第1話 すき……
誤字等ありましたら、普通にしらせてください。直します。
あるカフェの店内にて、2人の男女が見つめ合っていた。
彼らは、一緒にそれぞれの友人と店に来て、同じテーブルについた。そして、偶然目が合ってしまい、目を逸らすに逸らせなくなってしまった状況だった。
また、お互いにお互いの事が好きではある。しかし、それを相手は知らないのだ。
だから、偶然目が合って、目が離せなくなる、なんてことは無くもないだろう。
そのまま2人は、自分の高まる感情を抑えられなくなり、遂にその言葉を発してしまう。
「「すき……」」
その恍惚とした表情はまず焦りに変わる。
そしてそのまま、2人は頭を抱えて、今の状況に至った経緯を思い出そうとした。
〈立花匠真の振り返り〉
「はぁ……」
「お、恋煩いか?」
俺、こと立花匠真が親友である近衛翔の横で廊下の窓枠に寄り掛かりながら、溜息を吐くと、翔は笑ってからかってきた。
「いやそりゃ好きだけどさ……どうやっても進展のしようがないじゃん!」
「ん、まあそうだな。関わりなんて無いに等しいからな。お前とお前の好きな人」
俺がからかいに真面目に返すと、普通に冷酷に刺された。もうちょっとフォローしてくれ。俺は頑張ってるんだ。
「どうすればいいんだぁ!」
と、俺が頭をぐしゃぐしゃにしながら考え込んでいると、翔は横でスマホを弄りだした。おい、学校だぞ。バレたら大目玉食らうぞ。
「よし、匠真。カフェ行くぞ」
「はぁ?!」
そしてスマホから顔を上げたと思えば、次の瞬間これだ。大声を上げてもしょうがないと思う。申し訳ございませんでした。
「何で?!」
「良いから行くぞ!」
理由を聞いても全く話さず、放課後拉致られてしまった。事情くらい話せよ!
とそんな俺の願いも届かず、いつの間にか目的地に着いたらしく、ドアベルをカランカラン鳴らしながら、おしゃれなカフェのドアを翔が開けた。因みに、看板にはおしゃれなカタカナで“キャメル”と書いてあった。
俺も翔と共に恐る恐る入ると、イケメンな店員が
「いらっしゃいませ」
と静かに出迎えてくれた。
カウンター越しに、白髪の老人も静かに礼をしてくれた。なんかそこまでの女の子チックな所じゃなくて良かった。かわいいカフェだったら、男2人は肩身が狭いだろ?
翔は店内を見回し、迷いなく、俺にも聞かずにテーブル席へと向かう。
その視線を追って、そちらを見ると、俺の想い人である結城唯音さんがいらっしゃるじゃないですか!
何故? と思っていると、翔はどんどんそちらへと進んで行き、友達と座っていた結城さんのテーブル席に座った。
お前、何やってやがる、と思っていると、結城さんの友達と話し出した。
あ、良かった。元々その予定だったのか……って全然良くねぇよ! 俺の心臓が保たねえ。
あ、コーヒー熱かったのかな、舌出して……、かわいい……って違う! 顔をヘニャヘニャさせてる場合じゃない!
「お前……何してんの? 1人百面相すんなって。早く座れよ」
「百面相は1人だぞ! 何だそれ?!」
1人で突っ立ち過ぎたのか、翔が呆れたように話しかけてきた。目の前の結城さんの友達らしき人も笑ってこっちを見ていた。何か恥ずかしい……。
まあとにかく椅子に座ることにした。
自然と結城さんの目の前に座る事になってしまった。
俺の心拍数がどんどん上がっていく。あれ? なんか人間が出して良い速さじゃないぞ? これ。
眼鏡が良く似合ってるなぁ……。あ、唇の右横のほくろがまた、かわいい。肩ぐらいまで伸びた真っ直ぐな黒髪も、真っ白な肌に良く映えて……。目もぱっちりしてるし……コーヒーカップを両手で持つのも、かわいい結城さんらしいな……。
と考えてるのがバレたのか、結城さんは顔を上げて、俺と目が合った。あ、ヤバい。目ぇ離せなくなる……。
あぁ……やっぱり、心の底から、
「「すき……」」
はぁ、早く目を逸らさないと、気まずく………………あれ? 俺、声出て――――はい、死んだ。
俺はテーブルに頭をつけるようにして、うずくまった。
絶対キモって思われったって!
それにしても、なんか声がダブってたような……。
俺はそう思って顔を上げてみる。
すると、見るも真っ赤な結城さんの顔がそこにはあった。
「え……?」
「え……?」
「ん?」
「ん?」
お互いでお互いを指差し合う謎の状況が出来上がってしまった。え、どうしよう? 急に両想いでした? ってか。無理だわ。心臓保たん。
「えと、一旦整理しましょ! 整理!」
「う、うん! そうだね!」
結城さんからのかわいい声で会話を切り出されたので、とにかく話し合いをしようと思った。
「えっと……」
「じゃあ、後は若いお二人で」
俺がどう話したもんかと思っていると、横の翔が立ち上がってそう言った。
忘れてた。こいつと結城さんの友達もいたんだった。
「え、この状況でお前、2人にすんなよ……」
「こういうのこそ、2人ですんだよ。ねえ、梓さん?」
「そうですよ。ほら、唯音も。恥ずかしがってないで。私たちはやきもきしてたんだから」
俺が救いを乞うような目で見ても、翔には響かなかった。冷たい。結城さんの友達もなんかどっか行くっぽいし……腹くくるか……。
2人はそのまま店を出て行った。しっかりと自分が注文した分の金は払って行った。
「結城さん……」
「はい……!」
俺が結城さんに話しかけると、結城さんは緊張したように返事をした。
いや、俺も緊張するから。
「今さっきのって……」
俺が恐る恐る聞いてみた。
これで嘘ですって言われたら、俺泣くわ。
「はい、すきって言いました。えと、立花くんも……」
結城さんはかわいい声で小さく言ってくれた。ヤバいな……昇天しそう。
「俺も……すきって言いました……」
改めて言うと、エグい位恥ずかしいな。2人して顔真っ赤にしてると、めちゃめちゃ視線が……。
「ど、どうしましょう……?」
「あ、え、う〜ん……? 付き合う、とかですかね」
結城さんが困ったように(めっちゃ顔が赤い! かわいい!)言うのを見て、俺も困惑しながら返した。
「あ…………」
そして、結城さんの顔が更に赤くなった。あ、首まで赤い。人間こんななるんだ。多分俺もそんな感じか……。
「付き合いましょう!」
結城さんは大きな声でそう言った。しかも少し立って、テーブルに手を付きながら。
周りの皆さんから好奇の視線を一身に浴びております。ヤバいな……。
嬉しいけど、嬉しいけども! めっちゃ恥ずかしい!
結城さんは視線を気付いて、その場で座り込む。椅子ではなく、地面に手などは付かず、足だけついてその場でうずくまる感じ。
そんな姿を見て、かわいいと思わない筈もなく。
俺は側に近寄って、耳元で言った。
「結城さん、俺と付き合いましょう?」
恥ずかしい…………。
結城さんは顔を上げて、頷いてくれた。ヘニャヘニャの、最初の俺と似たような表情だったと思う。
立花匠真、15歳。
5月21日、水曜日。
初の彼女が出来ました。
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