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「魔力ねぇ」
孤児院にいるときは魔力があるなんて聞いたことがなかった。
ここに来て初めて魔法が存在する世界なのだと知った。
因みに騎士団には魔法剣士もいて、炎や氷を剣に纏わせたり、見た目は普通の剣を振ることで雷や炎を飛ばして攻撃する。
あれはかなりかっこいい!初めて目にしたときの興奮は中々冷めなかった。
ただし、やはり多くいるわけではないので魔力を持つ人自体が少数なのだろう。
前世で死ぬ間際普通でいいなんて思ったけど、あんなにかっこいいもの見せらせたら憧れるなという方が無理な話だ。
俺はもっともっと強くなりたい。そしてマリアーノ様をお守りしたい。
お屋敷に来てもあまり会うことはできないのでなんとも歯がゆい思いをしている。しかしあの天使様は会いに行けるアイドルとは違うのだ。
だからこそチラッとでもその姿を見ることが出来た時の幸福感は言葉にできない。
そうして屋敷を歩いていると顔見知りのメイドさんたちが声を掛けてくれたりする。
「あらエド!今日は誰の手伝いにきているの?」
サラさんだ。サラさんだ。あっ、ポケットにはロニーさんに無理やり渡された手紙が入っている。
渡さなくてもいいか、なんて思っていたけれどこうして顔を合わせたのだからロニーさんに恩を売っておこう。
「領主様がお話があるって呼ばれたんです。これから帰るところなんですけど、何か手伝うことあります?」
「私は今日は特にないかな。マットさんかアルトさんに聞いてみて。」
「マットさんはさっき会ったときに何も言ってなかったから、アルトさんに聞いてみるよ。」
「それがいいと思うわ。じゃあまたね。」
「あー、、、あのさ、、、サラさんにこれ渡してほしいって頼まれたんだよね。」
俺はポケットから手紙を取り出し手渡す。
サラさんは中を見ると目を細めた。後で読んで欲しかった。
「人に頼んでないで、誘いたいなら自分で誘えって言っておいて。」
笑顔で告げられた。おっしゃる通りです。俺も苦笑いを浮かべながら了承した。
「ところでこの、ロニーってどんな人なの?」
えっ、意外と乗り気なの!?
「騎馬隊の中でも強いよ。しかも親切でイケメン。」
もう一度手紙を読み直している。やっぱりイケメンに反応したのかな。
「明日は18時まで。明後日は休みだって伝えておいて。」
ニヤリと笑った。マジか…
「サラさんもイケメンが好きなのか。」
「騎馬隊って精鋭揃いよね。お給金も高めだし。悪くないかって。」
「…したたか。」
「女はみんなそんなもんよ。家を取り仕切るんですもの。要領よく、したたかじゃないとね。」
「女性の尻に敷かれるくらいの方が家庭は上手くいくものなのよ。サラ、いつまでも立ち話してないで。やることはいくらでもあるのですよ。」
アルトさんの登場だ。いつから聞いてたんだろう。
サラさんはそそくさと逃げて行った。
「アルトさんを探しに行こうと思っていたんです。何かお手伝いすることありますか?」
「今日は大丈夫よ。明日お願いしたいことがあるから来てちょうだい。」
「わかりました。じゃあ今日は帰ります、失礼します。」
兵舎に戻るとロニーさんがいたので、サラさんからの伝言を伝えるウヒョーと喜んでいた。
なんとも言えない気持ちになった。