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気が付くとベッドの上だった。

周囲に人はいない。

起き上がろうとして吐き気を覚えた。頭痛もするし体中が筋肉痛のような痛みを感じる。それに加えてからだが怠く動くのも困難に感じた。

汗で服が濡れている感じがするので発熱もあるかもしれない。

誰か入ってくるまでもう少し休もう。ただボーっとしていると誰かが部屋に入ってきた。

白い服に身を包んだ女性だ。

「あら、お目覚めですね。体調はいかがですか?」

と、声を掛けてきた。


しばらく休んでいたが、相変わらずだ。

「魔力を使いすぎて倒れたんですよ。魔力酔いと言われるものですね。」

ベッドの脇まで来るとしゃがみ込み目線を合わせてきた。

透き通るような白い肌と大きな茶色い目が可愛らしく、顔が熱くなった。

おれにはマリアーノ様という天使がいるのに!

「ケガや病気なら治療して差し上げられるのですが、魔力酔いは何もできないんです。まだつらいでしょうが、もう少し楽にしていてくださいね。」

女性は掌で俺の両目を塞ぐと急に意識が遠のいていった。


再び目を覚ました時室内は暗かった。

ケント様たちはどうしただろう。迷惑をかけてしまった。

しかもまだ体調は元に戻っていない。

ベットの上で寝ながら今日のことを思い出していた。


正解がわからないが、あれは魔力があったということなのだろうか。

不思議な感覚だった。体の中に何かが侵入して探られているような感じと体の中にあったものを持っていかれるような感覚もあった。


暗く静かな夜。何度か寝て起きてを繰り返し、朝日が顔を出すころには体もすっきりして起き上がることができた。


部屋を出ていくと数人の白い服を着た女性が神殿の中を掃除している。その中の1人が俺に気が付いてくれた。

「おはようございます。司祭様にお伝えして参りますので、こちらへどうぞ。」

そう言って、近くの部屋に案内してくれた。

時間もかからずに昨日会った男が現れた。

「おはようございます。昨日はよく眠れましたでしょうか?」

そう声を掛けてきた男は自らをバモスと名乗った。


「ケント様と護衛の方は昨日は宿に戻られました。本日もう一度こちらにお越しになるそうです。」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

「迷惑だなんてとんでもない。むしろあのような素晴らしい魔力を拝見することができて嬉しくおもっております。」

昨日は表情もなく冷たい印象を持ったが、今は微笑みを浮かべ嬉しそうにしている。


「あなたの魔力は質も量も素晴らしいです。属性では闇が一番適性がありますが、他の魔法も問題なく使用できそうです。」

「すみません、測定の結果が良くわからなかったので詳しく教えてほしいです。」

「まだ何も説明していませんでしたね。魔力に属性があるのはご存知ですか?」

「火・水・風・土・光・闇の6つだと聞きました。」

バモスさんは目を閉じて頷いた。

「あの魔法陣はその魔力に反応します。ただ、その量・質により具現化できる人は多くはいません。光が渦巻き風となり、灼熱の砂漠の砂嵐のようでした。そしてそれらを全て闇が飲み込んだ。水晶も水属性だけは反応しませんでしたが、他は反応していましたね。」

つまりは水魔法は使えないが、そのほかの魔法は使える。そして闇が一番得意ということらしい。

魔力測定というくらいだから数値として出てくるのかと思ったらそうではないらしい。

うん、わかりにくい!!


「失礼ですが、あなたのご両親かもしくは祖父母で魔力が強い方がいらっしゃいませんでしたか?」

「俺は生まれてすぐに孤児院の前に捨てられていたと聞きました。身内のことは何もわからないんです。」

「そうでしたが、大変失礼いたしました。」

「気にしていませんから。それよりも親の魔力に関係するのですか?」

バモスさんはしばらく考えてから、顔を上げた。

「はっきり関係があるとは言い切れませんが、その傾向にあります。」

俺の方を見つめるバモスさんの表情はなんだか切なさを感じる。


「あの…」

「すみません、あなたによく似た女性を知っていたので。彼女に子供はいなかったのですがね。もしかして、なんて思ってしまいまして。」

「はぁ、、、」

詳しく聞いていいのか?えっ、どんなこと話せばいいんだ?


「気にしないでくださいね。朝食は7時です。それまでゆっくりしていてください。ケント様は朝食をとられてからこちらに来るとのことでしたので。」

そう言ってバモスさんは立ち上がり部屋から出て行った。



走りに行く気になれず短い時間の散歩をして帰ってきた。

朝食はシンプルだった。

皆さんと一緒に食べたけれど話をするわけでもなく静かな朝食だった。

思えば、孤児院でも騎士団でも大勢の人と一緒に賑やかに食べているのでこんなに静かに食べていると前世を思い出してしまう。

あの頃はいつも食事は1人だったからな。

そう思うと今は充実していて毎日が楽しく過ぎていく。

前世の記憶があるからといって多少物知りなくらいで特別何かがすごいというわけでもない。

この世界の常識と前世の常識も違いがあるからな。


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