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第百五十七話 確認と姉妹事情

 俺は呆れながら、諏訪妹に言う。


「ありえないぞ。そもそもお前は諏訪姉の俺への態度について知っていただろ?」


「すっ、すみません! い、一応しっかりと確認しておこうと思って」


 諏訪妹は申し訳なさそうに俺に謝った。

 その言葉を聞いて、俺と和奏がほっと安心していると、速水が諏訪妹に聞く。


「それなら、どうして天ヶ瀬先輩にそんなことを……はっ! もしかして、彩月先輩は天ヶ瀬先輩のことが好きだったり!?」


「いや、それもないだろ。相性も悪いし、むしろ嫌われてると思うぞ」


 俺は速水の憶測をすぐさま否定して、さっさとこの会話を終わらせようとする。

 諏訪姉の気持ちを知っている俺と和奏からすれば、この会話は不毛なものだ。


「えっと、実は私も少しだけそう思ったので、天ヶ瀬さんに聞きました」


「姉の行動について知ってる妹が、なんでそう思うんだよ……」


「い、いや、その、そうなんですけど……最近の姉は天ヶ瀬さんを見かけると、少し避けるような感じだったので」


 諏訪妹の言った姉の行動は、恐らくこの前の言い合いで、俺に対しても申し訳なく思っているせいなのだろう。

 しかし、そのせいで妹に変な考えが生まれてしまったようだった。


「それについては、少し前くらいに話し合い……というか、俺が我慢できずに文句を言って、言い合いになりながらも説得したせいだ」


「そ、そうだったんですか?」


「ああ。それで自分の行動は反省していたから、俺を見ると気まずいんじゃないか?」


「そ、そうだったんですね……その、お姉ちゃんと揉めた理由については」


 諏訪妹の質問に、和奏が申し訳なさそうに何か言いかけた。

 しかし、諏訪姉も妹には話していないことなのは、先程の会話からわかっていたので、和奏はすぐに言葉を飲み込んでいた。


「それは……俺がちょっとしたトラブルに巻き込まれて目を付けられちまって、ただ俺にも考えがあるから意見の相違があったってだけだ」


 咄嗟に思いついた理由だったが、幸い諏訪妹は素直に納得してくれた。


 話が一段落したところで、速水が俺もさっきから気になっていたことを諏訪妹に聞いてくれた。


「ところで、プレゼントなら真星先輩も一緒になって渡してあげればよかったんじゃないですか?」


「それは……私も一緒だと、お姉ちゃんは気を遣っちゃうので」


 そう言った諏訪妹は少し寂しそうな表情になる。

 その反応に俺達三人は疑問に思い、和奏が諏訪妹に聞いた。


「えっと、それはどういう?」


「えっ! えっと! お、お姉ちゃんは小さい時のことを未だに気にしてるんだと思いましゅ!」


 まだ和奏に慣れていないのか、諏訪妹は言葉を噛みながらも質問に答えてくれた。


「お、お姉ちゃんは昔、身体が弱くて……あんまり学校にも行けなかったんです。だからお父さんもお母さんも、お姉ちゃんに付きっ切りだったりで」


 話を聞いていて、諏訪姉に体力がなかったことは単に運動が得意じゃないわけではなく、どうやら事情があったようだ。


「そのことをずっと気にしてて、真星さんに気を遣うことがあると」


「ふ、普段はそんなことないんです。ただ私がお姉ちゃんのために何かしたりすると、何処か申し訳なさそうな感じで」


 諏訪妹は寂しそうな声でそう言った。

 妹が両親に甘えられなかったことを、諏訪姉は今でも罪悪感を感じているだろうか。


「姉と仲が悪くなったりはしなかったのか?」


「た、確かに当時は少し寂しかったりもしましたけど、優君が一緒にいてくれたので。それに今では助けてもらってばっかりで、いつも感謝してます」


 諏訪妹にとって信城の存在と姉の感謝が大きいのか、表情が少し明るくなった。

 俺達は諏訪妹の表情から、二人が良い奴だという気持ちが伝わってきた。


「その時から幼馴染さんを好きになっちゃったんですか?」


「ふぇっ!?」


 そんな突拍子もない速水の質問に、驚きすぎて諏訪妹は変な顔になった。


「速水、それは野暮だろ」


「えーでも、先輩達もわかりきってたじゃないですか。それならどういうところが好きになったのか聞きたくないですか?」


「天ヶ瀬君……フォローになってないです」


 呆れる和奏の視線の先を見れば、諏訪妹が顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。


「わ、わかりきった……そ、そんな、わかりやすいですか?」


「少なくとも、真星先輩は好きなんだろうなぁって感じがしてました!」


「うぅ……」


「それで、幼馴染さんの何処に惹かれたんですか?」


「そ、それは、いっぱいあって」


 まるで誘導尋問されたかのように話し始める諏訪妹に対して、相槌を打ちながら話を聞く速水。

 そんな速水に呆れながら視線を逸らせば、和奏も全く同じような反応をしていた。

 幸い話している諏訪妹が恥ずかしそうではあるものの、嫌そうではなかった。

 そんな恋愛話に花を咲かせる中、俺がいる意味もないので帰ろうと席を立とうと思った時、店員が注文していた飲み物を届けに来た。

 話の邪魔をしないように運ばれてきたコーヒーを、俺は静かに飲むことにした。

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