表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/159

第三十九話 作戦決行

 次の日、昨日の様に黒嶺先輩が朝から訪ねてきた。


「赤桐君。今日の昼休みは私と一緒にご飯を食べないかしら?」


「悪いけど、俺には心に誓った相手がいるんで。もう来ないでくれませんか?」


「そうですよ! もう二度と関わらないでください!」


 昨日の予定通り、三人には演技をしてもらっている。

 しばらく言い争っているが、チャイムが鳴る前くらいには三人とも静かになる。


「それじゃあ、めげずにまたお誘いするわね?」


 昨日と同じような言葉を残して教室を出て行った。




 休憩時間中、幸太と一之瀬には心配するような言葉や激励の言葉が、他のクラスメイトから送られている。

 その様子を横目で見ながら、俺は本を読んでいた。

 ふと横の神代を見ると、ずっと何かを考えているようだった。

 その様子が少し気になり、神代にメッセージを送る。


『何かあったか?』


 神代は携帯を確認した後、首を横に振って何でもないことを伝えてきた。

 神代の様子に疑問を持ったままだが、今は何も聞かないほうが良さそうかと思い読書に戻った。




 時間は過ぎて昼休みになると、朝の宣言通りに黒嶺先輩が入ってきた。

 これも昨日と同じように言い争いだけして教室を出て行き、予定通り放課後になる。

 作戦としては、まず黒嶺先輩がいじめを行っていた奴らを話があるからと、時間を指定して空き教室に来るように伝えてもらう。

 そこで待っているところに幸太と俺が行き、そいつらと話を付けるという流れだ。

 予定の時間通りに俺達が空き教室前に来ると、中から女三人の話声が聞こえてきた。


「話って何だろうね」


「さぁ? もしかして赤桐君別れさせるの成功したとか?」


「えー! それやばいじゃん!」


 話を聞く限り、黒嶺先輩をいじめている奴らで間違いないようだ。

 俺が教室の中から見えない位置に着いたのを合図に、幸太が普通に空き教室の扉を開ける。

 すると、中にいた三人が一斉に扉の方に視線を移す。


「あ! 赤桐君じゃん!」


「うわぁ~まじイケメン!」


「えっ! これどういう状況!?」


 三人ともまさかの登場人物で驚いている。


「先輩方、すみませんね。黒嶺先輩に手伝ってもらって、集まってもらいました」


 幸太は、仮面を被った優しい笑顔でそう言った。

 その笑顔で女達は黄色い声を上げるが、その中の一人があることに気付く。


「えっ? もしかしてうちらに話があるの赤桐君!?」


 女の一人はそう言って少し青ざめる。

 他の二人はまだ何が起こっているか気づいてなく、ただ嬉しそうに幸太の方を見ている。


「一人は気づいているみたいですけど、黒嶺先輩を使って俺達にちょっかい出してきたのは、先輩方で間違いないですね?」


 めったに怒らない幸太が怒るときは、声を張り上げると言う感じではなく、感情が死んだように淡々と相手に質問するだけだ。

 いつも感情が豊かな奴が怒ると不気味で、俺は少し背筋に寒気が走りそうになる。

 今度こそ三人とも理解したようで、息を飲むようにしている。


「……それは」


「……言い訳とかいいんで事実だけ答えてくださいよ、先輩方」


「そうです!」


 幸太が淡々と聞くと最初に青くなっていた女がそう答えた。


「……じゃあ黒嶺先輩をいじめていたことも認めてくれますよね?」


「「「……はい」」」


 三人とも、いじめの事実を認めた。


 どうやら思ったよりも早く終わりそうだな……。


「金輪際、俺と陽香と黒嶺先輩に関わらないと誓って下さい。そうしてくだされば、俺からはこれ以上何もしないです」


 女達はほっとして黙って頷いた。


「ただ……二度目はないですから」


 幸太は目の笑っていない笑顔で、最後に忠告だけして教室を出て行く。

 女達の様子を見ると恐怖で震えながら、これ以上お咎めなしということに安心しているようだった。

 俺は歩き出した幸太の隣に並んで一緒に歩き始めた。


「これで解決かな?」


「たぶんな」


 幸太はいつもの調子に戻って、何気ない会話をしながら俺達の自分の教室に戻った。




 教室に戻れば、一之瀬と黒嶺先輩が一緒に待っていた。


「……あの…終わったかしら?」


 俺と幸太が戻ると、すぐに黒嶺先輩が結果を聞いてきた。


「全部終わりましたよ」


「……あぁ……あっ……りがとう……」


 幸太の言葉を聞いて、黒嶺先輩は涙を堪えきれないまま感謝の言葉を述べていた。

 一之瀬は昨日と同様にハンカチを渡して寄り添っている。

 黒嶺先輩が落ち着くと、また昨日と同じように三人で一緒に帰って行った。

 三人が仲良く帰る背中を眺めた後、俺は靴を履き替えようとした。

 その時、俺は何となく視線を感じて振り返った。

 そこにはプリントの束を持った神代が、真剣な表情で俺の方を見つめていた。

 その視線は俺の方を見ているようで見ていない気がしたので、俺はどうしたのか聞こうとした。

 しかし、神代は質問する前に視線を外して移動してしまった。

 その神代の様子が気になったが、もし俺に用があるならメッセージでも送ってくるだろうと思い、俺は帰路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になります。
[気になる点] 神代の動向が気になるな・・・ 何をたくら…考えてるのか
[一言] さてこのイベントの修司の出番はここから?実は神代イベントとなるとは
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ