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第百五十三話 体育祭前の休日

 あの日から諏訪姉に監視される日々が終わり、またいつも通りの日常が戻ってきた。

 違うこととすれば、体育祭が近いため校内の雰囲気が活気づいていることだった。

 応援用の踊りの練習だったり、応援団の衣装づくり、休憩時間や放課後を使って種目練習している奴らだったりと、楽しみにしている奴らが多くいる。

 中には面倒とか運動が苦手だからと、嫌そうにしている奴らもいるが、それもこういった行事のお約束みたいなもんだろう。

 そんな校内の雰囲気を感じながら過ごせば、体育祭も来週まで迫っていた。


 体育祭前、最後の休日に考え事をしていた。


「この後、どうするかなぁ」


 爺さんに言われた型を無理のない範囲で行って、手持ち無沙汰になっていた。

 いつもなら和奏と一緒に昼食の準備をするんだが、今日は朝から和奏は外出している。

 何やら委員会の用事とかで、速水と買い物に行くようなことを言っていた。

 一人で適当に飯を作ってもいいんだが、なんか無性に面倒くさかった。

 たまには俺も外に出るか。

 そう思って、散歩がてら軽く昼食でも取ることにした。


「あっつ」


 軽い気持ちで外に出ると外は思った以上に暑く、携帯で今日の気温を確認すると、最高気温は三十度を超えていた。

 そりゃ暑いわけだ。

 少しげんなりしながらも、一回外に出たら家に戻るのが勿体無く感じて、そのまま歩き始める。

 少し歩いたところで、外からコンビニの雑誌コーナーが目に入った。

 そういえば、買ってる本の新刊が発売してたっけか。

 そのことを思い出してほんの一瞬通販で買うか悩んだが、このままショッピングモールの中にある大きめの本屋に向かうことにした。

 ついでにそこで何か食べればいいか。

 そう思いながら、猛暑の中を歩いて本屋に向かった。


 ショッピングモールの中に入って本屋に向かっていた矢先、何やらこそこそとしている見知った人物が目に入った。

 何してんだ、あれ。

 その人物は諏訪姉で、誰かを尾行しているような素振りをしていた。

 上手く誤魔化している感じもするが、それでもやはり不振な感じではあるため目に付いてしまった。

 んー言うべきか、言わざるべきか。

 諏訪姉に不審だということを伝えるかどうか少し悩んでいると、思わぬところから声をかけられた。


「あ、天ヶ瀬先輩!」


 声がした方を向くと、見知らぬ男二人の横から手を振って俺を呼んでいる速水がいた。

 その近くには当然神代も居て、どうやらナンパでもされているらしかった。


「申し訳ありません。あの人と合流する予定で」


 速水に乗っかって、和奏が二人に説明する。


「えーじゃあ、連絡先くらい教えてよ」


「それくらいならいいでしょー」


「ごめんなさい! 私達二人彼氏持ちなんで!」


 速水がそう言うと、男二人は残念そうに去っていく。

 男達が去っていたところで、二人が俺の側に来た。


「いやーたまたま先輩がいてくれて助かりました」


「天ヶ瀬君、ありがとうございます」


「居合わせただけだから礼とかはいいんだけど、外に出る度こんなんだと大変だな」


「あはは」


 二人は少し疲れた様子で苦笑いをしていた。


「ちなみになんだが、もし知り合いが近くにいなかったら、どうしようとしてたんだ?」


「さっきの理由でも引いてくれなかったらーこれですね」


 そう言って、速水が和奏のほうを両手で指し示すと、和奏の手には防犯ブザーが握られていた。


「この前は使う暇もありませんでしたけど、あの時から常備してます」


 この前というのは倉澄の件で、実際は片桐の件から対策として常備していたのだろう。

 しっかり対策しているところは流石だなと思う。


「そういえば、天ヶ瀬先輩はどうして――わっ!?」


 速水が俺に何かを聞こうとした瞬間、誰かが速水の肩にぶつかった。


「あっ! ご、ごめんなさい!」


 その速水の声で、ぶつかった本人が咄嗟に謝罪の言葉を言うと、俺達の顔を見て驚きながら慌て始めた。

 俺はさっき見かけていたため驚いたりはしないが、和奏は諏訪姉がいることに驚いていた。


「えっ!? えっと、あーもう!」


 諏訪姉は急いで周りを見渡してながら、何かを探している。


「ごめんなさい! 三人ともこっちに!」


「ちょっ!? 急になんですか!」


「諏訪さん!?」


「えーまじか」


 何処か場所に目を付けたのか、和奏と速水の手を引いて近くの店に入っていく。

 ややこしいことに巻き込まれてる気がしないでもないが、ここで付いて行かなかったら何を言われるかわかったものではないので、素直に三人の後を追って店に入った。


「す、諏訪さん、急にどうしたんですか?」


 店に入ると、和奏が戸惑いながら諏訪姉に聞いた。


「あっ。す、すみません。ちょっと」


 店に入っても諏訪姉は、何かが気になるようでチラチラと俺達がいたところに視線を送っていた。

 そこに何があるのか気になった俺達三人は、諏訪姉と同じように店にあった棚の影から同じように見る。

 すると、そこには仲が良さそうに並んで歩いている諏訪妹と信条がいた。

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