表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

華佗れば

「華佗よ。この頭の痛みをどう見る。神木の障りなどとのたまうものなら即刻首を落とすぞ」


 にらみを利かす男、曹操の診察をしていた。

ああ、CTスキャンが欲しい。MRI画像が欲しい。でも、あっても首が飛ぶ。


 結局、青い革のドクターバックを持たされて曹操の元に送り付けられてしまった。

一応薬に手術道具が入っている。この時代に無いはずの薬も入っている。

でも、無理だ。開頭手術には大掛かりな設備が必要だ。手練れた助手も必要だ。熟練の医師が2人。看護師3人。麻酔医。それで8時間から12時間の手術時間か。


 俺は行くのをものすっごく拒否したぞ。

でも、「大丈夫、大丈夫」で押し切られる。

死刑で大丈夫なわけねぇだろ。と言ったら、そこはラスプーチンくらい死に耐える力があるから大丈夫だって。

お前、ラスプーチンまで異世界召喚したのかよ!との問いに(罵倒に)


「ワシじゃないけれど、ワシが医療の守護者であるように、聖者の守護者ってのもあってね。間違えてラスプーチンを呼んでしまったんじゃ。

聖者の力はあったのだが、それ以上に名誉欲、支配欲、性欲が強くて聖なる力はさっさと失われたけれど、召喚者としてのオプションの「なかなか死なない」が発動してね、本当に死ななくてビックリしたそうじゃ。

召喚者は本当に強い守護がある。ラスプーチン並みに死なないから大丈夫。

召喚者オプションはどんな言語も使えるし、多少は好感度も上がっているしな」


 「な」って言われてもなぁ。

 確かラスプーチンの最後って青酸カリを3人殺せる分をお茶と菓子に入れるも変化なくそのまま会話を数時間ワインを飲みながら続け、泥酔したのち拳銃で心臓と肺を打たれ倒れるも、起き上がったのに恐怖され2発撃ちこまれる。1発は背骨を砕き、最後の1発は額だった。

 その後絨毯です巻きにされ橋から川に投げ捨てられる。

 死体発見後の解剖では死因は入水による窒息死だった。とか何かで読んだぞ。どこかは創作だろうけれど。

 しかし、数えても7人分の命の強化があったことになる。その恩恵が召喚者ってことで俺にも付いているそうだ。

 

そんで現在に至る。


 曹操の錚々《そうそう》たる執務室。

宰相だもんな。総理大臣だもんな。皇帝も名のちゃっているしな。

絢爛豪華。とりあえずきん使おうぜって感じ。あー目がしばしばするぜ。


 目が切れ上がっていて椅子に座っている初老のおっさんが曹操ね。

神木の障りってなんだか分からないけれど、何かデッカイ木でも倒したんだ。

 まあ、医者でも神様の障りは首から上に起きやすいって、医学を学んだものとは思えないようなことを言うやつがいたけれど、もしかしたら病気により性格が変わったり、攻撃性が強く出て神木を切る判断をしてしまった。ともこじつけで考えなくもない。


 症状が眩暈、吐き気、起床時から起こる頭痛、頭痛はあるか。ドーンかキリキリかキーンで答えてもらった。時刻、起床時か、夕方か、風呂や温まればなくなるか、逆に冷やせば楽になるかも確認。

吐き気は強い時で嘔吐もするという。

 ちょっと立ってもらっての片足立ちがフラフラして出来ない。

片足立ちがなぜか怒りに触れる。皇帝の威厳をそぐのか?面倒だな。

こんなんで騎乗しての戦闘行為なんて無理なはずだ。

 立ってもらって分かったが、この時代の中でも曹操って小さい。そういえば、関羽は2メートルで孔明は190センチとかあったな。脇の側近たちも曹操よりも20cm近くデカイ。戦国時代だから男たちは皆、大柄なのだろう。

 だから、座っていたいのか。そして、足のふらつきに気付くのが遅くなったとか?今は戦でも自ら前に出るわけではない。後ろで座って指揮をしていればいいのだろうが、苛立ちが強く出て直情的になってもおかしくない。


 色々と症状を聞き出していく。

時折、そばに控えている三公……じゃなかった。側近?荀彧じゅんいくや賈 かくという人達に確認をする。何か聞いたことのある名前だな。ああ、早く帰って漫画三国志読みたい。


〇手の震え、持っているものを落とすことはないか。

〇言葉がつまる、出てこないといった症状が多くなってきてはいないか。

〇以前と比べて攻撃的になってはいないか。

〇何かにぶつかる、つまずくことが多くなっていないか。


 それらの質問に対して、言葉を選びながらも肯定していく側近たち。

本当は、曹操に退席させて聞きたかったんだけれど、出るのを拒むし、ならば別室に側近をいざなえば怒るし。そりゃー言い難いだろう。

というわけで、話した内容の3割マシでの症状と判断する。

 加えて荀彧が曹操と賈 詡が話している間にこっそりと教えてくれたのがある。

関羽を打ち取り首を確認したが、それ以来、関羽の幽霊を見るという。きわめて小声で表情も変えず、俺はそれに目を向けないように書類に何か記入をしています。って、ていで聞いていた。

さきの症状に加えて幻覚かぁ。


 そうするとさ、問診と観察で出てくるわけよ。

病気の名前が。

「脳腫瘍」おそらく人格形成、性格、言語野のある大脳皮質の前頭葉部分。

吐き気からの嘔吐ならば、頭蓋内圧亢進症状ずがいないあつこうしんしょうじょう。腫瘍部分が膨張して頭蓋骨内を圧迫している。つまりは、脳腫瘍が進んでいるということだ。攻撃性が強くなっているとのことなので、側頭部深部、偏桃体までいっているのだろう。


 放射線治療が出来ない。薬を使った化学療法も出来ない。ならば、外科手術か。


……いや、もう手遅れだな。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 副題が! 副題がすごい! すごく気になる!副題が! もちろん作品も気になりまくりです!! ていうかラスプーチンすごい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ