第十九話 親友とプレゼント選び
日曜日、俺は大きめの街に電車で移動してきて、駅の改札前に立っていた。
元々は土曜日と同様に、家で本でも読みながら休息を取る予定だった。
だが、中学の親友から連絡が来て、買い物に付き合うことになった。
しばらくすると、見たことをある顏が改札を出てきて、こちらに向かって歩いてきた。
「久しぶりだな」
「そうだなーって言っても、中学の卒業式から一年くらいじゃないか?」
「お前にとっての一年は短いのか……」
呆れた顏をした男は黒田海斗といって、中学からの唯一の友達で親友だ。
中学の時は学校一のイケメンで、分類としてはインテリタイプのイケメンだ。
トレードマークの黒ぶち眼鏡をかけており、よくいる委員長タイプの雰囲気を持った奴である。
中身はインテリヤクザみたいな奴だが……。
そんな真面目の印象から見せる爽やかな笑顔に、良く女子達が騒いでいた。
「で、今日は何を買いに行くんだ?」
「そろそろ誕生日だから、プレゼントを買いに。お前の意見も聞きたいと思ってな」
「……そういうことか」
海斗は、俺の幼馴染の朝倉と付き合っている。
あいつの誕生日がそろそろ来るため、幼馴染である俺の意見が聞きたいということのようだ。
「何をあげるかとか考えてはいるのか?」
「好きなものは綺麗なものだから、何か形に残るものがいいのだろうかと考えていたくらいだ」
「消耗品じゃだめなのか?」
「俺の誕生日に手編みのマフラーをもらったんだ。それを考えると、消耗品で済ませるのは申し訳ない」
「なるほどなー」
俺は朝倉の好きなものを思い浮かべるが、これだっていう物が思い浮かばない。
「とりあえず、色々見てる内に良いものがあるかもしれねぇから見に行くか」
「ああ、そうしよう」
俺達は、とりあえず大きめのショッピングモールがあるところに向かった。
ショッピングモールで色々見ていたが、なかなか決まらない。
朝倉が欲しそうなものは見つかってはいるのだが、それが海斗の望むものではない消耗品の類であるため、それは省いている。
「なかなかこれといったものが見つからないな」
「そうだな。まぁこんなもんだろ」
海斗が少し申し訳なさそうな顔をするが、こうやって相手のことを考えて決めるのが大事だと思い、俺は特に気にしていなかった。
「石鹸とかアロマみたいな香りを楽しめるもが好きなことは知っているのだが、そうすると消耗品になってしまうからなぁ」
「とりあえず飯食って、また探しに行こうぜ」
時間はすでに昼時になっており、このまま煮詰まっていても仕方ないので、飯を食うことにした。
俺達は近くにあった定食屋に入って、海斗は唐揚げ定食で俺は鮭の焼き魚定食にした。
注文した料理が来るまで待っていると、海斗が話しかけてきた。
「あれから琴葉と話したのか?」
「いんや、引っ越すときに軽く挨拶した程度だな」
「琴葉の方は今でも、あのことを気にしているようだぞ」
「お前が話さなければ、あいつもそんな思いしなくてよかったんだぞ」
俺は海斗を睨んでそう言った。
海斗は自分が間違ったことをした覚えもないといった様子で、俺の睨みは効いてないようだった。
「その様子だと妹にも何も話していなそうだな……」
「ああ、そうだな」
「お前がやったことは評価されることはあっても、侮蔑した扱いを受けることに納得いかないのだが」
「相手側が一枚上手だったって話だ」
「だがな……」
「それに丸く収めたのはお前だ。俺は何もしてねぇ」
丁度会話が途切れた時に、頼んでいた飯が運ばれてきた。
「料理も来たことだし、この話は終わりだ。過去の話なんだから、蒸し返しても仕方ねぇ」
「……わかった」
それからは頼んだ料理を楽しみつつ、お互いの近況について話した。
どうやら海斗は、高校でクラス委員長をやっているらしい。
朝倉とも同じクラスで、朝倉の方も楽しくやっているみたいだ。
俺の方は神代のことは何も話さず、一人だけ友達が出来たことや、最近あった出来事なんかを話した。
「お前のその体質は、どこに行っても治らないんだな」
「生まれつきずっとだからな。そう簡単に治らないだろ」
そんなことを話していると、海斗は何か気づいたような顏をした。
「どうした?」
「もしかしたらお前のヒロインというのは、もう決まってるかもしれないな。だから、他の奴らはお前に見向きもしないのかもしれない」
「はぁ? そんなわけないだろ」
そんなことなら俺は神様か何か知らんが、この体質にしたのを恨む。
そのヒロインかもしれない人以外を好きになったとしても、絶対に報われないということなのだから。
しかし、このまま彼女いない歴が年齢になるとしても、この生き方は変えられないだろう。
そんなことを思いながら会計を済まそうとすると、海斗が伝票を持ってレジに向かっていた。
「俺も出すぞ」
「いや、今日付き合ってくれている礼だ。気にしないでくれ」
「じゃあ、今度なんかおごるわ」
海斗の礼を無下にして、無理やり自分の料金を出しても何か違うと思い、今度おごる約束で今回は奢ってもらった。
それから俺達は店を出て、またプレゼント選びに戻るのだった。