを握ると、後ろから俺の肩が叩かれた。ビクッとさせながら振り向くと、ただのイケメン――翔だった。
「びっくりさせんなよ」
「びっくりする方が悪いだろ」
「お前な……」
あまりにも態度デカすぎじゃねえか? こいつ。何で俺が悪いんだよ。
「ほら、早めに言っとけよ。先生が来る前に」
「……分かってるよ」
ちょっと偉そうな翔にぶすくれながら、俺はトーク画面を開いた。
『(匠真) 今日、一緒に帰らない?』
端的だったかな? ちょっと無愛想に思われないかな?
とか思ってたら、またまたすぐに返信が来た。
『(唯音) ぜふ!』
『(唯音) あ』
『(唯音) ぜひ!』
……打ち間違えしてる! 可愛い……。思わず机に突っ伏してしまった。スマホはもちろん机ん中だよ?!
『(匠真) じゃあ、昇降口で』
『(唯音) 分かりました』
合流する場所を決めて、それで終わりにした。
「お、出来たみたいだな」
「あぁ、いや可愛いな! びっくりしたわ!」
微笑する翔に、俺は思わず今の気持ちを伝えてしまった。しょうがない。何でも可愛い。
「お前は幸せそうだな」
「絶頂だわ」
溜息吐かれたんだが……ンな当たり前のことを言われても。サムズアップして自分を親指で指差してやったわ。ドヤ顔は忘れてない。
俺は覚えてるぞ。お前がまだ初恋もまだだと。
「はい、席に付け。ショートホームやるぞ」
キビキビしてるうちの担任が入ってきた。いつ見てもぴっしりしたパンツスーツである。
「連絡は特にないから、さっさと帰るか、残って勉強するかしろ。終わり」
とだけ言って去っていった。号令すらいらないという宣言をしたのがこの女教師だ。強そうなこった。
いけね。早めに行っとかないと。
昇降口のドアに寄りかかって、待機。
目を凝らしながら結城さんの姿を探した。
俺もそんなに背が大きい訳でもないけど、俺よりも少し小さいぐらいだから、人に埋もれてそうだな。
そう思って背伸びしながら人の流れを見ていると、後ろから服が引っ張られた。
また翔かと思ったけど、高さがあまりにも低い。まさかと思って振り返ると、結城さん。
本当にびっくりした。
「すみません。遅くなって」
「いやいや。じゃあ帰りましょう」
「はい」
少し恥ずかしそうに目を伏せてる。頬はほんの少し色付いている。
まぁ端的に言えばかわいい。
鼓動が速くなるのを感じる。
俺、駅までもつかな……。
どうしてもこのシリーズ後回しにしちゃうんですよね……。日常系のネタを思い浮かばないから。




