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第二十話 お隣さんと揉め事

 しばらく色々見た結果、海斗がプレゼントを決めた。

 海斗が選んだプレゼントは、アロマオイル付きのフラワーボックスと、革のブレスレットだった。


「ブレスレットをお揃いにする、とかは考えなかったのか?」


「お揃いは、ガラに合わない」


「気にしすぎなような気もするけどな。もし朝倉から、お揃いの物をプレゼントされたらどうするんだ?」


「それは使うだろう」


 それは使うのかよと思いながら、俺は苦笑した。

 俺の質問に対して、当たり前のように答えた海斗だったが、少し恥ずかしかったのか話を変えてきた。


「次は、いつ実家に戻るんだ?」


「いや、実家には当分戻らない」


「どうしてだ?」


「元々、妹が理由で一人暮らしを始めたんだ。あいつが家にいる限りは帰らねぇよ」


「そんなことになるくらいなら、きちんと話をすればよかったものを」


「話をしても、俺がやったことは変わらないからなぁ」


「そうやって意地を張るから、こじれるんだ」


「うるせぇよ」


 こいつと顔を合わせると、必ずと言っていいほど説教される。

 こういうところは何とも言い難いが、俺のために言ってくれているので無下にもできない。

 そんなことを思いながら駅に向かっていると、近くで言い争っている声が聞こえてきた。


「なんか揉めてるな」


「そうだなぁ。勝手にやってくれって感じだわ」


「とか言いながら、横目で様子を見てるのは、お前らしいと思うぞ」


「は? そんなことしてねぇぞ」


「なら無意識か……病気だな」


 海斗の奴が少し五月蠅いが、言い争っている奴らの様子を軽く見る。

 どうやら、チャラい男三人と男一人女三人の男女グループが揉めてるらしい。

 その揉めてる声に耳を澄ませて聞くと、男女グループの一人がチャラ男グループにぶつかったらしい。

 それで難癖を付けられて、チャラ男グループに絡まれている状態のようだ。

 いつの時代のチャラ男だよ。


「そんな奴といるより、俺らと遊ぼうぜぇ」


「ほんとほんと! 絶対俺らと一緒の方が楽しいって」


「そもそも君がぶつかったんだから、なんかお詫びしてほしいなぁ~」


 チャラ男の一人が、女一人に手を伸ばす。


「やめろ!」


 一緒にいた男は、伸びてきた手を払い除けた。


「痛っ! おいクソガキ、邪魔するんじゃねぇよ」


「もうめんどくせぇから、こいつボコして女の子達を連れて行こうぜぇ」


「やめて! 私がぶつかったのが悪いんですから、私はついていきます。だから、他の人には何もしないで!」


「ひゅ~、お利口ちゃんじゃん。じゃあ、一緒に来てもらおうか」


 女の近くに行こうとしたチャラ男の間に、一緒にいた男が邪魔をするように割って入った。

 というか直近で、めちゃくちゃ聞いたことある声がするんですけど。


「先輩! 私のせいなんですから、やめてください!」


「そういう問題じゃないだろ!」


「いい加減カッコつけるのやめてくれないかな~。おら、よっと!」


「うぐっ!」


「カッコつけたくせに一発で崩れちゃうって、ダッセェなぁ」


「先輩! 先輩!」


 間に入っていた男が、みぞおちに一発殴られたようだ。

 殴られた男は、膝から倒れていく。

 倒れた男を心配して、守られた女が近寄る。


「一之瀬さんは、警察か誰か呼んできてください。その間に、私が何とかしますから……」


「わ……わかりました……」


 女の一人が、その場から走って離脱する。

 あいつ一之瀬かよ……てことは、あいつらは神代と速水で、殴られたのは片桐か。


「おい! クソ! こいつのせいで一人逃がしたわ!」


 チャラ男の一人は、そのまま片桐を蹴り始めた。


「やめてください! 私が一緒に行きますから!」


「神代先輩!?」


「おお! 一人逃げたけど、この子も一緒に来てくれるって! そんな奴なんか放っておいて、この二人連れ行って楽しみましょうよ!」


「そうするかぁ~。これに懲りて邪魔すんじゃねぇぞクソガキ」


「一馬先輩! 先輩!」


「ほら! お前も一緒に来るんだよ!」


 速水は男に引っ張られて、神代は肩を抱かれながら、路地裏の方に消えていった。


 クソが……見てらんねぇ。


「海斗。俺の携帯渡すから、今電話かけてる奴が出たら事情を説明してくれ」


「もしかして絡まれているのは、お前の知り合いのなのか?」


「ただのクラスメイトだ。んじゃ、頼んだ」


 俺は、急いで男達を追いかけた。

 追いかけると、丁度一番後ろにいる男が、路地裏の曲がり角を曲がるところだった。

 俺は男の腕を自分の方に引っ張り、引っ張ったと同時に右手で首を絞めて叫ばないようにした。

 苦しそうにしている男の頭を壁に叩きつけて、みぞおちに一発入れてやる。

 男は一瞬の出来事で気が緩んでいたのもあり、すぐに落ちた。


「っし。あと二人」


 曲がり角から顔を出さずに声を聞く。

 どうやら、後ろにいた仲間がいなくなったことに気づいたようだ。


「おい、ノブどこいった?」


「あれ? いつの間にかいないっすね」


「ユージ、少し後ろ探して来い」


「うっす」


 もう一人が、確認しに向かって来ている。

 俺は息を潜めて、そいつが顏を出すのを待つ。

 足音が少しずつ近づいて来て、足音が一番大きく聞こえた瞬間に構えた。

 男が警戒も無しに曲がり角から顏を出した。

 その瞬間、髪の毛を掴んで地面とキスさせると、男の口から何本か歯が折れた。

 俺は、そのままこちらに引きずり、顔面に何発か膝蹴りを入れる。

 そのうち反応がなくなったので、地面に転がした。


「おい! そこにいるのは誰だ!」


 俺は戸惑った風を装って、曲がり角から出た。


「あのー話し合いで、解決できませんかね?」


「はぁ? お前何言ってんだ! 無理に決まってるだろ!」


 そんな言葉を男と交わしながら、横の二人を見る。

 神代も速水も、腰を抜かしたりなどはしていない。

 速水の方が恐怖に怯えているようだが、頑張れば逃げられるだろう。


「じゃあ、自分がサンドバックになるんで、それで怒りを抑えてくれませんか?」


「そんなの決まってることなんだよ! 死ねぇ!」


 殴りかかってきた拳を受け止めると、俺はすぐに叫んだ。


「走れ!!」


 一瞬驚いていたが、冷静な神代の方が反応してくれた。

「速水さん逃げますよ!」


「っ!?」


 神代に手を引かれながら、速水の方も走ってくれた。

 俺が一安心していると、目の前の奴の頭が降ってきた。

 俺は掴んでいた手を離して、距離をとる。


「このクソガキがぁ!!」


「すみませんねぇ、クソガキで」


 頭に血が上った男は、俺の顔面を目掛けて殴りかかってきた。

 俺は拳をかわして、全力で男の脛蹴ると、痛みで男の動きが止まった。

 その瞬間、みぞおちに一発、全力の拳を叩き入れる。


「がはっ」


 男は膝から崩れ落ちた。

 俺は、踵で後頭部を叩き落として、顔面を地面に叩きつける。


「~!!」


 どうやら、まだ意識があるようだ。

 俺は顔面を抑えている男の髪の毛を掴んで、頭だけ無理やり持ち上げる。


「おい。二度とつまらねぇことすんなよ? 次に同じ様なことしたらわかってるよな?」


 男は涙を流しながら、口を押えて何度も頷いた。

 男の意志表示を確認すると、俺は掴んでいた髪の毛を離して、来た道を戻った。

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