第六十七話 遊園地と鉢合わせ
夕飯を食べた後、中間テスト前みたくならないように勉強していた。
そんな時、携帯が振動する。
携帯の画面を確認すると、和奏から連絡が送られてきていた。
『たまたま遊園地のチケットを手に入れたんだけど、今週末に行かない?』
『問題ないが……一之瀬は誘わないのか?』
『もちろん一之瀬さん達も一緒。チケット四枚あるから』
どうやら遊園地のチケットは四枚あるらしく、俺を誘ってきたことに納得できた。
ただ和奏が、どうしてそんなチケットを持っているのか気になった。
『それにしても、そんなチケットよくもらえたな』
『うーん…もらえたって言うよりも、たまたま当たったって感じかな?』
和奏は少し戸惑った様子で返信してきて、俺は今日やった福引きを思い出す。
『もしかして、あのスーパーの福引きでもらったのか?』
『うん。それでもらったの』
ということは三等の景品が遊園地のチケットで、それを和奏が当てていたということだ。
今まで福引きやくじ引きのようなもので、大当たりや番号がついている当たりを引いたことがない。
正直当たることなんてないのではないかとすら思っていた。
だが、身近で当たりを引いた話を聞くと、驚きと一緒に自分の考えを訂正しようと思った。
そんなことを考えているとまた携帯が震え、和奏から連絡が来ていた。
『もしかして、修司もあの福引きやったの?』
『ああ、残念賞のポケットティッシュだったけどな』
『まぁそれが普通でしょ。私も今回初めて当たったし』
和奏も景品が当ったという経験は今回が初めてらしい。
それから日程や時間等は、また後日連絡してくれるということで話は終わった。
その連絡から数日経って、遊園地に行く当日になった。
遊園地は電車でしばらく揺られる必要があるため、一度大きめの駅で待ち合わせをすることになっていた。
家から出ると、和奏も家を出るところだった。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
俺達はお互いに驚いて、挨拶だけして黙ってしまう。
しばらくして俺から話しかける。
「まだ時間も早いし、一緒に行くか?」
そんな俺の提案に思いがけなかったようで、和奏は驚いていた。
しかし、すぐに心配そうに和奏が聞いてくる。
「私と一緒だと目立つけど大丈夫なの?」
「もともと遊ぶ予定だったんだ。後々、他の奴に何か言われたら素直に事情を話せば大丈夫だろ。四人で昼食を食べてるところは、何回も見られてるしな」
もし和奏と一緒にいるところを見られたら、確実に噂になる。
そんな噂が広まれば、嫉妬とか品定めの視線で見られるだろう。
和奏はそうなることを心配しているみたいだった。
心配してくれるのはありがたいが、いつまでも和奏の優しさに甘えている自分でいたくない。
そんな思いから、一緒に行くことを提案した。
「……わかった」
和奏は少し悩んだ末、俺の提案を受け入れた。
俺達は駅に向かって歩き始めると、和奏がぽつりとつぶやく。
「……修司があんな提案してくると思わなかった」
「……まぁなんだ。向き合っていこうと思ってな」
「そっか」
昔の話を和奏に聞いてもらって、本当に救われた。
だから、今のままではいけないとそんな風に思う。
それから俺達は早めに家を出たので、先に待ち合わせ場所に着いた。
少し待つと幸太と一之瀬が合流し電車に乗って、遊園地に向かった。
「遊園地なんか久々な気がする……」
「私も……」
俺は窓の外を見ながら、少しだけ見えるアトラクションを眺めて呟く。
その俺の呟きに反応して、和奏も小さく同意していた。
「修司も神代さんも久しぶりなら、全力で楽しんでいこうぜ」
幸太が親指を立てながら、いい笑顔でこっちを見てくる。
「お前は久々じゃないのか?」
「久々だけど、時々デートで来てたから」
「そうですね。幸君と一緒にたまに来てました」
一之瀬はどことなくワクワクしているようで、目がキラキラしているようにも見える。
幸太も遊園地は好きだと思うが、どっちかと言うと一之瀬のほうが好きなんだと思う。
そんな話をしていれば、遊園地の最寄り駅に着いた。
そのまま遊園地の入り口に行って、受付を済ませる。
「それじゃ! 遊び尽くしますか!」
「幸君。その前にどれに乗るか決めて、出来るだけ多く回りますよ。時間には限りがあるので」
「だな。そこら辺はいつも通り陽香に任せていいか?」
「仕方ないですね」
一之瀬はそう言いつつも、満更ではなさそうにどのようにアトラクションを回るか決めていく。
そうやって話し合っていると、ふと見慣れた顔とすれ違った。
「あれ? 天ヶ瀬先輩!」
「六花ちゃん、ちょっと! え?」
そう言ってこちらに向かってきたのは、片桐と速水だった。
前に速水の言っていたデートは、どうやら今日のことだったらしい。
「先輩達も遊びに来たんですね!」
「まぁな」
俺は短く返事をして、今回は一緒に和奏がいるため、片桐の様子を見た。
片桐は何か思うところがあるのか、先程よりも少し気まずそうに見える。
その片桐の様子を速水も見ていた。
すると、急に速水がある提案をしてきた。
「すみません、先輩方。よかったら、ご一緒させてもらえないですか?」
俺達はそんな提案に驚き、速水の隣にいた片桐も驚いていた。




