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少年少女のなすがままに  作者: 月見鯨
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プロローグ

 その日、俺は自由を求めて飛んだ。


 楽になりたかった。


 もう周りの環境が、世界が、人間が嫌だった。


 楽になりたかった。


 不安ももちろんあった。だけど、単純な興味もあった。


 楽になりたかった。


 何かが変わると思っていた。俺が何か行動を起こせば、周りの人は俺に興味を示してくれると思っていた。俺に対して何か思ってくれると思った。その気持ちが悲しみなのか、哀れみなのか、怒りなのか。俺はそれを知ることはできない。だけど、だけど、俺は試したかった。自分の周りの人たちを評価したかった。現実には評価することは不可能なのに。


 楽になりたかった。


 楽になりたかった。


 楽になりたかった。


 風を切るのが気持ちいい。顔に冷たい風が吹きつける。


 飛んでから数秒後、涙が出てきた。人間の体の生理的なモノと、嬉しさの涙。


 どちらも生理的なモノ。だけど、後者の涙の重みは違う。


  誰だってわかるはずだ。例えば、目にまつ毛が入った時の涙と、大会で優勝した時の涙なんて全く変わんねーだろ、と突っ込まれたら、多くの人は怒るだろう。俺もその内の一人だ。


  余計なことを考えてしまった。


  楽になりたかった。


  俺は呪文のように同じ言葉を反芻する。


  楽になりたかった。


  楽になりたかった。


  飛んでから俺は一体何回同じ言葉を言っただろうか。俺は数えていなかった。数える気がなかった。


  なぜならもうすぐで終わるから。何もかも終わるから。


  一瞬痛いけど、それを乗り越えれば楽になれる。


  おそらく後2、3秒後で終わるだろう。




  そこから先、俺はもう余計なことは何も考えないように努めた。




  早く終わってくれ。その一心だった。俺は目を強く瞑っていた。もう覚悟はできていた。




  だが、“痛み”はまだ来ない。いつ来るのかが不安で、俺はまぶたの力を緩めそうになったが、ギリギリでなんとか堪えた。




  そしてさらに数秒後、今度は風がなくなった。




  なぜ?流石におかしい。ありえないだろ。俺はついに目を開けた。




  とても明るく眩しかったので一気に目を開けることは不可能だった。俺は徐々に視界が広がるのを、好奇心と不安の心両方感じた。そして目の前の光景をしっかりと捉えることができた。そこはーーーー




  「……ここって……渋谷?」


 

 



 

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