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見習いコックと魔法使い  作者: 黄薔薇
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第八話  城の内部

「ここが俺のいつもいる場所だ」


城なんて一度も見たことも入ったこともない俺でもわかる。ここは王の間だ。実際ここにいたのが王様だったのか、どっかの貴族だつたのかは分からない。だがこんなに大きな城なのだ、相当なお金持ちだったのだろう。王様の座る椅子があったであろう場所にはこの場所には似つかない大きな木の椅子が置いてあった。あの巨体だ、王の椅子はエギオルクには小さかったのだろう。エギオルクは椅子に腰かけた。


「コックよ、さっそく料理を作ってもらおうか」

「……」

「本当にうまい料理を作れるのか確かめなくてはならんからな」

「うまくなかったら……殺すのか?」

「もちろんだ、お前を殺し。あの村の人間共も皆殺しだ」


やるしかないみたいだ。ここでうまい料理を作らないと村のみんなが—―


「……分かった」

「おい!このコックを厨房まで案内してやれ」

「「了解です」」


複数の魔物に連れられ王の間を後にする。


扉があったであろう場所は破壊されていた。きっとエギオルクが通るため破壊したのだろう。俺は階段を降りていく、いきなり王の間から入ったためこの城が何層あるのかも分からないし、出入り口がどこなのかも分からない。

階段は一階まで行けるわけではなくここで一旦廊下に出なくてはならないようだった。

(お城って結構めんどくさい設計なんだな)

などと考えていると何やら廊下から異臭が漂ってきた。この魔物達も十分臭いのだが、それとはまた別の匂いだった。廊下を曲がると壁の至る所が真っ赤に染まっていた。下を見ると地面も同じように至る所が真っ赤に染まっていた。


「うっ……」


もうやだ。俺は吐きそうになるのを必死にこらえる。この廊下に人はいない、ただ赤く染まっているだけだ。でも分かる。これは血で、この城に住んでいた人達が襲われた跡なのだろう。


「この城に住んでいた奴らだ。殺して邪魔だったんでな、全員捨ててやったのさ」


魔物の1人が言うと他の魔物達と一緒に大声で笑い出した。


「確かここだ」


魔物に連れられひとつの扉の前に来た。あれから更に階段を降りてきた。王の間からは3階ほど降りただろう。道中俺は内部をよく観察していた。この城が何という城なのか、ここがどこなのかを知りたかったためなにか手掛かりになるものがないか探していた。エギオルク一味の住み処をなんとか王都に知らせることができれば、騎士団がこいつらを倒しに来てくれるからだ。だが結局のところここに来るまでなんの情報も得られなかった。


「ん?」


扉を開けると、そこはどう見ても寝室だった。


「ここじゃなかったか?俺たち厨房なんて使わないからな」

「あっちの扉だろ」


他の魔物が言いその扉を開ける。が、またしてもそこは寝室だった。さすがにお城なだけあって部屋がたくさんある。ここら辺の扉は破壊されていなかった、エギオルクはここまでは来ないということだろう。

—―それより厨房はどこだよ。こいつら魔物はエギオルクと違って頭はよくなさそうだった。


「なぁ」


俺は聞いてみることにした


「ここはどこなんだ?前は何て言う人たちが住んでたんだ?」

「知らねぇな」

「……じゃあ俺のいた村はどっちの方角だ?」

「忘れた」

「……」


わざとしらばっくれているのだろうか?いや本当に知らないだけなのかも知れない。魔物にとって人間の名付けた土地の名前や、身分などはどうでもよいことなのだろう。だがせめて俺の村の方角ぐらいは覚えとけよ。やはりしらばっくれているだけなのかもしれない。—―が


「ここでもねぇな」

「もう1個下の階なんじゃねぇのか?」

「確かに」


やはりエギオルクよりは頭はよくなさそうだ。


また1つ下に降りることになった。その道中気になっていたので恐る恐る聞いてみることにした。


「なんで魔物なのに人間の言葉が分かったり喋れたりするんだ?」


今更感があるが普通におかしいことだった。俺の知っている魔物は「ガオオオオ」とか「シャァァァ」と言った感じの怖い鳴き声だった。だがこいつらは人間の言葉を話している。魔物同士の会話も人間の言葉でだった。


「これはな、エギオルク様の『力』のおかげだ」

「力?それって……村で家を破壊したのとおなじ物か?」

「そうだ。詳しくは知らないがエギオルク様には特別な力がある」


確かにあれはどう頑張っても説明できる物じゃなかった。何もない手から炎を出したり。他にもオヤジの腕を切断したのもその『力』のおかげなのだろう。それだけでなく人間の言葉を習得することもできるなんて。あの『力』があるからこそエギオルクは強いのだろう。


「ここだ」


そう言って開けた扉は今度こそ確かに『厨房』だった。


「じゃあエギオルク様のために料理を作ってもらおうか。」

「作り終わったら俺たちに言え。その辺にいるからな」


そう言って魔物達は厨房から出て行った。


「うわぁ……」


思わず声が出てしまった。さすがお城の厨房。俺の店より大きくいろんな物があった。


「すごい!でっけぇ釜だな~」


使ったことのない器具がたくさんありつい興奮してしまう。

—―がすぐに気分が悪くなる。この厨房にも血があったからだ。しかし人間の姿はやはりなく血だけだった。ここにいたということはこの城のコックだったのだろうか。エギオルクはこの城を攻めた時点では人間の料理を食いたいなんて思っていなかったのだろう。この城にいた人達のことを考えるととても苦しくなる。


「がははははは」


外で魔物達の笑い声が聞こえてくる。

俺は怒りが込み上げてきたがどうすることもできなかった。



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