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2 大雑把な前史

 帰還計画。

 アメリカ合衆国において、元黒人奴隷な人々を彼らの故郷であるアフリカに帰還させよう、という政治運動は、アメリカ独立運動が始まった頃、アメリカ独立と併せて始まったと言われている。白人の中だけでも、やれゲルマン系だやれアイルランド系だカトリックだプロテスタントだと争っているのに、そこに黒人も加えるのはアメリカを危険に晒すと考えられたのだ。

 しかし今既にアメリカにいる黒人全員を殺処分するのは、流石に道義にもとる。ならばアメリカの外に新たな植民地を作って、そこに黒人を移住させれば良い。そんな思想が広がる中で最も確実視された植民地候補が『アフリカ大陸』であり、口当たりの良い大義名分として『故郷への帰還』というワードが使われたのだ。


 果たしてアメリカは無事独立し、アメリカに住む白人達は『〇〇系だ!』というアイデンティティを持ちつつも、心の隅に『私はアメリカ人だ』という意識がかすかに潜むようになった。

 黒人の方はというと、独立戦争に伴う奴隷解放、及び北部州での奴隷制廃止の動きにより、奴隷ではない『自由黒人』が増加の一途を辿っていた。奴隷として売られた際、民族や信仰を考慮されなかったこと、奴隷として人間的な扱いを受けなかったことから、自由黒人の多くに『〇〇系だ!』という意識は薄く。『アフリカ系アメリカ人だ!』という考えの者が多かった。

 そんな自由黒人が増加していることに対し、多くの白人至上主義者は、黒人の『だらしなさ』『暴力性』に恐怖を抱き、自由黒人を排斥したがった。暴力的な自由黒人が多いのは、彼らの受けてきた教育(奴隷主による体罰)と貧困に問題があったのだが、白人至上主義者は自分達の振る舞いに責任を見出していなかった。

 綿花等の農園が多くあるアメリカ南部では、奴隷を解放してしまうと白人よりも黒人の()()が多くなってしまうことと、アメリカ全土で多発していた『黒人による白人への報復活動』から、『支配者たる白人が劣等種たる黒人に排斥される』ことを恐れる白人が多かった。また安価に綿花を育てるには、奴隷を使うか何らかの技術革新を待つしかなく。現状では黒人奴隷無しで農園から利益を挙げることは厳しいという現実もあった。

 アメリカ北部に多くいた工場長・資本家は、簡単に解雇出来て簡単に雇用出来る労働者の増加を望んでおり、そのために奴隷制の廃止を推進していた。奴隷は雇用は簡単だが解雇は難しく、また消費者にはなり得ないため市場が狭くなってしまう(消費者を減らしてしまう)からだ。資本主義と奴隷制の咬み合わせが悪かったから、とも言える。

 アメリカの南部や北部に多くいる白人労働者からすると、黒人奴隷も自由黒人も自分達の仕事を奪う存在なため、黒人全体に否定的だったが、自分達がしたくない仕事(汚物処理等)は押し付けたいため、完全に否定することもなかった。


 アフリカ系アメリカ人を取り巻く混沌とした情勢の中。1805年にオリヴィア・チャップマンがセミノール族と契約し、大規模なトマト農園から水煮缶・ケチャップへの加工までを任せたのは、ある種の『革命』だった。黒人奴隷よりも『役立たず』なはずのインディアン(注釈:現在で言うネイティブアメリカン)が、白人顔負けの勤勉さで働き、稼いだからだ。それも、湿地と疫病に溢れる酷暑のフロリダ半島で!


 オリヴィアの動きは、黒人奴隷主も工場主も、白人労働者すらも大いに揺さぶった。白人・黒人・混血だけだったアメリカの労働者層に、インディアンまで加わったからだ。

 未だインディアンが多く住んでいる西部(厳密には北アメリカ大陸中央部)の農園主や工場長は、奴隷を買って運んできたり労働者を応募するよりも『手っ取り早く確実だから』と、オリヴィアに倣う形でインディアンを雇用し始めた。

 アメリカ西部がフロンティア足りえたのは、インディアンを人間扱いしないことで、彼らの資産たる土地や家畜を好き放題略奪出来たからである。そんな状況でインディアンを『雇用』したり『契約』したりと人間扱いしてしまえば、フロンティアは消滅する。


 かくしてアメリカ西部のフロンティアは、1810年には『ただの田舎』になってしまい、ヨーロッパ中からアメリカへと渡って来る移民の行き場は激減。東海岸の街という街は職を求める労働者で溢れた。

 労働者人口の飽和による賃金の下落は南部の農園にも波及。また長年に渡って続けられていた、灌漑用水路や道路の発展も重なり、奴隷を使わずとも、労働者で十二分に採算が取れる農園も多くなった。


 工業機械に油を注すように、生活必需品(食料や衣服等)を支給しなければならない奴隷という存在は、実のところ手間のかかる労働力である。それこそ、採算が取れるならば労働者に置き換えたくなる程度には。

 しかし奴隷は簡単に解雇出来ない。殺処分は普通に殺人で犯罪だ。捨てて野良になった黒人が犯罪を犯せば管理責任を問われる。奴隷商人は「商売あがったりだ!」と看板を下ろしたため返品出来ない。ならばと市民権を与えようものなら、求職中の労働者が血眼になってリンチしてくる。

 黒人奴隷の方はというと、奴隷から人間に戻れるチャンスを逃すまいと、農場主に様々な形で圧力をかける。

 南部の農場主は『詰み』かけていた。


 そんな中での『アメリカ植民協会発足』とその『計画書の公表』。アメリカ人は白人も黒人もこの計画に飛びつき、資金や人手を惜しみなく提供したのだった。

現時点で史実から改変されたのは

・オリヴィア・チャップマンの存在

・鉛中毒になりにくい缶詰の早期登場

・ネイティブアメリカンが順調に合衆国へ同化している

・西部フロンティアの消滅による失業率の増加

・労働者余りおよび賃金低下によって奴隷解放運動は激化するも、労働力が買い手市場なため下手に開放出来なくなっている

だいたいこんなところ。


アメリカの黒人奴隷解放運動。ネムノキもあんまり理解出来ていないので、詳しい方いましたら教えて欲しいです。参考文献があればなお良。

また、

・分かりにくいモノゴトについてどの程度の説明が欲しいか

・どの程度俯瞰した視点で書かれると分かりやすいか

についても、意見が欲しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的には全く気にならなかった。 今のままでもよいと思う。
[良い点]  起こった出来事の発生順序がわかりやすく書かれていて理解しやすい。  この先がどうなるのかについて興味を惹かれる。たぶん主人公格として与えられたオリヴィアがどう関与していくか(あるいはしな…
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