あたし、頑張るもん!
15歳のあたし、リスタ!冒険者になったぞぉ〜。
@短編92
ちょい修正。
お姉ちゃんは心配性だ。
あたしたちには両親がいない。
5年前、あたしが10歳の時、死んじゃった。
その時、お姉ちゃんはお年頃の17歳だった。
あたしが一人になったらいけないと、何回も結婚を断っちゃった。
もう22歳、お姉ちゃんの友達はみんな結婚しちゃった。
ああ、あたしがもうちょっと大きかったら。
あたしが独り立ち出来てたら。
おねえちゃん、ごめんなさい。
そして・・
今日、あたしはやっと15歳になった。
15歳になれば、冒険者ギルドに入れる。
うちの小さくて貧弱な畑を耕すよりも、お金を手に入れられる。
うちにお金を入れて、豊かになって、お姉ちゃんをお嫁に出すんだ。
今までお姉ちゃんには色んな事を諦めさせちゃったから。
「何言ってるの!リスタは女の子でしょう!危ないわ!」
こう言って反対するのだ。
なんの。
あたしは11歳からエンジさんに剣や魔法を習っていたんだ。
エンジさんはこの街の保安官で、この辺りで一番有能で強い。
背が高くて、結構ハンサムで、とても性格がいい。
・・・お姉ちゃんと結婚してくれないかなあ、なんて思ったんだけどね。
実は2年前に聞いてみたのさ、ストレートに。
「ねえ、エンジさん。うちのお姉ちゃん、どうっすか?」
「あ?どうっすか、って?」
「お嫁さん!」
「え・・・うーーーん・・・」
そしたらキョトンとした顔をして・・じわじわと、困った表情に変化した。
あ。こらあかんわ。全然、意識してすらいなかったんだね。
悪いことした。エンジさんにも、お姉ちゃんにも。
「ごめーん!エンジさん!あたしが勝手に思っただけ!お姉ちゃんと結婚して、エンジさんがお兄ちゃんになってくれたらなーって、そう思っただけだから!お節介でしたーーー!じゃあねーーー!!」
あたしはぺこぺこと頭を下げ、しゅっとダッシュでその場から逃げた。
てなわけで、この話はそれっきり。
うーーーんん!残念!!
ギルドで冒険者登録を済ませ、初めての依頼を受け、家に戻る途中・・
「おお、聞いたぞリスタ。冒険者になったんだって?」
「し、しいーーーー!しいぃーーーーー!!!」
「んあ?」
エンジさんが、溌溂ボイスで声を掛けてきたのであたしは慌てた!
冒険者になったのを、誰かに聞かれてお姉ちゃんにちくったら拙い!!
エンジさんの腕を引っ掴み、ぎゅうぎゅう引っ張って路地の傍に連れていくと、
「内緒なんだから静かにしてよぉ。エンジさん、声でかいっつーか、通るんだから!」
「ああ・・悪かった、って。お前まさか、お姉さんには内緒にしてるのか?」
「そーなの。危ないとか言って反対するんだもん」
「危ないぞ、確かに。行くとして、誰と行くんだ?何処のパーティーに入れてもらったんだ?」
「う」
あたしはひとりで行こうと思ってたんだけど・・・危ないのかなぁ?
薬草を取りに行くだけの、簡単なお仕事なんだけどなぁ
うわ。
エンジさんが、大真面目な顔で、じっと見つめている・・・と言うか、背が高いから見下ろしている。あ、あ、圧が・・
「ひとりです・・」
「ばっか!お前、一度も行った事がないくせに、ひとりだと?」
「薬草を、その・・・」
「あのなぁ・・」
エンジさんは深〜〜〜い溜息を吐いた。まだ顔は、真剣・・ちょっと怖い・・
「なんでわざわざ、依頼人が冒険者に頼んで摘みに行って貰ってるか、わかるだろう?弱いとはいえ、モンスターが出るからだ」
あうう・・初めて怒られた・・
確かに。言われてみれば、その通り・・です・・ショボン・・
あたしがあからさまに悄気るからなのか、はああ、と大きな溜息を付いて、
「仕方がない。俺が付き合ってやる」
って言った!
「え。エンジさんが?本当?」
「ああ。さくさくっと済ませればいいだ、ぐッ「ありがとおおーーー!!大好きっ!!」
エンジさんが薬草摘みに一緒に行ってくれる!やったぁ!!
あたしは思わずびょ〜〜んとジャンプ、エンジさんの首にしがみ付いた!
「ぐえ、げほ、苦し、っ、おい」
「あ、ごめん!」
いいとこ入っちゃいましたか。
しゅるん、とあたしはエンジさんから滑り降りる。
「ったく、お前はなぁ・・ははは、ったく」
「うひひ!」
「女の子だろが。そう言う笑い方、やめぃ」
喉を摩っていたエンジさんは、あたしをじろっと見て、顔をクシャッとして快活に笑った。
うん、カッコ良いなぁ。こんなお兄ちゃん、欲しかったなぁ。
あたしは家に帰ると正直に冒険者になった事、一緒にエンジさんが付いて来てくれる事をお姉ちゃんに話した。
「まあ、保安官さんに?ご迷惑じゃない?」
「大丈夫!暇な時は、剣や魔法を教えてくれてたんだから」
「でも・・」
お姉ちゃんはまたいつもの様に心配してくれるけど。
「ちゃんとエンジさんの言う事を聞くし、一番簡単な薬草摘みを受けて、さっさと済ませてくるから!」
「リスタ、あなたは女の子なんだから、冒険者なんて」
「スライムや大型昆虫くらい、ちゃんと倒せるし!薬草5キロで銀貨5枚もらえるんだよ!儲けてきまんがな」
「まったくもう・・・保安官さんに悪いわね・・ぶつぶつ」
お姉ちゃんはやれやれと行った風体で、首を左右にゆるゆると振った。
んもー、心配しすぎ!
「じゃ、あたしはもう寝まーす!明日早いからね!おやすみー!」
「お弁当用意しておくわね」
翌日早朝・・
保安官詰所に行くと、エンジさんが冒険者風の格好で待っていた。
あたしも身軽な格好をして来たんだ。でもかっこいいなー、エンジさん。皮の鎧も使い込んでる感じだし。
「ほれ、薬草入れる籠背負い子を貸してやる」
「ありがとう!」
エンジさんよりひとまわり小さい背負い子を借り、背負うとスタート!
「お弁当持って来たよ!お姉ちゃんのお手製だよ」
「へえ」
「堪能するがいい〜〜」
「はいはい。でも、弁当くらいお前が作れよ」
「う」
エンジさんは悪戯っぽく笑う。
「なんだ、サンドイッチくらい作れないのか?」
「つ、作れるわい!今度行く時は作ってくるっ!」
「お姉ちゃんを頼ってばかりすんなよ」
「ふん、分かってるって〜」
あははとエンジさんは笑う。くそぅ、みてろよぉ。次は作って驚かせてやるんだから。
あたしたち二人はおしゃべりをしつつ、どんどん草原に分け入って、かなりの距離を歩いて・・・
「確か、この辺りに群生してた筈だが・・ああ、あった」
「ほんとだ!」
「大型昆虫や毒を持つ毛虫がいるから気をつけるんだぞ」
「はいっ!師匠!」
「ははは」
薬草を根っこごと引き抜いては背負い子に入れ、引き抜いては背負い子に入れを繰り返し・・
「わあ、かなりの量になった!」
「そろそろ終わるか。これだけあれば十分だな」
エンジさんがポイントに連れて行ってくれたから、最速短で収穫出来たんだ!
「ありがとう!エンジさん!」
「おいおい、まだギルドで換金していないぞ?換金してお金をもらって、うちに帰るまでがクエストです」
「はーーい!」
「よしよし、元気元気」
ぽんぽんとあたしの頭をやさしく叩くのが、すごく嬉しい。いいなぁ、お兄ちゃん。
あたし達は背負い子を背負い、街へ戻る事にした。
「今日はついてる。スライムどころか、昆虫も出てこなかったからな」
ああ、今日は本当にラッキーだったんだ。
あたしを見て、エンジさんはちょっと脅す様な声で、
「普通は2〜3匹は昆虫が仕事の邪魔をしてくるものなんだ。いいか、これが通常じゃないんだからな。次来る時は気を引き締めていくんだぞ」
「え。エンジさん、もう付き合ってくれないの?」
「俺も仕事があるからな。あまり遠出は出来ないんだ。今日は他の奴がいるから出てこれたけどな」
「そっかぁ・・そうだよね」
しょぼん・・・
「・・・あーー・・・来週の水曜なら行ってやれるから」
「ほんと?!」
「・・・リスタの頭に犬耳としっぽが見える。ぷっ、喜びすぎ」
「だって!嬉しいんだもん!」
「はいはい。いいか、絶対に1人で行くんじゃないぞ。行くなら何処かのパーティと一緒にだぞ」
「うん、分かった」
いつも付き合ってくれるわけはないよね・・なんか、落ち込んじゃうなぁ。
途中の開けた野原で休憩を兼ねてお弁当を食べて。
また街へと目指し・・ギルドで依頼完了、賃金をもらってエンジさんと半分こに分けた。
「おいおい、いいんだぞ?全部お前ので」
「いーの!一緒に行ってくれた駄賃ですぅ〜」
「駄賃だと?生意気な。取っとけ取っとけ」
「えーーー。エンジさんが損じゃん〜」
「あのな、俺はちゃんと働いて稼いでいるからいいんだ、ほれ」
そして強引にお金をあたしの手に握らせた。
わあ、大きな手だなぁ・・
じゃらじゃらっとお金が手のひらに押し付けられた。
エンジさんとは保安官詰所で別れ、あたしは家に帰る。
お姉ちゃんに賃金を渡し、お弁当箱を洗うために流しに立つ。
「まあ。結構な稼ぎだったわね」
「エンジさんが全部くれたんだ。半分分けしようって言ったのに」
「ふふ。リスタったらエンジさんが好きだものね」
お姉ちゃんがちらっとあたしを見て、くすっと笑った。
「うん!お兄ちゃんみたいだもん」
「・・・そう(ふぅ・・)」
ん?なんで溜息?
まったく、お姉ちゃんは心配性なんだからー。
エンジさんも心配性だよね。
へへへ、有り難い有り難い!あたし、愛されてる〜♪
こうして偶にエンジさんが付き合ってくれるので、依頼もぼちぼち慣れ、顔見知りになったパーティとぽつぽつと依頼をこなして・・
じゃじゃじゃーーーん!!
FランクがEランクになりました!
お姉ちゃんは相変わらず心配性ですが、前よりは落ち着いたかな。
今日はスライム退治!屋敷に住み着いたスライムを、ぷちぷち潰すだけの簡単なお仕事です!
あたしを含めた6人で、屋敷を駆け回ってスライム退治!
報奨金を6等分して、貰えたのは銀貨4枚!
わーい!へそくりが増えるぅ〜〜!!
実は・・・
お姉ちゃんがお嫁さんに行く時の持参金を貯めているのだ!
いい人と巡り合って欲しい!!
意気揚々、家へと帰ると玄関ポーチに人影が・・
あれ?誰だろう?
お姉ちゃんと・・・エンジさん?
何か話をしているみたい・・
「早く結婚してくれないか」
「まだだめよ・・妹が」
「面倒は見る。安心しろ」
「でも・・・」
「いいから俺に任せておけ。本当、いい加減妹離れしろな」
「分かっているけど・・愛してるの」
「ああ、俺もだ」
え?
えええ??
い、いつの間に?
お姉ちゃんと、エンジさん?
いやいやいや!
エンジさんみたいなお兄ちゃん欲しかったし!
お姉ちゃんには幸せになって欲しかったし!!
まるごとあたしの願いが叶ってハッピーー!!
ハッピー・・
あれ?
ハッピーな筈なのに・・
胸の奥が痛い、よ?
しくしく痛むよ?
ぐすっ・・・
やっぱり・・エンジさん・・・お姉ちゃんと・・・
やだようぅ・・・
「リスタ?どうした!何処か痛いのか?」
見つかった・・
エンジさんがなんか怒った顔をしている。
「怖い顔してるぅ」
「あ、いや、心配しただけだ泣いてるから何かあったかと・・依頼で怪我したのか?」
エンジさんやさしいぃ・・怪我はしてないけど・・痛い。苦しいよぅ・・
エンジさんの後ろに、お姉ちゃん・・やだぁ。
「エンジさん、お姉ちゃんと結婚しちゃ嫌だーーー!!」
「え?っ、ぐえ!」
あたしはびょ〜〜んとエンジさんの首根っこに飛びついて、わあわあ泣いた。
「リスタ!なにしてるの!離れなさい!」
お姉ちゃんが慌ててあたしを引っ張るから、エンジさんの首がさらに締まる。
「やだ!!エンジさんはあたしのだもんっ!!」
「リスタ・・・」
「だから、おねーちゃんにあげないっ!!」
「リスタぁ・・ぐすっ・・やだぁ・・・」
「お姉ちゃん・・」
「り、り・・・リスタは私のよっ!保安官さん、離してっ!!」
「げほ・・・おれに言うな、リスタに言え、ほいっと」
あ?
あたしは涙も鼻も垂らした顔で、お姉ちゃんの方を見る。
おやぁ・・?
いつの間にかあたしはエンジさんに抱っこされていて(ぶら下がっていると首が閉まるそうで)。
で、3人で話をしたんだよね。
あたしが聞いちゃった内容ですがーーー点々が付いているところが聞き取れてなかった所。
「リスタのお姉さん、早く結婚してくれないか」
「まだだめよ・・妹が」
「リスタの面倒は見る。安心しろ」
「でも・・・」
「いいから俺に任せておけ。本当、いい加減妹離れしろな」
「分かっているけど・・愛してるの、妹を」
「ああ、俺もだ」
はあ。つまり・・・
お姉ちゃん、あたしと離れたくないから結婚しなかったって事ですかねぇ?
シスコンでしたか!!
あたしはちっとも知らなかったんだけど、お姉ちゃん彼氏いたんだって?ええええ?
でもあたしとまだ一緒にいたくて結婚伸ばしてたんですって?
しかも町長の息子?あの優しさで出来ていると言われている温厚ないい人!!
で、その人とエンジさんは友達で、お姉ちゃんとの事を相談されて・・直談判にきた、と。
「お姉ちゃんのばかーーー!!あのひと、お姉ちゃんの意思を尊重して我慢してくれてるんだろうけど、もういい加減嫁に行けーー!!あのひと結構モテるんだからね!!逃しちゃダメじゃん!!」
「だ、だって・・リスタがひとりになっちゃう」
「普通15になったら独り立ちして、街出てったりする子だっているんだから!あたしは大丈夫!同じ街にいるんだから!」
こうしてすったもんだして・・
お姉ちゃんと町長の息子さんは、3ヶ月後に結婚しました。めでたしめでたし。
あたしとお姉ちゃんとは、1週間に1〜2度は顔を合わせているので無問題。
その間、エンジさんの『ああ、俺もだ』のセリフが気になって・・・
「ねえエンジさんーー。『ああ、俺もだ』ってどういう意味〜〜?」
「そりゃあ」
にやっと笑って・・
「『ああ、俺も妹としてだ』。ってね」
「がーーーーん!!」
「15のがきんちょに手なんか出せるか。早くそれなりになれよ」
しょぼんとして歩き去るあたしにエッジさんの言葉がきこえた・・・
み、みょおお?
胸がどきんとしたぁ!!
あたしは大慌てで走り、ドテンと転けて・・
「まだ先だな〜」
あははと笑うエンジさんに抱き起こされて。
ううう、頑張らねば!!
何処を頑張ればいいかわからないけどね!!
「早くそれなりになるからね!」
「げ。聞こえたか」
「まずは・・・Dランク冒険者になるっ!!」
「はいはい」
エンジさん、呆れた顔をして溜息・・・
「まったく。子供扱いされなくなれって事だ」
「しよーがないじゃんーー。9歳、歳離れてるんだからーー」
「そんな年上が泣くほど好きなくせに」
「ぎゃあああ」
あたしは未だ降ろしてもらえず、抱っこされたまま。
みてろ・・
そのうち!そのうちそれなりに!
頑張るもん!!
なんと短編をなろうで投稿満一年(2020/04/14〜)になったよ!
本当は毎日投稿を目標にしてたけど・・
知ってるか?
艦これやると、小説脳が壊れるんだぜ・・やっぱ提督業は修羅じゃけぇ。
最近艦これをやってないので、頭が動くようになってね。
まあのんびり上げてきます。