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第百五十九話 体育祭当日の朝

 体育祭当日、俺は弁当を作る為に早く起きていた。

 凝ったものを作る気はなくて、パンに挟む具材の準備をしていく。

 茹で卵を黄身と白身に分けて潰したもの、玉ねぎをみじん切りにして水を晒してツナと混ぜ合わせたもの。


「野菜はこのくらいでいいの?」


「それで大丈夫だ」


 弁当作りは和奏も手伝ってくれていて、野菜をパンに挟みやすいように切ってくれていた。


「サンドイッチって、家でも作れるんだね」


「割と簡単にな。挟みたい具材を用意したら、あとは挟むだけだし」


 俺は完成したベーコンエッグサンドとツナオニオンサンドを作ったので、朝食として和奏に差し出した。


「これ多めに作ったから、朝食として食べてくれ」


「やった! それじゃあ、先に頂きます!」


「どうぞー」


 和奏が食べてる間、具材をパンに挟んでラップをして、具材とパンを馴染ませるために冷蔵庫に入れていく。


「ん~!」


 サンドイッチを食べる和奏から美味そうに何とも言えない声を出していた。


「気に入ってくれて良かったよ」


「うん!」


 そう言って喜ぶ和奏はすぐに食べ終えてしまい、少し物足りなさそうな感じだった。


「足りなかったか?」


「えっ! いや! そんなことないよ!」


 量が足りなかったわけではなかったようだが、もしかしたらと思い和奏に提案する。


「あれだったら、和奏の弁当もこれにするか?」


「いいの!?」


「俺は種目に出ないし、そんな量無くてもいいからな。あっでも、自分の弁当あるか」


「おかずはあれだけど、ご飯は今から冷凍して夜食べればいいから大丈夫!」


「そしたら、もう一つ入れ物を用意するか」


「やった! 私、お弁当のご飯冷凍してくる!」


 そう言って、自分の鞄から弁当箱を取り出して自分の家に戻って行く。

 その間、俺も自分の朝食を食べながら待っていると、和奏が持っていた弁当とは別にもう一つ包みを持って戻ってきた。


「修司のお弁当って、サンドイッチだけなんだよね?」


「そうだけど」


「それならこれ!」


 和奏は持っていた弁当とは別の包みを俺に差し出してきた。


「これは?」


「サンドイッチ分けてもらうから、よかったらだけど」


 包みを広げると、そこにはタッパーに入った唐揚げや卵焼き、きんぴらごぼうにミニトマトだった。

 唐揚げは時々学食で食べる時はあったが最近久しくなく、このタッパーにある唐揚げが特別美味そうに見えた。


「いいのか?」


「少し作りすぎたから食べてくれたら、ありがたいかな」


「それなら喜んでもらっとく」


 俺がそう言うと和奏は何故か複雑そうに笑った後、そのまま溜め息をついた。


「なんで溜め息を」


「ううん、別になーんでもない」


 和奏はそう言って、食べ終えた自分の皿を洗い始めた。

 その様子が気になったが、聞いても答えてくれなさそうだったため、俺はそのまま朝食を食べ進めた。


 少し待った後、冷蔵庫に入れて馴染ませたパンをラップをしたまま、食べやすいサイズに切って、二つの入れ物に入れていく。

 入れ終えたあとは、一つを和奏に渡した。


「それじゃこれ。本番当日だから今日も早いんだろ?」


「うん、ありがとう! それじゃ、行ってきます!」


「おう、いってらっしゃい」


 早めに家を出る和奏を見送った後、俺はコーヒーを飲みながら少しゆっくりして家を出た。




 空は快晴、日差しが強く、絶好の体育祭日和。

 学校に着けば、大きな行事特有の祭りムードだった。


「テンション上がってきたぁー!!」


「お前が楽しそうで何よりだよ」


 荷物を置きに教室に入れば、暑苦しいテンションで幸太が近くに寄ってきた。


「あはは、赤桐はいつも元気だけど、今日はまた一段とだねぇ~」


 俺と同じように荷物を置きに来た戸崎が、幸太を見て笑っていた。


「ちなみにお前が出る個人種目ってなんだ?」


「短距離! 障害物競走! 大繩飛び! 仮装競争!」


「へー……ん? 最後なんて言った?」


「仮装競争!」


「なんだそれ? 前回そんなのあったか?」


「よくわからんけど、なんかあったから立候補した!」


「……お前のその度胸に、時々驚かされるよ」


 名前から察するに、体操着から違う衣装なのか服なのかに着替えて走ると言ったものだろうけど。

 目立つだろうなぁ……。

 参加する奴は目立ちたがり屋か盛り上げ役か、はたまた半ば強制で客寄せパンダにされた奴か。

 こんな種目考えるのなんて、あの会長くらいしかいないよなぁ……。

 そんなことを思っていると、何やら怒りが満ち溢れた様子の片桐が俺達に近づいてきた。


「あ~か~ぎ~り!!」


「おう! 片桐! 一緒の種目もあるから、頑張ろうぜ!」


「頑張ろうぜっ、じゃない! 何でこんな変な種目に僕を入れたんだ!?」


 片桐は幸太の襟を掴んで聞いた。

 その光景に、幸太が片桐をどの種目に入れられたのか察しがついて同情した。


「なんだよぉ~嫌だったのか? 何でもいいって言ってたんだろ~」


「何でもいいと言ったが! そう言った奴は普通の種目にしてやるだろう!?」


「えぇ~いいじゃん、面白そうなんだから。何でもいいって言ったんだから、決まったもんに後からぶつくさ言うなよ~」


「ここ数日大会で公欠だったから、文句も言えなかったんだ!」


 もう片桐が可哀想すぎる。

 俺は片桐の肩を叩いて、慰めの言葉を掛ける。


「どんまい」


「おい、笑い堪えてるの丸わかりだぞ」


「いやいや、そんなっぷ」


「ああああ!! 赤桐のせいだぞ!」


 片桐は掴んでいた幸太の襟を前後に揺すって、幸太の顔が青くなり始めたところで、俺と戸崎が仲裁に入った。

更新が遅れてすみません。

次から体育祭本編です。

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